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労働条件を知りたい学生 知らせたくない企業

ブラック企業との向き合い方(4)

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NIKKEI STYLE

前回「「初任給」の意味を理解していますか?」に詳しく取り上げた初任給の水増し問題(「固定残業代」問題)。給与が高いと誤認してしまうだけでなく、違法に運用されて残業代が適正に支払われない場合もあることを見てきました。

そのため政府も対策に乗り出し、募集段階から固定残業代の詳細を明記するよう企業に求めています。今回はその内容と企業側の対応を見ていきます。

労働条件は、募集の際と労働契約の際で違っていてもいい?

政府の対策を紹介する前に、知っておいていただきたいことがあります。それは、募集の際の労働条件と労働契約の際の労働条件は、違っていても法的には許容されているという点です。労働契約締結の段階で丁寧に説明して同意を得ているならば、よいとされています。

例えば次のようなケースを考えてみましょう。

中小企業A社は、初任給20万円で1名を募集しました。
けれども、やってきた学生はいまひとつ期待水準に達していません。
ただ、熱意はありそうです。
「一生懸命働きます! 給料は18万円でいいです!」と売り込んできます。
18万円なら、まあ雇ってもいいかなと思える学生です。

こういう場合にも20万円でないと雇ってはいけないということであれば、その学生は雇われるチャンスを失ってしまいます。そのため、18万円で合意してもよいとされているのです(ただし、いくらでも労働条件を下げてもよいわけではなく、最低賃金など労働法が求める基準を下回る場合は違法です)。

このようなケースを想定すると、募集の際の労働条件と労働契約の際の労働条件が違っていてもよいというのは一応、納得できます。では、次のようなケースはどうでしょう。

大企業B社は初任給20万円で50人ほどを募集しています。
しかし、実際にはB社は新入社員全員を「基本給15万円+固定残業手当5万円」で働かせており、それを何年も繰り返しています。

毎年多数の新卒者を採用していて、すべての新入社員を「基本給15万円+固定残業手当5万円」で働かせているなら、それぞれの応募者の能力に応じて労働条件を変えているわけではありません。B社は、嘘の好条件で応募者をだます意図があると考えられます。

こういう「求人票と実際の労働条件が違う」という問題はここ数年、国会でも取り上げられる大きな問題となってきました。最近では今野晴貴さんが『求人詐欺』(幻冬舎)という本を出して学生や転職者に注意を呼び掛け、対策を指南しています。

厚生労働省の指針で募集段階からの固定残業代の詳細明示が必要になった

この現状はさすがに放っておけないということで、若者を対象とした求人で固定残業代の制度を取っている場合には、その詳細を募集の段階から明示せよという厚生労働省の指針が出され、2015年10月から適用されています(若者雇用促進法を紹介する厚生労働省のサイトに、その内容を紹介したリーフレットが掲載されています)。

具体的には、固定残業代に関する労働時間数、金額、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働については割増賃金を追加で支払うことなどを明示すること、というのがその内容です。

例えば次のように書けばOK、ということになります。こう書いてあれば、応募を検討している者も、読み飛ばさない限りは誤解なく内容を理解できます。

【初任給】
  大卒25万円
※ 30時間分の残業代44,537円を含む
※ 月30時間を超えた時間外労働には、別途割増賃金を支払う
※ 固定残業代を除いた基本給は205,463円

ただし、こんな煩雑な表記をするくらいなら、最初から初任給205,000円とかで募集すればいいじゃないか、という気もしますよね。そうせずに「大卒25万円(※月30時間を超えた時間外労働には、別途手当あり)」とか「大卒25万円(※固定残業手当5万円を含む)」などの表記をしていた企業は、やはりそれなりの意図があったのではないかと疑ってしまいます。

