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「年俸制」「裁量労働制」の悪用に注意

ブラック企業との向き合い方(5)

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NIKKEI STYLE

前回「労働条件を知りたい学生・知らせたくない企業」までは労働時間と残業代の関係を解説し、「固定残業代」が悪用される場合を見てきました。今回見ておきたいのは、「年俸制」と「裁量労働制」が悪用されるケースです。

年俸制って何?

次の例を見てみましょう。

【初任給】
大卒420万円(年俸制)

「年俸」という言葉はプロ野球選手の話題で聞いたことがあるでしょう。○○選手の推定年俸は○億○千万円とか、契約更改で○千万円アップしたとか、○千万円ダウンしたとか。その選手の1年間の活躍の度合いに応じて、プロ野球選手の年俸は大きく増減します。企業に雇われている労働者も年俸制で給与が支払われる場合があります。賃金を月単位ではなく年単位で決め、分割して支払う方法です。

さて、大卒1年目で年俸420万円という金額をあなたはどう評価しますか。「すごく高い!」と思いますか。

年俸420万円を12か月で割ると35万円です。各社の初任給を見比べると、高めでも21万円ぐらいですから、35万円はとても高く見えます。

ただし、初任給21万円の企業であれば、残業すれば残業代(割増賃金)が支払われます。ボーナス(賞与)も別途、支払われます。住宅手当などが出る場合もあるでしょう。それらを足し上げていくと、残業が多い場合には、同じくらいの年収になるかもしれません。

では、年俸制の場合、残業代はどうなるのでしょう? 込みで420万円なのであって、残業代は出ないのでしょうか?

年俸制だと残業代は出ないの?

プロ野球選手は個人事業主ですので、球団が残業代を支払う必要はありません。一方、年俸制の社員は企業に雇用されている労働者ですので、企業は労働基準法に従って残業代(割増賃金)を支払う必要があります(*)。

(*)また年俸制だと成果が上がらなければ給与が減額されても仕方ないと思うかもしれませんが、雇用されている労働者の賃金を使用者が一方的に減額することは、年俸制であっても認められていません。減額の際は、基本的に労働者の同意が必要です。

しかしプロ野球選手のイメージにつられるのか、「年俸制だから残業代は出ないよ」と言われると、「そういうものか」と思ってしまいがちです。そのため東京都産業労働局が発行している「ポケット労働法2015」では、年俸制であっても残業代の支払いが必要だと明記しています。

 「年俸制を採用すれば、残業代を支払わなくてすむ」と誤解している使用者も多いようですが、原則的に年俸額とは年間所定労働時間だけ働いたときの賃金を想定していますから、時間外労働や休日労働を命じたときには、別途、割増賃金を支払う必要があります。
 もし、一定の金額を割増賃金分として含んだうえで年俸額を決定するのであれば、あらかじめ年俸○○円、うち割増賃金として○時間分××円というように内訳を明らかにしておかなければなりません。そしてこの内訳が、労働基準法上の割増率を満たしている必要があります。
 また、事前に決められた割増賃金分を超えて実際に働いた場合には、割増賃金の不足分を追加して支払わなければなりません。
 もちろん、年俸額が最低賃金額を下回ってはなりません。

(「ポケット労働法2015」p.30)

上の説明の「もし......」以降は、前回までに説明した「固定残業代」と同じですね。先にあげた例でいえば、もし年俸420万円の中に一定の残業代を含んでいるのであれば、それが何時間分、何円なのかを明らかにしておき、その規定の時間以上の残業を行った場合には追加の残業代の支払いが必要です。

一方、年俸420万円の中に一定の残業代を含んでいることが明らかにされていないなら、残業した場合には年俸420万円に追加して、残業時間分の残業代が必要です。ですので初任給が年俸で示されている場合には、そこに残業代が含まれているか否か、また残業時間に応じた残業代が支払われるか否かの確認が重要です。

もし「裁量労働制だよ」と言われたら

実際の新卒採用情報を見ると、年俸制を採用している企業はIT関係やネットビジネス関係に多いようです。そういう企業の場合には、残業代について尋ねると「うちは裁量労働制だから」と答える可能性があります。

