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「初任給」の意味を理解していますか?

ブラック企業との向き合い方(3)

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NIKKEI STYLE

第1回は募集要項を確認して保存することの大切さを、第2回は労働時間と給与、残業代の関係を説明しました。ようやく、残業代で水増しされた初任給の問題(「固定残業代」の問題)に話を進める準備が整ったことになります。

固定残業代は、見かけの給与が高くなる

前回、下記の例を示しました。

<例1>
【初任給】
大卒25万円
※月30時間を超えた時間外労働には、別途手当あり

この例1の表現を素直に読むと、「月30時間を超えない残業には、残業代が出ないってことかな?」という疑問が生じませんか。そう読めてもおかしくありません。

けれども前回説明したように、1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を超える時間外労働(残業)に対しては、25%以上の割増賃金の支払いが必要です(*)。「30時間までの残業については残業代を支払わないけれど、30時間を超える残業については残業代を払うよ」ということなら、それは違法です。

(*)なお、深夜労働や休日労働、月60時間を超える時間外労働については、割増賃金の規定が異なります。詳しいことは東京都産業労働局「ポケット労働法2015」にわかりやすく説明されています。

「じゃあ、この企業は違法な労働条件で募集をしているの?」――。いいえ。25万円の初任給の中に月30時間分の残業代を適正に含んでいるなら、違法とは言えません。

ただしその場合、月30時間分の残業代がいくらであるのか(金額)が明示されていること、月30時間を超える残業には別途残業代が支払われることがあらかじめ説明されていること、実際に月30時間を超える残業を行った場合には別途残業代が適正に支払われていること、などが必要となります。

「じゃあこの企業の場合、月30時間の残業代を除いた初任給はいくらなの?」――。例1の記載からは、それはわかりません。これって、非常に不親切ですよね。

「なぜ、そんな不親切な表示をするんだろう?」――。なぜでしょうね。企業寄りのもっともらしい説明もできるのですが、素直に考えると、「給与を(実際より)高く見せたい」という動機があるのではないかと思います。初任給が19万円とか20万円とかの求人が並ぶ中で、25万円というと「おっ?」と思いますよね。

実際のこの企業の初任給はいくらぐらいなのでしょうか。他に手当がないなどの仮定を置いて計算してみると、205,000円あまりになります。なんだ、別にそんなに高くないですね。好条件じゃないのに好条件に見せようとするという点で、固定残業代は要注意です。

固定残業代でも、「残業代が固定」なわけじゃない

固定残業代の制度を取っている企業の募集要項の、別の記載例を見てみましょう。

<例2>
【初任給】
大卒25万円
※固定残業手当5万円を含む

先ほどの例1では固定残業代の時間数だけが表示されていましたが、こちらでは金額だけが記されています。時間数と金額の両方ともはっきり書いてくれないと、わかりにくくて仕方がないですよね。

この例2の企業の場合、「固定」の残業手当5万円を受け取っているのだから、いくら残業しても追加の残業代は出ないのでしょうか?

もう一度、労働基準法の基本に戻りましょう。残業代は、残業時間に応じた割増賃金の形で支払うことが必要です。一定額だけ払えばいくらでも残業させてよい、というわけではありません(裁量労働制など、特別な場合を除きます)。

もし一定額の手当さえ支払えば、月30時間の残業も月50時間の残業も、月100時間の残業でさえもさせてよいのだということならば、たくさん残業させた方が企業は人件費の節約になり、労働者は疲弊してしまいます。そんなことは法的に許されていません。

そのためこの場合も、固定残業手当5万円は一定の残業時間に対応していなければならず、その一定の残業時間を超えた残業に対しては、別途残業代の支払いが必要になるのです。

けれども「固定残業手当」という言葉は「固定」「手当」という言葉のイメージから、「残業代は一定額しか支払われない(それで法的にも問題ない)」と誤解されてしまいがちです。「残業代は固定だから。もう払ってあるよ」と言われると、「そんなものかな。しょうがないのかな」と思ってしまいがちです。

そのように誤解されがちであることを悪用して、いくら残業させても一定額以上の追加の残業代を支払わない、という企業も珍しくありません。法的には違法なのですが、そういう実態が横行しているというのが、労働問題に取り組む弁護士らの認識です。数万円の「固定」残業代を払えば残業させ放題というのでは、働く側はたまったものではありません。

そのような固定残業代の「悪用」は例2のような場合に限った話ではなく、例1のような場合にも起きえます。皆さんも、ここまで読んで理解するだけでも、慣れない話に結構神経を使ったと思うのですが、そこまで理解していないと「おかしい」と気づけないような複雑な制度を取ることによって、「残業代のごまかし」を図る企業も存在するのです。

「だったら、固定残業代なんて制度は違法にしちゃえばいいのに」――私もそう思いますが、これがなかなか難しいようですね。でも大きな社会的議論になっているので、関心を持ってください。

固定残業代が完全に隠されている場合も

例1は固定残業代の時間数だけが表示されている例、例2は固定残業代の金額だけが表示されている例でした。では、次の募集要項はどうでしょう。

<例3>
【初任給】
大卒25万円

残業については何も書いていないから、残業代は初任給25万円とは別に、残業時間に応じて支払われるのでしょうか。そう期待したいところですが、実はこの場合にも、初任給25万円の中に月30時間分などの残業代が隠されているかもしれません。

では、例4のように、高給でなければ大丈夫なのでしょうか。

<例4>
【初任給】
大卒20万円

いえ、この場合も、初任給20万円の中に月30時間分などの残業代が隠されていて、実際の基本給は非常に低いのかもしれません。

本当の労働条件は一体......?

こうなってくると「本当の労働条件は一体どうやって知ればいいの?」と思うのも当然です。労働条件を吟味したくても、吟味できません。知識があっても、判別できません。非常に困った事態です。

にもかかわらず、この困った事態がこれまで放置されてきました。ようやく昨年(2015年)になって、若者を対象とした求人においては、固定残業代の詳細(時間や金額など)を募集段階から明記せよ、という厚生労働省の指針が出ました。ですが、まだ実際の募集要項で適切な表記をしていない企業も多いのが実情です(この問題は次回、取り上げます)。

ただし、固定残業代の制度を取っている企業が、その存在を隠し続けて採用し、採用された労働者が給与明細を受け取って初めて固定残業代の存在に気づくといった場合には、実際の労働条件について合意がなかったものとみなされ、残業代を取り返すことができます。

そのため、あとから残業代を取り返されないように用心している企業は、どこかの段階で話を変えてきます。募集の段階では初任給25万円とだけ表示しておきながら、企業説明会の資料ではそこに30時間分の残業代を含むことを気づかれにくい小さな字で書いておいたり、最終面接でさりげなく説明したり、入社時の労働契約書に書いておいて急いでサインを求めたり、ということがあるかもしれません。

そういった場合にも気づけるように、一定の知識をもっておき、また、労働条件に関する書類を確認して保存しておくことが重要なのです。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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