不動産取引もAIが台頭 消費者が賢く付き合うには?不動産コンサルタント 田中歩

写真はイメージ=123RF
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2018年の不動産関連のニュースで、筆者にとって印象的だったことのひとつが「不動産テック」と呼ばれる企業の興隆です。これまで複数の企業が不動産とテクノロジーを融合させたビジネスを生んできており、18年には「一般社団法人不動産テック協会」が設立されるなど、徐々にその存在感を高めています。不動産テックは中古住宅の取引の慣習や手法を大きく変える起爆剤になる可能性があります。中古不動産の流通市場がより活性化するには、消費者や不動産業界が不動産テックとどう付き合うかにかかっています。

価格査定のばらつきを改善

筆者の解釈では、不動産テックとは、あらゆるモノがネットにつながるIoT、人工知能(AI)、ブロックチェーン(分散型台帳)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)といった技術を駆使して、不動産業界の古い取引慣行や生産性の低さなど様々な課題を解決し、消費者に提供する不動産の価値を向上させるものだととらえています。

例えば、これまでの価格査定は、対象の不動産の立地や形状、建物の状態などの情報を収集し、近隣の取引事例と比較しながら、それぞれの人の主観的な評価で加減点して算出するのが一般的でした。

また、「我が社に売却を依頼してほしい」という気持ちが働くこともあり、そうした不動産会社や担当者の査定価格は高めになる傾向があります。結果として、査定価格のばらつきが大きくなる問題がありました。

最近ではAIを利用して、ウェブサイトなどに掲載されている価格情報から自動的に価格を推定する仕組みがいくつもあります。価格査定のばらつきや時価との差が小さくなれば、査定額に対する消費者の不信感も払拭され、これまでよりもスムーズな取引が可能になると期待されています。

また、不動産の売却に関する情報についても、所在地や規模、価格といった情報だけでなく、地盤や水害の情報、保有コスト(固定資産税など)、建物のコンディションや維持管理コスト、住宅ローンを加味した一生の資金収支シミュレーション、周辺エリアの情報などもひも付けできるようになれば、それぞれの消費者のニーズに応じ、これまで以上に適切な物件情報を提供することができます。

必ずしも万能ではない

ただ、「テクノロジー」というと万能であるかのように思ってしまいがちですが、必ずしもそうではないことを分かったうえで付き合うことが大切だと筆者は考えています。

特に、不動産テックを活用した価格査定や住宅ローンシミュレーション、AIを利用して自動的に提供される「お勧め物件情報」など、消費者自らが考えることをやめてしまいかねないサービスには、少し注意したほうがいいと思います。

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