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ペットからサボテン・手紙まで 日本人の供養心探る 『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』

2019/1/7

犬猫や金魚などのペットが死んだら庭にお墓を、というのは過去の話。今やペットはきちんと弔うのが珍しくない時代だ。著者のジャーナリストで浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏によれば、現在のような人間並みの葬式は、ペットを室内で飼い出してから顕著になった。一つ屋根の下で暮らすことで、ペットは「家族」に昇格し、人間同様に供養して当然の存在になったのだ。

■供養の本質にある「ありがとう」

ペット供養の源流を探ると、大阪は岸和田市の義犬塚古墳にたどり着く。主人に忠誠を尽くして死んだ犬の墓として飛鳥時代に作られたものだ。また、東京両国の回向院には、江戸時代に主人の困窮を救って命を落としたとされる猫の塚がある。

これらの古墳や塚を見ると、その根底には愛するものの死を悼む以上に、人の役に立ってくれたことへの感謝の念が色濃いことがわかる。

日本全国にはありとあらゆる生き物の供養塔があるが、ここでも共通するのは感謝の言葉だ。漁民が「捕らせてくれてありがとう」とクジラやマグロの供養塔を建てれば、殺虫剤メーカーらは「おかげで私たちの仕事が成り立っています」とゴキブリやシロアリの供養塔を建立して手を合わせる。

もちろん、感謝だけでなく殺生したことへのわびやら、「二度と害を及ぼさないでくれ」という祈りなど、幾重もの思いが種々の生物に向けられる。意識を持つ生物(有情)のみならず草木や微生物などの無情のものも往生、成仏は可能と考えられるようになり、かくしてサボテン供養塔や菌塚までもが出現する。

■日本人なら「供養せずにはいられない」

日本人の供養の心は留まることを知らず、生きとし生けるものどころか、無生物さえその対象となる。例えば、長野善光寺の迷子郵便供養塔、東京奥多摩の日食供養塔がそれだ。誰にも読まれず処分される「不幸な」手紙たちに、人間に降りかかる病や災難の「身代わり」になって欠けるお天道さまに、日本人は魂を見いだし、時に悼み、時に感謝する。

そこになんらか人との関わりがあるのなら、魚でも害虫でも紙だろうが自然現象だろうが、すべからく「供養せずにはいられない」。

この世界に類のない供養心の背景として、著者は自然界全てのものに霊が宿るとするアニミズムが古来よりあったことを挙げている。アニミズム信仰と仏教の教えが融合して醸成された日本の供養心。どうやら筋金入りと言えそうだ。

今回の評者=大武美和子
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディティング・チームの一員。慶大卒。

ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる (朝日新書)

著者 : 鵜飼秀徳
出版 : 朝日新聞出版
価格 : 961円 (税込み)

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