気持ちを新たに、年越しの瞬間を大勢で迎えるカウントダウン。
花火やライブで盛り上がり、夜景や汽笛で幻想的な世界を味わう。
交通費以外は無料で楽しめるイベントを、10人の専門家が選んだ。
■若者中心に恒例行事化
年明けを大勢で祝うカウントダウン。若者を中心に年末の恒例行事として定着してきた。東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)などのテーマパークが有名だが、高額なチケットで人数限定となると気軽に参加するにはハードルが高い。今回は交通費以外は無料で楽しめるイベントをランキングした。
寒い夜には屋台や飲食ブースがあるとありがたい。年越しそばやお汁粉などが無料で振る舞われることも多いが、大半は人数限定なので、配布開始の時間はチェックしておきたい。
イベント後の交通手段も要確認。初日の出や初詣など周辺スポットを含めたプランを練るとよさそうだ。大都市では大みそかに終日運転を実施する鉄道も増えてきたので、上手に活用したい。車の場合、飲酒運転が厳禁なのはもちろんだが、来場者数に比べて駐車場の台数が少ないケースもあるのであらかじめ確認しておこう。深夜なので寒さ対策も万全にして臨みたい。
東1位 函館山
(北海道函館市) 700ポイント
100万ドルの夜景 新年の平穏祈る
北海道随一の観光スポットで「100万ドルの夜景を見ながらぜいたくなカウントダウン」(井門隆夫さん)。年明けと同時に参加者が一斉に鳴らすクラッカーの音が冬空に響く。
冬場は道路が閉鎖となり、山頂へのロープウエーが特別営業する。通常の往復料金は1280円(中学生以上)だが、記念乗車券代わりのオリジナルポストカードと記念品の抽選券付きで1500円だ。展望台のラウンジで催されるパーティーは別料金で人数限定。カウントダウンの音声は無料で入れる展望台内に流れ、一体感を醸し出す。
「18年は全道停電に見舞われた。新年は“明るい年”になるよう平穏を祈りたい」(富本一幸さん)。冬の山頂は冷え込むので、寒さ対策は万全に。下りの最終は午前1時発。
(1)函館山ロープウェイ山頂展望台駅(ロープウェイ山麓駅の最寄りは函館市電十字街電停)(2)帰りは十字街電停を午前1時16分発が最終電話0138・27・4150(函館山ロープウェイ)
東2位 牛久大仏
(茨城県牛久市) 650ポイント
年明けへ 唱える南無阿弥陀仏
地上120メートルの大仏をレーザー光線でライトアップ。除夜の鐘と同じ108発の打ち上げ花火が夜空を彩り、カウントダウンの掛け声は残り6秒から「ナ・ム・ア・ミ・ダ・ブツ(南無阿弥陀仏)」になる。「毎年SNSでも話題になるオンリーワンのイベント。とにかく記憶に残る」(浅野祐介さん)。「大仏様とカウントダウンイベントという組み合わせのギャップに驚く」(横倉和子さん)
年明けとともに、普段は有料の大仏の内部を無料で開放し、地上20メートルの3階部分まで上ることができる。管理事務所は「あくまで宗教行事の一環だが、広く関心を持ってもらうきっかけになれば」としたうえで、混雑への理解を求めている。「イベントの後は大洗海岸まで初日の出を見に行くのも良い」(青木之さん)。
(1)JR牛久駅(2)無(3)電話029・889・2931(牛久大仏管理事務所)
東3位 横須賀港
(神奈川県横須賀市) 610ポイント
カレースープでホカホカ
港に停泊する艦隊がイベントの主役。年明けを汽笛で知らせ、サーチライトとライトアップで暗闇の中から浮かび上がり、花火が上がる。「とても幻想的な瞬間。先着1000名に無料配布されるカレースープも格別」(浅野さん)。「飲食ブースが多く、食べる物に困らない」(山本さん)。ライブも会場を盛り上げる。
(1)JR横須賀駅、京浜急行汐入駅(2)有(3)電話046・825・1080(よこすかカウントダウン実行委員会事務局、当日は横須賀市コールセンター電話046・822・2500)
