ひらめきブックレビュー

官房長官・幹事長の仕事ぶり 政治記者の目で描く 『官房長官と幹事長』

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2018年12月現在、歴代有数の長期政権となった第2次安倍政権。そのキーパーソンは間違いなく菅内閣官房長官と二階自民党幹事長と言っていいだろう。強い組織を作るにはトップを陰で支えるナンバー2の存在が重要だと言える。

だが官房長官と幹事長はいったい何をしているのか、よくわからないという人も意外と多いのではないか。本書『官房長官と幹事長』は、そうした陰に隠れて見えにくい、ナンバー2たちの仕事ぶりを政治記者の立場から描いた一冊だ。

■ナンバー2のタイプ

官房長官は閣僚と各省庁を調整する。いわば「まとめ役」「けんかの仲裁役」と言い表すことができるようだ。そして幹事長は「金(党の予算)」「ポスト(人事)」「選挙」をつかさどる。このため総理大臣に匹敵する強大な権力を有するのだという。

官房長官の代表として本書で挙げられているのは、後藤田正晴氏。副総理格の実力を持っていたとされるが、その調整の手腕は1986年三原山噴火時の対応に現れている。関係省庁が集まる災害対策本部は、縦割り行政のために島民救出策の調整に手間取っていた。そこで彼は内閣官房に権限を集め、内務官僚などのキャリアを持つ危機管理のプロとして官僚を統率し、全島民・観光客1万226人を無事脱出させた。

幹事長では金丸信氏が紹介されている。その特徴とは自身の基盤固めより世代交代に重きを置いていた点だ。例えば、田中派(田中角栄氏を中心とする自由民主党の派閥の1つ)内で、創政会という勉強会を設立するために尽力する。これは領袖である田中角栄氏に立てつくことではあったが、政治の世代交代の流れを作るという大きな目的があった。著者は、金丸氏は派閥のしがらみから距離を置き、常に日本の政治をどうしていくかという構想を持っていた政治家だと記している。

■ナンバー2の振る舞いは、いかにあるべきか

本書では他にも、菅官房長官が官僚組織を統率できる理由、二階幹事長の硬軟取り混ぜ党内をまとめる様など、ナンバー2らの業績、総理との関係性などが多数紹介されている。長年政治記者を務めてきた著者は、「政治は心である」という。官房長官であれ、幹事長であれ、問われるのは無私の心で自分のポストに忠実に徹することができるかどうか。政治家に限らず組織で働く者なら何度も考えたい問いかけだ。

今回の評者=はらすぐる
 情報工場エディター。地方大学の経営企画部門で事務職として働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディターとして活動。香川県出身。

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