優れた事業モデルほど危険 社員が成長しにくい会社20代から考える出世戦略(49)

 そうした分析結果を社長に示した上で、今後の会社の成長のためには、業績に連動した賞与だけでなく、個人の成長にあわせた昇給も考えていくべきではないか、という提言をしました。

 しかし社長は首をかしげました。

 「なぜ何年も会社にいるからというだけで給与を増やす必要があるんですか? 業績に応じて配分してあげればそれで充分でしょう。個人の成長も、業績に反映されてはじめて見えるわけですから」

できすぎたビジネスモデルは個人の成長を求めない

 社長はさらに言葉をつづけました。

 「たしかに一見すると会社に入って仕事を覚えて、営業成績を出せるようになるのは個人の成長のように見えるでしょう。けれども弊社の場合、その本質は個人じゃなくてビジネスモデルにあると思っています。

 なぜならうちの営業成績は、大量の宣伝広告費をかけてブランドイメージが定着しているからこそ、出せるものだからです。優秀な個人が頑張った程度では、今の業績は達成できていませんよ。だからあくまでも業績に特化した人事制度を設計してください」

 そう話した社長には、こちらの意見を聞く気はなくなっているようでした。

 それでもせめて若年層に対しては昇給の仕組みがないと今後の離職率を高める可能性がある、ということでなんとか許可をいただき、人事制度に反映してゆきました。

 その会社のビジネスモデルはたしかにとても優れたものでした。

 そして優れているがゆえに、新卒から間もない状態でも結果を出せるようになっていました。

 言い換えるなら、個人の資質に頼らずとも結果を出せる仕組み、として完成していたのです。

 たしかにその状態であれば、個人の成長に興味がなくなるもの仕方ないかもしれません。

ビジネスモデルの優秀さと働きがいとは一致しない

 もしあなたが投資家として投資先を探すのであれば、ビジネスモデルが優れていることは重要な要素です。

 しかしあなたが働く場所を探すとき、その会社のビジネスモデルの優秀さについて、慎重に判断しなくてはいけません。

 先ほどの例に限らず、優秀なビジネスモデルの会社では、個人の資質にかかわらず成果を出せるような仕組みが整備されています。だからそこで活躍するだけでは、個人としての成長に限界が来てしまう場合があるのです。

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