東4位 横浜関帝廟
(横浜市) 410ポイント
中国式獅子舞 心躍る
爆竹が鳴り響くなか、横浜関帝廟(かんていびょう)横の横浜中華学院校庭で、中国式の獅子舞や龍舞(りゅうまい)が披露される。「とにかく派手で一体感のあるイベント」(浅野さん)。周辺には中華街や山下公園など観光スポットが目白押し。みなとみらい線やJRも当日は終夜運転する。「大桟橋や特別営業のマリンタワーから眺める初日の出もお勧め」(水津さん)。
(1)みなとみらい線元町・中華街駅、JR石川町駅(2)有(3)電話045・226・2636(横浜関帝廟)
東4位 葛西臨海公園
(東京都江戸川区) 410ポイント
大観覧車のライトアップ
日本最大級の大観覧車がカウントダウンの舞台装置になる。年越し5分前に照明が落ち、年明けと同時に点灯する。観覧車前には特設大型時計も登場する。ステージではダンサーのパフォーマンスも。「東京ディズニーランドの花火や、シンデレラ城越しの初日の出を見られるかも」(水津さん)。観覧車は有料だが「乗って楽しめるアトラクション型カウントダウン」(野々松さん)。
(1)JR葛西臨海公園駅(2)有(3)電話03・3686・6911(ダイヤと花の大観覧車)
東6位 八甲田丸
(青森市) 300ポイント
船内でも船外でも新年気分
青函連絡船の中で現役期間が最長だった「八甲田丸」。ほぼ就航当時の状態で係留保存された船内で、午後11時から限定100食の年越しそばが振る舞われる。船外では餅まきや花火で新年気分。「青森ベイブリッジとのコントラストが計算されたように素晴らしい」(森岡さん)。「周辺にホテルも多く、歩いて参加しやすい。決して派手さはないが、青函連絡船とともにカウントダウンできる」(岩田淳さん)。
(1)JR青森駅(2)無(3)電話017・735・8150(八甲田丸)
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西1位 道後温泉
(松山市) 640ポイント
音風景「刻太鼓」 日本の風情感じる
国の重要文化財でもある温泉街のシンボル、道後温泉本館をライトアップする。午後11時20分からの「おやじダンサーズ」のショーで幕開け。本館をスモークで包むパフォーマンスや、日本の音風景100選に選ばれた本館最上階の「刻(とき)太鼓」の音色が雰囲気を盛り上げる。「荘厳なたたずまいの本館に日本の風情を感じながら年越しを迎えられる」(野々松秀和さん)
本館の入浴は有料(入館は午後10時半まで)だ。「浴衣に身を包みながら食す名物の坊ちゃん団子は格別。赤いギヤマンガラスをはめた屋上の障子がエキゾチック」(水津陽子さん)。年が明けるとミカンやお汁粉などが無料で振る舞われる。
本館は2019年1月から保存工事に入る。「この機会にぜひ味わっておきたい」(山本哲也さん)。写真は映画監督の蜷川実花さんが手がけた2015年のライトアップ。
(1)伊予鉄道後温泉駅(2)無(3)電話089・943・8342(道後温泉旅館協同組合)
西2位 門司港レトロ
(北九州市) 580ポイント
花火とともに響く汽笛音
1889(明治22)年に開港した門司港には、昭和初期までに建てられた趣のある建造物が今も残り、現在は門司港レトロ地区として観光客を集める。大みそかには名物の「バナナのたたき売り」やバンド演奏で盛り上がる。年越しが近づくとイルミネーションを消し、「蛍の光」の演奏と合唱で厳かに新年を迎える。年明けの花火と同時に停泊中の船舶が一斉に汽笛を鳴らす光景は圧巻だ。
19年3月まで修復工事中の重要文化財、門司港駅は、11月に1階部分が創建時の姿に復元された。「産業遺構と港が相まって、水面に映えるイルミネーションも最高にきれい」(森岡順子さん)。「対岸の山口県下関市側に渡り、門司港を眺めるのも一興」(水津さん)かもしれない。
