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「紹介予定派遣」はチャンスか?  企業向けサイトを見よう

ブラック企業との向き合い方(19)

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NIKKEI STYLE

皆さんは「派遣」という働き方の仕組みを知っていますか。採用活動がピークを過ぎたあとで就職活動を続けていると、正社員就職を支援するという広告が目に付くようになります。よく見ると最初は派遣で、というものもあります。ただし、派遣の仕組みを理解しないまま利用することはお勧めできません。

「紹介予定派遣」で正社員就職を実現?

「正社員になりたい」「正社員を目指そう!」といったキャッチフレーズで目を引く広告を読んでいくと、紹介予定派遣の仕組みに行きあたることがあります。

現在、大手の人材派遣会社各社は、「若者キャリア応援制度」への参加を学卒未就職者や早期離職者などに呼びかけています。これは厚生労働省が2014年度から2016年度までの3年間にわたり実施しているもので、事業の正式名称(紹介予定派遣活用型正社員就職応援事業)が示すとおり、紹介予定派遣の仕組みを活用した正社員就職の支援事業です(*)。

(*)事業は2016年度までのため、現在の4年生は対象外と思われます。ただし、紹介予定派遣の仕組みそのものはこの事業より前からあり、今後も継続します。

この「若者キャリア応援制度」への参加を呼びかける各社のサイトを見ると、就業経験がなくてもマナー研修や専門研修が受けられ、自分に合った企業を紹介してもらえ、派遣として就業し職場環境や仕事内容を確認したあとでその勤務先で正社員になれるというプロセスが示されており、一見すると良いことばかりのように見えます。つらい面接を繰り返さなくても正社員になれるなら、制度を活用したくなるでしょう。

けれども第13回の記事で解説した「白い嘘」(大切なことを故意に語らないこと)を思い出してください。自分にとって大切なことだけれど語られていないことはないでしょうか。

多くの学生が長い就職活動を経て苦労して内定を得ているのに、紹介予定派遣を利用すれば楽々と正社員になれるとしたら、それは不自然なことでしょう。であれば、何か大事なポイントを見落としているはずです。既に内定が出ている方も、練習問題だと思って各社のサイトの説明を吟味してみてください。

「紹介予定派遣」を活用する企業の側から見ると

見落としてはいけない大事なポイントは、若者向けに参加を呼びかけるサイトを見ているだけでは気づきにくいものです。けれどもこの制度は、人材派遣会社が間に入って求職者と企業を結び付けるものです。では企業向けに活用を呼びかけるサイトでは何が書かれているでしょうか。まずはぜひ、自分で調べてみてください。

さて、何か気づきましたか。

ある大手の人材派遣会社の企業向けサイトでは、制度の活用メリットの第1に「採用ミスマッチの軽減」をあげています。派遣期間中に適性などの見極めができるため、採用後のミスマッチや早期離職を軽減できると勧めているのです。

これを若者の側から捉えなおすとどういう意味か、わかりますか。正社員採用に至る前の派遣としての就業中に、適性などの見極めが行われ、評価されなければその企業に採用されないということです。つまり派遣就業のあとの正社員採用は、保障されていないのです。

若者向けのサイトには、まず派遣として就業し、働きたい会社かどうか見極めたあとで就職の意思決定ができるように書かれています。それは間違いではありません。けれども、若者の側が会社を見極めることができるのと同時に、会社の側も若者の働きぶりを見極めることができるのです。そして、双方の合意がないと正社員雇用には至りません。

よく読めば若者向けのサイトにも「双方が合意すれば」や「企業と双方合意の上で」といった言葉を見つけることができます。ただし、それが条件であることはさりげなく書かれているため、企業側から採用を拒否されることもあり得ることには気づきにくい説明となっています。

厚生労働省が2016年度の若者キャリア応援制度の実施事業者の募集時に示した実施要領によれば、支援対象者数(目標)のうち、70%以上の数の正社員就職を目指すことが事業目標として掲げられていました。実績値は不明ですが、目標も「100%正社員化」ではなかったのです。

直接雇用ではない「派遣」という仕組み

企業側から採用を拒否されることもあり得ることは、派遣という仕組みを理解していなければ想像しにくいでしょう。派遣として就業している間は、実はその会社には雇用されていないのです。

厚生労働省のリーフレット「派遣で働くときに特に知っておきたいこと(制度の概要)」には、正社員や契約社員、アルバイトなどの雇用と派遣就業がどう異なるのか、次のように図解されています。