では実際にこのような適切な表示は行われるようになったのでしょうか。残念ながら、表示が改善されていない例も多くみられます。3月1日の就活解禁以降にいくつかの企業の労働条件表示をホームページの採用欄や就職情報サイトでチェックしてみましたが、いまだに時間数だけを表示している企業や、金額だけを表示している企業、固定残業代が含まれていることはわかるものの時間数も金額も表示していない企業、固定残業代の存在を全く隠している企業などがあります。実際の労働条件をごまかしたいために固定残業代の制度を取ってきた企業は詳細表示をしたくないでしょうから、指針を無視する企業があっても不思議ではありません。

証拠を残し、説明の変更に注意

ただし、そういう指針が厚生労働省から出ているということは、企業側は知っているはずです。厚生労働省によると、ホームページでの周知徹底のほか、多数の経済団体を通じて各企業への周知徹底も依頼しているそうです。就職情報サイトの運営会社も知っているはずです。学生の側が知らないだけです。

知らないということは怖いことです。好条件での募集だと思って関心をもってしまう、途中で説明が変わっても気づかない、最終面接で残業代が含まれていることを告げられても大した違いではないと考えてしまう、変更された労働条件で合意してしまう――。いずれも「有名企業なら大丈夫だろう」「何十年も事業を運営している企業なら大丈夫だろう」といった漠然とした信頼に基づいた判断だろうと思いますが、そのような信頼を悪用する企業もあるのが現実です。

そういう不誠実さに気づけるためにも、これまで説明したような固定残業代の仕組みと問題点を知っておくことが必要で、そして労働条件が記載された書類を確認した上で保存しておくことが必要なのです。

そして証拠となる書類や実際の勤務時間の記録を残しておくことは、入社後に固定残業代の違法な運用に気づいた場合の対処のためにも大切です。固定残業代が違法に運用されている場合には、固定残業代を含まなかったものとして(つまり、ここで示した例であれば残業代を含まずに初任給25万円だったものとみなして)、過去2年間にさかのぼって残業代を請求することも可能です。詳しいことはブラック企業対策プロジェクトの冊子(嶋崎量・上西充子・今野晴貴「企業の募集要項、見ていますか?―こんな記載には要注意!―」)をお読みください。

労働条件を積極的に開示する企業こそ、評価されるべき

「労働条件を聞いてくるような学生はいらない」といった意見が匿名の人事担当者によって語られることがあります。しかし、本来であれば労働条件は学生がわざわざ聞くまでもなく、ネット上の募集要項や企業説明会で、詳しく説明されるべきだと思いませんか。

「そうか、聞いちゃいけないんだ」「そうか、気にしちゃいけないんだ」と従順になることは危険です。異を唱えずに従順に従った先に何が待っているかと考えると、募集の段階から労働条件をわかりやすく明示することを求めるのは、決して不当な要求ではありません。ちゃんと気にして、ちゃんと情報開示を求めていくことが、ブラック企業を労働市場から排除していくことにもつながると考えます。

「就職四季報(総合版)2017年版」には、今回からの新しい情報として、初任給の内訳が巻末に一覧表の形で掲載されています。回答している企業は、掲載企業のうち6割程度です。回答している企業の情報を見ると、初任給と基本給が同額である場合が多くみられます。つまり、固定残業代などの隠しておくべき要素がない、ということでしょう。

もっとも、回答しなかった企業の場合には固定残業代が含まれている、というわけでは必ずしもないでしょう。有名大企業でも、労働条件や離職状況などの職場実態の情報開示に消極的な企業はたくさんあります。

けれどもブラック企業への懸念から労働条件や職場実態を知りたいという学生の意向があることは、連合の調査などでも明らかになっており、政府の方針としても、労働条件を明示することが大切であり、職場実態も積極的に開示することが望ましいという方針が明確に打ち出されています。その方針に対応する企業と対応しない企業、それぞれの企業の姿勢の差が明確になってきつつあるのが現在です。

労働条件がきちんと開示される方向に動くのか、やっぱり隠される方向に戻ってしまうのか。それはそれぞれの企業の姿勢の問題であると同時に、求職者である学生がそれを求めるか否か、という問題でもあります。

労働条件を明示する企業を評価する、職場実態を積極的に開示する企業を評価する、という姿勢が学生側にも求められています。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ) 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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