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労働組合がある職場とない職場、何が違うの?

ブラック企業との向き合い方(14)

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応募企業のどこに注目するかに関連して、もう一つ言及しておきたいのが労働組合の有無です。労働組合がある職場とない職場は、何が違うと思いますか?

労働組合とは

労働組合とは「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」のことです(労働組合法第2条)。

労働組合(ユニオン)は誰でも自由につくることができます(2人以上の組合員が必要)。1つの企業に1つの労働組合がある場合もあれば、1つの企業に異なる方針を持つ複数の労働組合がある場合もあります。企業の枠を超えて、同一の職種や同一の業種で働く労働者が横断的に労働組合を組織している場合もあります。

労働組合がない職場もあります。労働組合がない職場で働いている労働者は、みずから労働組合を作ることもできますし、既存の地域ユニオンや職種別ユニオンなどに入ることもできます。アルバイトでトラブルに遭遇した学生がブラックバイトユニオンなどの企業外の労働組合に入って団体交渉でトラブルの解決を図ることもあります。

日本では労働組合に組織化された労働者の多くは、企業別の労働組合に入っています。企業別組合は独立した労働組合である場合もありますが、主要な企業別組合の多くは電機連合などの産業別の労働組合に加盟しています。産業別労働組合のほとんどはさらに、連合(日本労働組合総連合会)などのナショナル・センターに加盟しています。このように重層的な構造になっており、代表的なナショナル・センターとして連合、全労連(全国労働組合総連合)、全労協(全国労働組合連絡協議会)があります。

労働組合は団体交渉ができる

労働組合によるストライキで、電車が止まる・工場が操業を停止する・お店が休業する―そういった状況は、最近の日本ではほとんど見られなくなりました。そのため、労働組合の存在を私たちが意識する機会も減ってきています。自分の会社には労働組合があるけれど、何をしているのかよくわからない、もはや労働組合に存在意義はない、と感じている社員もいるでしょう。

しかしながら労働組合は本来、労働条件の向上に重要な役割を果たしうる存在です。労働組合があれば「団体交渉」ができるからです。

皆さんのアルバイトの事例から考えてみましょう。アルバイトで片付けの作業を無給で求められていたり、昇給の約束があったのにそれが果たされなかったり、「おかしい」と感じることがいろいろあっても、店長に個人的に言うことにはためらいがあるでしょう。自分だけ異議を唱えると、目をつけられてシフトの希望を聞いてもらえなくなるかもしれない、そんな心配があるとなかなか言いたいことも言えません。

アルバイト仲間と問題意識を共有して、みんなで声をあげることによって改善ができることはあります。けれども店長も「わかってるんだけれど、本部がね・・・」と板挟み状態で身動きがとれないのかもしれません。では本部に要求をと考えても、1つの店舗の数名のアルバイトの声に本部が耳を傾けてくれるだろうか、そもそもどこに連絡すればいいのか、と戸惑うことも多いでしょう。

そういう時に重要な役割を果たすのが労働組合です。アルバイト先に労働組合がない場合でも、皆さんはブラックバイトユニオンのような外部の労働組合に入って団体交渉を申し入れることができます。

労働組合が団体交渉を申し入れた場合には、使用者側は誠実に対応しなければなりません。日本国憲法第28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)を保障しており、正当な理由がないのに労働組合が求める団体交渉を拒むことは、「不当労働行為」として労働組合法により禁止されています。

また本部の要求とアルバイトスタッフの不満の間で板挟み状態にある店長たちも、みずから労働組合を組織すれば、自分たちの働き方の改善を求めて使用者側と団体交渉を行うことができます。アルバイトスタッフも同じ労働組合に入れば、店長とアルバイトスタッフが対立することなく共に労働条件の改善を求めることも可能です。労働組合を作ろうとしたり、労働組合に加入したりしたことを理由として解雇や減給などの不利益な取り扱いをすることも、「不当労働行為」として労働組合法により禁止されています。

団体交渉では、労働条件の向上に向けた交渉を行います。違法な状態を正すのみならず、違法とは言えないけれど改善が必要な問題についても、交渉を行うことができます。例えば休憩室をちゃんと確保してほしいとか、鍵のかかるロッカーを設置してほしいとか、その職場で働く者だからこそ強く求めている問題も、団体交渉の場で要求することができるのです。団体交渉で合意に至った内容は労働協約という書面にまとめることもできます。

団体交渉で要求が通らない場合、労働組合は集会やデモによって問題を広く世の中に訴えることができます。また、ストライキによって就労に従事することを一時的にやめることも可能です。ストライキによって企業の営業活動に損害が生じても、正当なストライキであれば企業は労働組合や組合員に対して損害賠償を請求することはできません。