(1)JR門司港駅(2)午前0時53分発が最終(3)電話093・321・4151(門司港レトロ総合インフォメーション)
西3位 明石海峡大橋
(兵庫県神戸市・淡路市) 460ポイント
世界最長のつり橋で
世界最長のつり橋で、日の出まで様々な色に変化する「カウントダウンイルミネーション」が楽しめる。「ロマンチックな雰囲気で新年を迎えられる」(浅野さん)。神戸淡路鳴門自動車道の淡路SA(上り)に設置された「ハートライトゲート」からの眺めが人気。JR舞子駅から徒歩圏の舞子海岸からも鑑賞できる。新年を迎えると周辺の船が一斉に汽笛を鳴らすことも。
(1)JR神戸線舞子駅(2)有(3)電話078・291・1033(本州四国連絡高速道路お客さま窓口)
西4位 べっぷ屋台村
(大分県別府市) 380ポイント
海超しの夜景 大人な空間
旅館街に近い北浜公園に地元の飲食店の屋台が並ぶ。「おいしい食べ物とお酒を味わいながら、のんびりと大人なカウントダウン」(野々松さん)。飛び入り参加が可能なカラオケ大会など手作り感もありつつ、プロの歌手やダンサーによるショーもある。公園前には別府湾が広がり、年明けと同時に上がる花火は壮観。海越しに大分市内の夜景も楽しめる。
(1)JR別府駅(2)無(3)電話080・3943・4355(べっぷ屋台村実行委員会)
西5位 ベイサイドプレイス博多
(福岡市) 370ポイント
白熱 パフォーマンスバトル
「多彩なプログラムで盛り上がる『お祭り』カウントダウン」(浅野さん)。目玉は屋外ステージで無料で観覧できる「カウントダウンバトル」。アイドルやアーティスト、プロレスやお笑いなどのパフォーマンスが対決形式で行われる。新年を花火とゴム風船で祝った後は「天神などの繁華街も近く、朝まで時間を過ごすにも事欠かない」(山本さん)。
(1)福岡市地下鉄呉服町駅(2)有(3)電話092・281・7701(ベイサイドプレイス博多)
西6位 和歌山マリーナシティ
(和歌山市) 340ポイント
音楽に合わせ 花火華やか
音楽に合わせ、特殊効果を加えた華やかな花火が夜空を彩る。「打ち上げ場所の近くまで行けるので迫力抜群。周辺には温泉や市場もあるのでイベント以外でも楽しめる」(横倉さん)。特設ステージでは地元出身のミュージシャンらが年またぎのライブ。「関西ではUSJと並ぶ人気のカウントダウンイベント」(浅野さん)。車での来場が現実的。
(1)JR海南駅(2)無(3)電話0570・064・358(和歌山マリーナシティ)
◇ ◇ ◇
ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。施設名もしくはイベント名(所在地)。(1)鉄道の最寄り駅(2)最寄り駅の終夜運転の有無(3)問い合わせ先。写真は東日本3位海上自衛隊、同6位青森市、その他は主催者側提供。
調査の方法 専門家の協力で「交通費以外は無料で楽しめるカウントダウンイベント」を東西それぞれ11ずつリストアップ。専門家に「イベントの魅力」「景観や周辺施設も楽しめる」「アクセスのしやすさ」などを基準に順位を付けてもらい、集計した。
今週の専門家 ▽青木之(クラブツーリズム)▽浅野祐介(ウォーカープラス編集長)▽井門隆夫(高崎経済大学准教授)▽岩田淳(JTB)▽水津陽子(まちづくりコンサルタント)▽富本一幸(トラベルニュース編集長)▽野々松秀和(アソビュー)▽森岡順子(日本観光振興協会)▽山本哲也(お祭り評論家)▽横倉和子(日本旅行総研)=敬称略、50音順
[NIKKEIプラス1 2018年12月22日付]
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