ストーリー語り、納得させる 変革リーダーの条件識者に聞く(上) 早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏

――イノベーションを起こせる会社の条件は。

「イノベーションには『知の探索』が重要です。新しいアイデアは既存の知を組み合わせることで生まれますが、人間は認知に限界があるからどうしても目の前のものだけしか組み合わせない。したがって遠くの離れた知見を探索する必要があるのです。自分のいる業界と離れた分野、技術、世界の視点などですね」

イノベーションに必要な「語る」リーダー

優れた経営者はストーリーテラーだという

「日本企業でイノベーションが生まれにくいのは、新卒一括採用や終身雇用といった慣習により、同じような知見を持った人の集まりになっていることが一因です。こうした制約を乗り越えて知の探索を進めるには、相当のエネルギーが必要となります。だからこそ、納得性が大変重要で、正確なことはわからなくても前に進みましょうと先導できるリーダーが求められるわけです」

「現代の優れた経営者に共通しているのは、ストーリーテラーだということです。ビジョンを自分が心から信じていて、周りにも『面白いでしょ、ワクワクするでしょ、だからちょっと大変かもしれないけど一緒に進もうよ』と言って納得させることができる。そしてもう一つの共通点は徹底的に学習する、経営者自身も知の探索をするということです」

――日本ではストーリーテラーはどういう人が思い浮かびますか。

「お会いした中では、日本電産の永守重信会長でしょうか。永守さんとお会いしたとき、30年後の話をされました。例えば『これからは一人が1台ドローンを持つ時代になる』という話を聞くと、子供の頃に本で読んだようなワクワクする未来が待っているという気持ちになりませんか。永守さんは『自分は、部下に夢を見させることだけができる』と話されています。まさに納得させる達人なのだと思います」

――日産自動車のカルロス・ゴーン元会長もカリスマの一人といわれていました。

「虚偽記載などの問題を脇に置いて、経営学の観点から分析すると、2つの問題が指摘できます。1つは大株主である仏ルノーと日産のトップを兼務したこと。利益相反の問題もありますし、2社の上場企業の経営を見るには時間が不足します」

「もう一つは、日産を経営危機から脱出させるのにゴーン元会長の経営手腕は大いに発揮されましたが、危機が落ち着いた後でイノベーションを起こすのに必要なリーダーシップはどうだったのかという点です。ビジョンを描いて納得させる部分ですね。自動車業界が大きな変革を迫られる中で、ゴーン氏にどれだけ遠くのビジョンが見えて、それを社内で納得させられていたかどうか」

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