では裁量労働制とは何でしょうか。

裁量労働制は「みなし労働時間制」の一種です。「みなし労働時間制」とは、実際の労働時間にかかわらず、「ある一定の時間だけ働いたものとみなす」制度のことです。

もし1日8時間働いたとみなされるなら、実際には10時間働いていようと12時間働いていようと、8時間働いたものとみなされ、残業代が支払われません(ただし、深夜労働と休日労働に対しては割増賃金の支払いが必要ですので、労働時間を正確に記録しない職場は違法です)。

もし1日9時間働いたとみなされるなら、法定労働時間を超える1時間分だけ残業代(割増賃金)を支払えばよく、実際には12時間働いていても、残りの3時間分の残業代は支払わなくても違法とはなりません。これまで理解してきた残業代支払いの方法とはずいぶん違いますね。

そうすると企業側にしてみれば、裁量労働制を適用できたなら、残業させればさせるだけ、人件費が節約できてしまいます。労働者にしてみれば、残業すればするだけ、ただ働きが増えます。大問題です。

裁量労働制の対象業務はかなり狭く限定されている

そのため、裁量労働制の対象業務はかなり狭く限定されています。ほとんどの仕事には何らかの「裁量」の余地がありますが、「裁量」がある仕事ならすべて裁量労働制を適用できるというわけではありません。

裁量労働制は上の表に示したように、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。それぞれの内容は次の通りです(*)。

(*)以下の説明は、厚生労働省関連の調査研究機関である労働政策研究・研修機構による解説をもとにしています。

「専門業務型裁量労働制」は、(1)業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、(2)業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものです。

具体的な業務は、a.研究開発、b.情報処理システムの分析・設計、c.取材・編集、d.デザイナー、e.プロデューサー・ディレクター、f.その他厚生労働大臣が中央労働基準審議会の議を経て指定する業務(コピーライター、公認会計士、弁護士、不動産鑑定士、弁理士、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウェア開発、証券アナリスト、金融工学による金融商品の開発、建築士、税理士、中小企業診断士、大学における教授研究)に限られます。

この制度を実施するには、使用者はその事業場において過半数の労働者を組織する労働組合があればその組合、なければ労働者の過半数を代表する者と、労使協定を締結し、対象業務を特定したうえ、業務の遂行手段ならびに時間配分につき具体的指示をしない旨を定めるとともに、労働時間のみなし規定を置かなければなりません。また、協定を労働基準監督署長へ届け出ることも必要です。

このように、高度に専門的な業務に従事する者に限定して、きちんとした手続きを踏んで初めて適用されるのが「専門業務型裁量労働制」です。IT企業でプログラミングに従事しているから適用可能、といったものではありません。

もう1つの裁量労働制である「企画業務型裁量労働制」は、企業の中枢部門で企画立案などの業務を自律的に行っているホワイトカラー労働者について、みなし制による労働時間の計算を認めるものです。労使委員会における5分の4以上の多数決による決議を要するなど、専門業務型に比べて要件は厳格になっています。

対象となる労働者としては、少なくとも3年ないし5年程度の職務経験をもち、対象業務を適切に遂行しうる知識・経験をもつ者が想定されており、「企画課」などの部門の全業務が対象業務になるわけではありません。

裁量労働制だということにしておけば、残業代を払わずに済む?

このように法律上はかなり狭く限定された高度な業務に従事する者だけが裁量労働制の適用対象であるにもかかわらず、実際にはより専門性が低い者や、より職務経験が浅い者にも裁量労働制が適用されている場合があります。新卒1年目から裁量労働制が合法的に適用されるのは、かなり限られた場合のみ、というのが労働問題の実務に携わる弁護士の方々の判断です。

「年俸制だよ」とか「裁量労働制だよ」などと言われると、「なら、残業代は出ないよな」と思わされてしまいがちですが、残業代を意識させないために「年俸制」という形式をとり、本来は裁量労働制の対象業務ではないのに裁量労働制を適用しているのではないか、と疑われるケースが多くみられます。

そのため、新卒に「年俸制」や「裁量労働制」が適用されているなら、注意が必要です。年俸制を取っているか否かは給与の額を見ればわかりますが、裁量労働制が適用されているかどうかは、募集要項を見てもわからない場合も多いです。年俸制でなくても裁量労働制が適用されている場合もあります。企業説明会や面接などで確認しておきたいものです。

みなし労働時間制のうち、今回は裁量労働制を取り上げました。次回は「事業場外みなし労働時間制」を取り上げます。外回りの営業職はすべて「事業場外みなし労働時間制」を適用できるかというと、そうではない、という話題です。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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