就活が不調でも焦りは禁物ブラック企業との向き合い方(15)

上西充子 法政大学キャリアデザイン学部教授

上西充子 法政大学キャリアデザイン学部教授
2016/7/11

今回は、就活が思うように進んでいない方々に向けて書きます。「持ち駒がない」(応募したすべての企業の選考に落ちてしまった)学生さんや、内定を得た企業はあるもののそこに就職を決めるには悩みが多いという学生さん、焦りは禁物です。

内定はゴールではない

友だちが就活を終えて解放された様子であるのを見ると、自分も早く就活を終えたい、内定が出るならどこでも早く決めてしまいたい、という気持ちになっているかもしれません。

けれども内定はゴールではありません。就活のゴールは内定を得ることではなく、入社後に待っている職業生活を見据えて、働き続けることが可能な会社に入社すること、ととらえたいものです。

「筆記試験なし」「人物重視」「即日内定」などをPRする企業は、選考にコストをかけずに大量に採用して厳しい仕事に従事させ、残れる者だけ残ればいいという方針をとっている企業の可能性があります。大量離職を見越した大量採用を行う企業であるなら、内定を得るのは容易でもその先に苦難が待ち受けています。

そうであるなら今は大変でも、納得のいく就職先を見つける努力をあきらめないでください。

これから採用活動を本格化させる優良企業もある

これから応募する学生を積極的に選考対象とする企業の中には、学生にあまり知られていない優良企業もあります。

学生の応募は知っている企業、製品・サービスが理解しやすく志望動機が語りやすい企業、働くイメージが湧きやすい企業に集中しがちです。そのためそれ以外の企業は、あえて採用選考の時期をずらし、大手企業の内定出しが一段落したあとで選考を行う場合もあるのです。

B to Bの企業 (Business to Business:一般消費者相手ではなく、法人顧客相手のビジネスを展開している企業)の中には、企業規模は比較的小さいものの自社の製品・サービスに強みを持つ優良企業が存在します。皆さんの目はなかなか向きにくいのですが、積極的に目を向けてみたいものです。

そのような優良企業と大量採用・大量離職企業が新卒募集の労働市場で混在しているのが今の時期です。そのため、1つ1つの企業をよく検討することが重要です。

大学求人・ハローワーク求人に目を向けよう

これから改めて応募先企業を探す際に就職情報サイト以外に目を向けてほしいものが2つあります。大学のキャリアセンターに寄せられる求人(以下「大学求人」)と、新卒応援ハローワークに寄せられる求人です。

大学求人やハローワーク求人は、就職情報サイトに掲載されているものよりも「格下」と思っている人がいるかもしれませんが、それは誤解です。

就職情報サイトに求人情報を掲載するには、基本料金だけでもかなりの費用がかかり、学生の目に留まりやすくするためのオプションをつけると、さらに高額になります。そのため、採用予定人数が比較的少なく、学生にあまり知られていない企業の場合には、大学やハローワークを通じて学生を採用する場合もあるのです。

就職情報サイトに掲載された求人情報と、大学求人、ハローワーク求人。いずれにも、優良なものもあれば問題なものもあると考えるのが妥当でしょう(*)。

(*)なお、大学とハローワークは無料職業紹介事業者ですが、就職情報サイトの運営会社は職業紹介事業を行っているわけではなく、求人情報を掲載する広告事業を行っているという違いがあります。

大学求人のメリットと留意点

大学求人を利用することには4つのメリットがあります。

第1に、採用される可能性のある求人情報が入手できます。多くの企業は「だいたいこの範囲の大学から」と、採用対象となる大学をあらかじめ絞り込んでいます。採用意向がない企業に向けて力を入れて応募書類を書いても無駄な努力になりますが、就職情報サイトに掲載されている求人情報の場合、その企業が自分の大学から採用する意向があるかどうか、あらかじめ見分けることはできません。けれども大学求人の場合は、その大学からも採用する意向があるからこそ、求人を寄せているのです。

第2に、その求人企業の実情や求める人材について、具体的な情報が得られる可能性があります。大学にもよりますが、求人企業と継続的な関係を構築している場合や求人企業から対面で求人を受け付けている場合には、その企業がどういう企業か、どういう仕事をするのか、卒業生はその企業で働き続けているか、などの情報が収集・蓄積されます。そのためキャリアセンター職員に相談することによって、その企業の良しあしや、自分はその企業が求める人材像に合致しているかなど、応募を判断する上でより具体的な情報を得ることができるのです。

そのような情報を得るためには、求人票を一人で見ているのではなく、キャリアセンター職員に相談してみることが必要です。自分がよさそうだと思った求人も実は問題がある求人で、職員からはさりげなく他の求人を勧められることがあるかもしれません。また、自分では目を留めることができなかった求人でも、優良企業であることを教えてもらえるかもしれません。

第3に、大学キャリアセンターには既に採用選考を終えた企業から追加の求人が寄せられることがあります。大手企業で想定外の内定辞退者が発生し、採用予定人数を満たすために若干名だけ追加で採用したいといった場合、改めて就職情報サイトを通じて追加募集を告知するのではなく、採用実績がある大学のキャリアセンターを通じて募集することがあるのです。

