企業情報の探し方(上) 平均年収は有価証券報告書で
就活リポート2019(1)
就活生が志望する企業の情報を調べるとき、就職情報サイトか企業のホームページを見ることが多いでしょう。ところが、就活生からは年収や離職率、残業時間など、「本当に知りたい情報はなかなか見つからない」といった声が多く聞かれます。就活をする上で必要となる情報の入手方法や正しい情報の見方などを3回に分けて紹介します。
日経HRが就活を終えた学生に実施した調査結果によると、入手したくても入手できなかった企業情報は「年収」が最も多く、「給料」「給与」なども多く挙がっており、「お金」に関する情報の入手に苦労したようです。就活サイトの企業情報ページにも初任給に関する情報はあっても、平均年収などの数字はほとんど掲載されていないのが実情です。では、どうすれば見つかるのでしょうか。
年収は有価証券報告書で
実は、上場企業であれば簡単に探すことができるのです。上場企業は事業年度ごとに業績などを開示する資料、有価証券報告書を作成し公開しています。この有価証券報告書には平均年収が記載してあり、金融庁が運営するホームページ「EDINET」や企業のホームページで閲覧可能です。EDINETなら「書類検索」ページの「書類提出者」に調べたい社名を入力し、検索すれば有価証券報告書がでてきます。企業のホームページなら「IR情報」「株主の皆様へ」などのページの中から有価証券報告書を探してください。
有価証券報告書が見つかったら、「第一部 企業情報」>「第1 企業の概況」>「5 従業員の状況」を見てください。そこに「平均年間給与」があります。これで、志望企業の年収を見つけることができるでしょう。有価証券報告書の提出企業が事業会社ではなく、ホールディングス(持ち株会社)の場合には注意が必要です。ホールディングスの従業員は平均年齢が高く、平均給与は高くなります。下にあるのはANAホールディングス有価証券報告書の従業員の状況です。従業員数150人となっており、客室乗務員やパイロットは含まれず、ホールディングスで働く管理業務をする従業員の平均年間給与が記載されています。
また、メーカーの場合には、工場で働く従業員を含めていることも多く、そのような企業はホールディングスとは逆に「平均年間給与」が低めに出ることもあります。「平均年間給与」については、従業員の対象によって実態と異なる可能性があることを知っておいてください。
有価証券報告書には、年収とは別に役員報酬が記載されています。学生の皆さんにとっては先の話かもしれませんが、将来の目標として見てみてもいいでしょう。「第一部 企業情報」>「第4 提出会社の状況」>「6 コーポレートガバナンスの状況等」の中に「役員報酬の内容」があります。役員数と役員報酬の総額があるので、平均の役員報酬額は分かります。また、1億円以上の役員報酬を得ている役員のいる企業は、役員とその報酬額を有価証券報告書に記載しなければないことになっています。「役員を目指して将来1億円以上の報酬を得る!」ことを目標にするのも夢があっていいでしょう。
未上場企業は入手困難
ただし、有価証券報告書を提出している企業なら年収を調べることはできますが、中堅・中小企業やベンチャー企業など未上場企業は情報を公表していません。『就職四季報 優良・中堅企業版』(東洋経済新報社)には「平均年収」の項目もありますが、公表していない企業が結構多くあります。未上場企業については入手するのは難しくなります。
未上場企業については説明会やOB・0G訪問で確認するしかありません。上場企業と同等の給与を出してる企業なら平均給与を教えてくれるでしょうし、そうでない企業なら「仕事はお金ではない。やりがいだ」などと、話をはぐらかせてくることもあります。
日本全体の平均年収422万円
最後に、日本全体の平均年収を紹介します。国税庁が毎年公表している「民間給与実態統計調査結果」の平成28年分によると、給与所得者4869万人の平均給与は422万円(男性521万円、女性280万円)です。業種別で見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」769万円、「金融業,保険業」626万円、「情報通信業」575万円がトップ3でした。参考まで。
日経HRコンテンツ事業部長、桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤講師。91年入社。高齢者向け雑誌編集、日本経済新聞社産業部記者を経て98年より就職関連情報誌・書籍の編集に携わり、2005年日経就職ナビ編集長、2015年日経カレッジカフェ副編集長、2018年から現職。著書は『これまでの面接vsコンピテンシー面接』『マンガで完全再現! 面接の完璧対策』『面接の質問「でた順」50』など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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