ストーリー語り、納得させる 変革リーダーの条件識者に聞く(上) 早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄氏

入山章栄 早稲田大学ビジネススクール准教授
入山章栄 早稲田大学ビジネススクール准教授

経営者や著名人がリーダーシップについて語る連載「私のリーダー論」。年末の特別編として、これからの時代に求められるリーダー像を2人の識者に聞く。最初は早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏に経営学の視点から、変化の激しい時代にあるべきリーダーシップについて語ってもらった。

日本企業に欠けているのは「腹に落ちる」感覚

――最近の日本の経営者をどう分析していますか。

「顔の見えるリーダーが増えてきたと思います。この連載に登場したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長らがそうですね。経済成長が鈍化し、革新を求められる時代には、閉塞感を打ち破る経営者の強烈な個性が必要です」

「現在、経営学の世界で重要視されているリーダーシップの考えは2つあります。一つがトランザクショナル・リーダーシップ。質の高い管理型のリーダーのことで、部下のことをきちんと把握し、的確な信賞必罰を行う。部下はそれに応え、上司のために一生懸命働くという取引関係を前提としたものです」

「もう一つがトランスフォーメーショナル・リーダーシップ。一言でいうと啓発型です。ビジョンや長期の方向性を示し、部下の知的好奇心を刺激してワクワクさせて、一緒に巻き込んでいくリーダーです。両方とも重要ですが、特に変化が激しくイノベーションを起こさないと生き残れない現代は、後者のほうがより重要です。だから結果的に顔の見える経営者が増えてきたといえます」

――なぜ啓発型のリーダーが求められているのでしょうか。

「私が今の日本企業に一番足りないと思う視点を経営学的にいうと、センスメイキング理論になります。この理論が主張するのは、変化が激しい時代に重要なのは納得性だということ。平たくいうと、ストンと腹に落ちる感覚ですね」

「一般に日本の経営者は、ビジョンを徹底的に語る人が多くありません。それよりも正確な分析を示そうとします。しかし変化の激しい時代には前提条件がすぐ崩れるので、正確な分析には意味がなくなります。逆に社員にとっては自分の仕事に何の意味があるのか、何のためにこの会社で働いているのかわからない。働くことに納得していなければ、変革なんてできるわけがないのです」

「実際、業績を上げているグローバル企業の経営者は、『語る』ことを重視しています。英蘭ユニリーバのポール・ポールマン最高経営責任者(CEO)は世界各地の拠点を回り、『ユニリーバは衛生の会社であり、我々は世界の衛生問題を解決する』ということを説いています。ある意味、宗教家のようです」

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