そのため労働組合は団結の力を背景に、そしていざとなれば集会やデモ、ストライキといった手段に出るぞという交渉カードを持ちながら団体交渉に臨むことができ、使用者側も軽々しく不誠実な対応はとれないのです。

またナショナル・センターと産業別労働組合、企業別労働組合が相互に連携して、賃上げなどの労働条件向上を求めることも行われています。業績の良い産業の大手企業から順次団体交渉を行い、波及的に労働条件の向上を図る春闘(春季生活闘争)は毎年行われており、ニュースで耳にしたこともあるでしょう。

労働条件を向上させる主体は、労働者自身

なぜ労働組合にこのような強い力が与えられているのでしょう。それは一人一人の労働者では、使用者と対等な立場で労働条件の交渉を行うことができないからです。

個人の交渉力の弱さは、部分的には労働法によって補われています。最低賃金が定められているため、私たちは「時給500円なら雇ってもいいけど?」といった要求にさらされずに済みます。時間外労働に対しては割増賃金の支払いが定められているため、割増賃金の支払いが適正に行われていない場合には労働基準監督署に申告したり、裁判を起こしたりすることができます。

けれども労働法が定めているのは、最低限の基準のみです。また労働基準監督官の数も限られており、職場の問題の一つ一つに対して、労働基準監督官が丁寧に対応することは不可能です。シフトの問題のように、労働法では違法性を問いにくい問題もあります。

そこで労働者に団結権、団体交渉権、団体行動権を保障し、労働者が自分たちの労働条件の向上のために立ち上がり、対等な立場で交渉できるように制度的に保障しているのが、今の日本のしくみなのです。

労働基準法第1条は次のように、労働関係の当事者に労働条件の向上のための努力を求めています。

第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
○2  この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

私たちは労働者として、労働関係の当事者であり、みずから労働条件の向上を図るように努めなければならないのです。そして労働条件の向上を実現するための重要な手段が、労働組合の結成と労働組合による団体交渉なのです。

労働組合の有無は、重要な情報

つまり職場に労働組合があるか否かというのは、労働条件の向上を実現するためのしくみが整っているか否かを意味する大事な情報なのです。

第11回の記事で触れた有価証券報告書では、「従業員の状況」の中に「労働組合の状況」欄があり、労働組合の有無を明記することになっています。労働組合がない場合、「労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております」といった記載がされていることが通常ですが、労使関係が円満に推移していると使用者側は思いたくても、労働者側はものが言えずに我慢しているだけかもしれません。

ハローワークの求人票にも労働組合の有無を明記する欄があります。『就職四季報』にも2014年11月に発売された2016年版から、組合の有無の記載欄が設けられました。組合の有無はNA(非開示)にしても意味がないので、「あり」「なし」のいずれかが明記されています。また連合のホームページの「連合加盟労働組合リスト」からは、加盟組合の検索が可能です。

皆さんにしてみれば、労働組合の有無よりも住宅手当の額や出産後の就業継続にかかわる制度などの方が知りたいかもしれません。ですが住宅手当の額を増額することも、復職後の就業継続の支障を取り除くことも、労働組合が団体交渉で求めることができます。また気づきにくいことですが、労働組合の存在が福利厚生を含めた労働条件の低下を防いでいる面も実は大きいのです。そのため、個々の制度の有無よりも労働組合の有無の方が重要な情報だという判断もできるのです。

主力事業の縮小や企業の合併などの場合にも、雇用を守り労働条件を維持する上で、労働組合は重要な役割を果たします。

さらに長時間労働の問題に取り組み、1日の勤務の終了時から翌日の勤務の開始時までの間に一定の休息時間を保障する「勤務間インターバル制度」の導入に取り組んでいる労働組合も増えてきています。情報労連などの産業別組合が企業別組合と連携して導入を促進しており、法律によってはいまだ導入されていない労働時間の実効性を伴った上限規制が、いくつかの企業レベルでは既に実現しているのです(*)。

(*)情報労連の機関誌『REPORT』2016年3月号「特集:労働時間に上限規制」で、KDDIにおける勤務間インターバル制度導入の取り組みが紹介されています。

ただし労働組合があるということは、そのような労働条件の向上が可能な「しくみ」が整っているという意味であり、労働条件の向上が実際に行われているかは、その労働組合がどれだけの役割を実際に果たしているかによります。そして労働組合とは労働者がみずから組織しているものなので、「組合幹部が何とかしてくれる」ものではなく、組合員である労働者一人一人が労働組合にどのように関わっていくかも問われているのです。

先日、UAゼンセンという大規模な産業別労働組合の支援によってワタミで働く社員・アルバイトの大半が組織化されたというニュースが流れていました。団体交渉を可能とするしくみが整った上で、実際に何がどう変わっていくか、それは結成された労働組合がどのようにその機能を果たしていけるか次第です。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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