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実際の労働条件は、いつ分かるのか?

ブラック企業との向き合い方(18)

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NIKKEI STYLE

無事に志望先から内定を得て就活を終えたという皆さん、入社後の労働条件を記した書類は受け取っていますか。手当の額は知ることができたでしょうか。実は困ったことに、入社まで労働条件の詳細が分からないという場合も珍しくないのです。

募集要項だけでは正確にわからない労働条件

連載の第4回で、募集の際の労働条件と労働契約の際の労働条件は異なることもありうるという問題を取り上げました。募集の際の初任給額に残業代が含まれていることがありうる(残業代の分だけ水増しで表示されている)というのが、典型的な問題です。

厚生労働省も対策には乗り出しており、一定の時間数の時間外労働に対する残業代をあらかじめ賃金に組み込んでおく固定残業代の制度を取る場合には、若者対象の求人ではその詳細を募集の段階から明記するようにと2015年10月の指針で企業に求めています。ただし現状においては、明記が徹底されていないのが実情です。

また募集要項では初任給について、「2016年度実績」といった形でしか表示されていなかった場合も多いでしょう。さらに「住宅手当」や「地域手当」などの記載があっても、それらの手当がいくらであるのか、一律に支給されるのか条件つきの手当であるのかなどは記載されていなかった場合が多いと思われます。

そのため実際に入社した場合の基本給はいくらなのか、基本給のほかに賃金の内訳となるもの(職務給など)はあるのか、手当はどういうものがあり、それぞれどういう条件でいくら支給されるのか、などは改めて内定者に説明されるべきです。

具体的な労働条件が説明されるタイミングはいつ?

しかしながら第9回の記事で見たように、最終面接後の内定の連絡は電話で行われることが通例です。電話の後で書類が届くケースはおそらく稀でしょう。

次のタイミングとしては内定者懇談会が考えられます。そこで労働条件について率直に聞ける機会があるかもしれません。ただ、その場で労働条件を書面で受け取れるケースがどの程度あるのか、はっきりしません。

その次のタイミングは内定式です。経団連の「採用選考に関する指針」では、「正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする」とされています。そのため大手企業を中心に、10月1日もしくは10月上旬に内定者を本社などに集めて内定式を行うことが多く見られます。

内定式では通常、何らかの書類が渡されます。ただし、その書類に初任給など入社時の労働条件が記載されているとは限りません。4月1日の入社を認める旨だけが記載された内定通知書である場合も多いようです。それに対して内定者は、入社の誓約書を返します。

内定式でも労働条件の書面を受け取ることができない場合、その次のタイミングは4月の入社時です。

入社の4月まで労働条件が分からなかったら...

もし4月にならないと実際の労働条件が分からないのであれば、いろいろと不都合が生じます。

初任給は20万円だと思っていたのに実際は基本給16万円と固定残業代4万円だったことが4月の入社時に判明したとしましょう。「だったら、もう一つ内定が出ていた、初任給19万円の別の会社に入社を決めたのに...」と思っても、時計の針を戻すのは不可能です。

これが転職活動であれば、「話が違う」と判明した時点で入社を断って改めて求職活動に乗り出すことになるでしょう。しかしながら新卒の就職活動は長期にわたり、かつ何度もやり直すことが難しいプロセスであるため、4月に初めて労働条件が判明するのでは遅すぎるのです。

正式な内定の際に内定通知書と誓約書を相互に取り交わすのであれば、遅くとも正式な内定日には労働契約が締結されたと考えられます。にもかかわらず、その時点でも労働条件の詳細が明示されないことが多いのです。それは本来、おかしな話だと思いませんか?

賃貸住宅を借りる場合を考えてみましょう。お店の張り紙やネットの情報を見てよさそうな物件を探し、現地に出向いて実際の部屋も確認させてもらい、借りたいという意志が固まったとします。その場合、私たちは簡単に契約書類に署名・捺印することはありません。

契約に際しては、宅地建物取引士の資格を持った者が重要事項を書面で示して説明し、その内容に十分に納得した上で借主が貸主と賃貸借契約を結びます。重要事項説明では物件の詳細の他、その物件を借りるにあたって賃料の他に共益費などの支払いが必要か、それはいくらか、契約期間はいつまでか、更新料はいくらか、解約の手続きは何日前までに行う必要があるか、敷金はいくらで退去時にはどのように清算されるか、などの詳細を書面で1つ1つ確認することになっています。

もしそのような手続きを経ずに契約の署名・捺印だけをしてしまい、引っ越しの当日になってから共益費が毎月1万円かかるなどといったことが判明したのでは大変です。いまさら引っ越しを取り消すことも困難です。そうならないために、契約に際して重要事項説明が行われるのです。

その手続きと比較すると、内定式で内定通知書が渡され、誓約書を提出することによって契約成立とする新卒就職のしくみは、非常に不透明なしくみであり、内定者にとって不利なものと言えます。

労働基準法には規定はあるが...