正社員・契約社員・アルバイトはいずれも、A社と労働契約を結び、A社で勤務します。A社から指揮命令を受けて働き、A社から賃金を受け取ります。このような働き方は直接雇用と呼ばれています。

それに対して派遣就業の場合、働く場所がA社であっても、A社との間に労働契約は結ばれていません。派遣労働者が労働契約を結んでいる相手は、人材派遣会社(派遣元事業主)です。賃金も人材派遣会社から支払われます。しかし働く場所はA社(派遣先)であり、仕事上の指揮命令もA社から行われます。人材派遣会社とA社の間には派遣契約が結ばれており、A社から人材派遣会社に、派遣にかかる料金が支払われます。人材派遣会社はその派遣料金から、派遣労働者に賃金を支払うのです。直接雇用に比べて、複雑な仕組みです。

紹介予定派遣は上記の右に示された派遣の仕組みによってまずA社で働き、その後派遣労働者と派遣先A社の双方が合意すれば上記の左に示された直接雇用の関係に移行するというものです。派遣就業中は労働者とA社の間には労働契約は結ばれておらず、そののちに直接雇用される保障もないのです。

正社員経験がないままキャリアが途絶える恐れも

第17回の記事でみたように、企業は直接雇用した労働者を客観的に合理的な理由を欠いたまま解雇することは認められていません。そのため、雇用期間に定めのない正社員を採用する際には慎重になります。長く活用する予定のない労働力については、有期雇用の契約社員やパート・アルバイトなどの形で直接雇用するか、派遣期間を定めた派遣の形で受け入れます。

一方紹介予定派遣の場合は、企業は派遣就業中にその労働者の適性などを見極めてから直接雇用の意思決定を行うことができます。労働者側から見た場合、正社員として就職する場合よりは低いハードルで受け入れてもらうことができ、仕事ぶりを見て評価してもらえるというメリットもありますが、派遣就業後の直接雇用を希望してもかなわないかもしれないという状況は、心理的には不安定な状況です。

そしてもし直接雇用につながらなかった場合には、数カ月派遣で働いたというキャリアだけが残り、そこからまた就職活動を始めなければなりません。

もし卒業後にどこかの会社で正社員として働き始めたならば、その会社を辞めたいと思った時に退職することは自由です。数カ月で退職するか、働き続けるかは、自分の意志で決められます。転職先を決めてから辞めることもできます。それに対し紹介予定派遣の場合は、派遣期間(最長6カ月)が過ぎたあとで、その会社で直接雇用の形で働き続けられるかどうかは、自分の意志だけで決めることはできず、会社側は拒むことができるのです。

そう考えてみると、派遣で働いてみて会社を見極めてから働き続けたいかどうか決められるというのは、メリットのように言われていますが実はメリットではないことがわかります。

紹介予定派遣後の雇用は契約社員の場合も

また、若者キャリア応援制度ではない一般の紹介予定派遣では、派遣就業後の直接雇用が正社員雇用とは限らないことに注意が必要です。

紹介予定派遣とは先ほどの厚生労働省リーフレットによれば、「一定の労働者派遣の期間(6カ月以内)を経て、直接雇用に移行すること(職業紹介)を念頭に行われる派遣」を指しています。上記の図解にあったように、正社員だけでなく契約社員やパート・アルバイトなども直接雇用です。しかしながら正社員は雇用期間の定めがない雇用であるのに対し、契約社員やパート・アルバイトなどには半年や1年などの雇用期間の定めがあります。その雇用期間が終了したあとに契約を更新するかどうかは、双方の合意次第なので、企業側が契約を更新しないという判断もできてしまうのです(*)。

(*)契約が反復更新されている場合などは、事情は異なります。

紹介予定派遣の活用を勧めるサイトには「正社員を目指すあなたに」などと書かれている場合もあるのですが、用意されている機会は正社員雇用につながるものだけとは限りません。また「社員を目指す」と書かれている場合もあります。「社員」という表現は、「正社員」とは限らない直接雇用を指すことに注意が必要ですが、「社員=正社員」と受け取ってしまいがちです。

さらに、求職者向けのサイトには、自分にあった会社を紹介してもらえるように書かれていますが、企業向けのサイトには、その企業の要望に合った人材を紹介する旨が書かれています。そのことを求職者の側から捉えなおすと、そもそも選ばれなければ紹介予定派遣の仕組みには乗れない、ということです。

このように、よくよく考えれば気を付けなければいけない点は多々あります。一見すると良い話ばかりに見える紹介予定派遣ですが、今のうちはやはり正社員就職の可能性を探り続ける方が良いのではないかと私としては考えます。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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