第4に、就労実態の情報提供を、大学求人についてはキャリアセンターを通じて行うことができます。第12回の記事で使い勝手が悪いことを指摘した若者雇用促進法ですが、大学求人の場合は、就労実態を知りたい学生が自らの個人情報を開示することなく、大学を通じて情報提供を求めることができるのです。この場合、大学の求めに対して企業が情報提供をすることは義務となっています(*)。

(*)情報提供が義務であるのは、大学に寄せられた求人に限ります。大学が求人を受け付けて学生にそれを紹介する場合、大学は無料職業紹介事業者としてその役割を担っていることから、情報提供を求めることができるのです。

ただし、「大学に寄せられた求人なのだから大丈夫だろう」と最初から信じ込んでしまうのは危険です。大学求人を通じて就職しても劣悪な就労実態が待っていたという事例は少なからずあります。大学によっては、問題が判明した企業の情報を蓄積し、職員間で共有している場合もあります。そのような情報は一覧で掲示されているわけではないため、積極的に職員に相談してみることが大切です。

職員に相談することによって、職員に自分を知ってもらうことができ、自分に合った企業情報を教えてもらうこともできます。4年生向けの就職説明会を独自に開く大学もあるでしょう。キャリアセンターに登録しておけば、新着求人をメールで知らせてくれる場合もあります。

ハローワーク求人のメリットと留意点

ハローワークについては、学生向けの「新卒応援ハローワーク」があることはご存知でしょうか。各県に1カ所以上が設けられています。新卒採用求人の検索や応募の相談が行えるほか、就職面接会も開催されています。エントリーシート・履歴書の作成相談や、面接指導も受けられます。一度実際に行ってみることをお勧めします。

ハローワーク求人にも4つのメリットがあります。

第1に、ハローワーク求人は求人票が統一されており、就職情報サイトに掲載された募集要項に比べて、より詳しく労働条件を知ることができます。「大卒等就職情報WEB提供サービス」で実際に求人情報を検索し、「求人番号」をクリックするとその企業の求人票が開きますので、実物を確認してみてください。

求人票では賃金について、基本給と手当に分けて記入することになっています。第3回の記事で解説したように、初任給に残業代が含まれている場合がありますが(固定残業代)、そのような場合にはその残業代が何時間分でいくらであるのかを特記事項欄に必ず明記させることとなっています(ただし、求人票記載のごまかしが皆無というわけではありません)。

ハローワークの求人票ではさらに、賞与(ボーナス)の実績額や育児休業の取得実績、組合の有無、入居可能住宅の有無などを記入する欄があります。個人ではなかなか聞きにくいことが、求人票の記載で確認することができるのです(*)。

(*)ただし、残業時間の記載については厚生労働省が定める月30時間の限度時間内に収めるように指導していることから、長時間労働の実態を反映していない場合があることに注意が必要です(今野晴貴「「求人詐欺」に行政はどう対応しているのか?」『POSSE』vol.31参照)。

第2に、新卒のハローワーク求人については若者雇用促進法に定められた就労実態に関する情報を、所定の「青少年雇用情報シート」によって提供することが企業に求められています。就職情報サイトを通じた求人の場合は個人が情報提供を求める必要があるのに対し、新卒のハローワーク求人についてはハローワークがあらかじめ企業に対し、情報提供を求めてくれるのです。そのため求人企業の就労実態に関する情報を確認した上で、応募の意思決定をすることができます。

第3にハローワークには、就職情報サイトにはあまり掲載されない「団体職員」の求人が寄せられます。「団体職員」とは、民間企業の従業員ではない雇用労働者を指す言葉です。学校法人である大学の職員や、医療法人が設立した病院の職員、公益財団法人や特殊法人の職員などが「団体職員」に該当します。これらの「団体職員」の募集は、民間企業の採用募集に比べてかなり遅くなってから行われることも多いのですが、比較的労働条件がよい求人も多く存在します。どのような求人があるか、またどう探せばよいかは、ハローワークの職員に積極的に相談してみてください。

第4に、ハローワークにはUターン(地元に戻る)やIターン(地元ではない地方で就職する)を希望する学生向けの相談窓口や、障害者向けの相談窓口もあります。それぞれ、求職者のニーズにあった求人情報が集約されており、専門の相談員が対応してくれます。

なお、ハローワーク求人の場合も優良求人もあれば問題の多い求人もあります。ハローワークは公的な機関として、法令違反が繰り返し行われている企業の求人以外はすべて受け付けることになっているため、離職が多く労務管理に問題が多い企業の求人も含まれています。そのため大学求人の場合と同様に、求人票を自分で見るだけで応募を決めるのではなく、職員に積極的に相談してみることをお勧めします。

就活は一人でしないことが大切

就活がうまくいかない状態が続くと、友だちや親と就活を話題にすることにも消極的になり、一人で悩みを抱える状態になりがちです。けれども、就活は一人でしなければいけないものではありません。むしろ、一人でしないことが大切です。

大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークなど、あなたの就活を支援する機関は存在しています。そのような機関は、あなたが来訪するのを待っています。相談しながら就職活動を進めることができる点で、キャリアセンターやハローワークの利用には就職情報サイトの利用にはない大きなメリットがあります。

私が接してきた学生の中には、年が明けてからハローワークの紹介で就職が決まり、安定した労働条件のもとで職場でも認められながら働き続けている人もいます。内定の時期が遅くなると労働条件を下げて妥協しなければいけないとは限りません。

支援を求めることができるのも、大切な能力の1つです。一人で悩みを抱えず、専門機関の支援を求めてください。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。
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