もっとも労働契約に関して何も規定がないというわけではありません。労働基準法第15条は下記の通り、労働契約の締結に際して労働条件を明示するように求めています。

(労働条件の明示)
第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

「厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示」という点については、労働基準法施行規則第5条の2項と3項に規定があります。厚生労働省が発行している「知って役立つ労働法」には、その内容が次の通りわかりやすく説明されています。

 労働契約を結ぶときには、会社が労働者に労働条件をきちんと明示することを義務として定めています。

 さらに、特に重要な次の6項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付しなければいけません(労働基準法第15 条)。
(1)契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)
(2)期間の定めがある契約の更新についてのきまり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)
(3)どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)
(4)仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替制)勤務のローテーションなど)
(5)賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)
(6)辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※厚生労働省「知って役立つ労働法」p.11。なお、注記は省略。

ただし労働基準法は、「労働契約の締結」とはいつの時点を指すのかをはっきりと記していません。そのため、内定から入社までの期間が長い新卒採用において、内定時点で労働条件の書面交付が行われていない場合があるのです。

入社時でさえ、労働条件を書面で交付された者は3人に2人にとどまるという調査結果も

「内定時点で労働条件の書面交付が行われていない場合がある」と書きましたが、実態がどうであるのか、私は把握できていません。厚生労働省などが実態を調査したことがあるのかどうか、少なくとも私はそのような実態調査を見たことがありません。

厚生労働省は「確かめよう労働条件」というサイトを開設しており、就職・転職やアルバイト・パート就労の開始時に労働条件を書面で確認することの大切さを啓発しているのですが、にもかかわらず新卒採用における労働条件の書面交付の有無やその時期について、実態調査を行っていないように思われます。

第16回の記事でも紹介した連合の「内定・入社前後のトラブルに関する調査」では、卒業後に最初に就職した会社で入社時に賃金などの労働条件を明示されたかどうかを尋ねているのですが、「書面で渡された」は3人に2人の割合にとどまっている実態が明らかになりました(*)。

(*)「書面で渡された」66.0%、「社内イントラネットなどに掲示されているので自分で確認するように指示された」5.2%、「見せられただけで渡されず回収された」3.0%、「口頭で説明された」7.9%、「書面の明示がないだけでなく、なにも説明はなかった」5.0%、「覚えていない」12.8%、「その他」0.2%。

4月の入社時でさえ、労働条件を書面で受け取ることができずにいる新入社員がこんなに高い割合で存在するのです。「それでいいのか?」と思わされる調査結果ですが、それが問題であることがこれまで大きく注目されてこなかったために、「会社を信頼するしかない」という状態で多くの若者が入社してきたのが現状と思われます。

「労働条件通知書は、いつ頂けますか?」と聞いてみよう

その現状を追認するか、しないか。個人の立場からは、「追認したくなくても、追認するしかない」と思うかもしれません。けれども「残業代が初任給に含まれているのではないか」「住宅手当は別途支払われるのか」「本当に正社員(期間の定めのない雇用)としての採用なのか」などの不安がある場合は、その不安を抱えたままにせず、はっきりと確認した方がよいと思います。

労働基準法に定める労働条件を明示した書類は、一般に労働条件通知書と呼ばれています。内定者懇談会その他の機会に、「労働条件通知書は、いつ頂けますか?」と尋ねてみてはいかがでしょうか。

また採用側の企業は、内定者が安心して自社への入社の意思を固めることができるように、労働条件通知書を書面で渡してください。遅くとも内定式には交付ができるように、ぜひ検討と準備をお願いします。

内定式の段階では、勤務地についてはまだ書き込むことは難しいかもしれません。ですが転居が必要になる可能性もあることから、遅くともいつまでには勤務地を通知するかの期限だけでも書き込んでいただければと思います。

本人にとっては非常に気になる情報であるにもかかわらず実際の労働条件がなかなか明示されない現状は、みんなで変えていきたいものです。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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