2018/12/26

記事

例えば、AIを活用した価格査定では、一般には世の中のウェブサイトに掲載されている売り出し情報から時価を推定しているものも多いと聞きます。仮に取引事例を利用しているにしても、過去のデータを使っている以上、現在の時価を適正に表していると言い切ることはできないわけです。

実際、テクノロジーを駆使している複数の価格査定サイトを使ってみると、それぞれの結果は思った以上に差があります。不動産テックに任せきることにはやはり無理があり、自分自身で適正な価格について考える必要があるのです。

また、高度なテクノロジーから導き出された答えだけをもって、住まいを売り買いするという大きな判断をしてよいのかという議論もあります。住まいの売買や不動産での運用は、必ずしもデータから導き出された合理性だけで判断できるものではないと思います。

例えば、住まいを購入するといっても、個々人で住まいに対する価値観や哲学は異なります。投資用不動産を取得する際も、もうけだけのために投資する人もいれば、「街をよりよくしたい」「借り手とその家族の人生を応援したい」などと考える人もいるでしょう。人は必ずしも損得勘定だけで価値判断をしているわけではないのです。

自らの価値観・相場観を見極める

不動産テックを上手に利用するためには、ひとりひとりが自分なりの相場観や価値観を見極めたうえで利用する必要があると筆者は考えています。

このコラムの「相場に固執していない? 損をしない住まい選びとは」でも書きましたが、自分にとっての「価値」とは何かということをまず自身で考えることが大切で、そのうえでこうしたテクノロジーを「サポート役」として利用するスタンスが大切ではないでしょうか。

一方、不動産業界は不動産テックを活用することで、これまで手作業だった、あるいは手作業に近かった業務の多くをIT化して生産性を向上させることができるようになります。物件情報を消費者に届けることや、様々な事務作業は不動産テックが担うようになる可能性が高いでしょう。

こうなると、住まいの売買、相続対策、賃貸借、維持管理といったニーズに対して、顧客の価値観や哲学、事情や背景を加味したうえで、不動産テックを活用しながら「編集者」のように立ち回ることができる仲介業者が、消費者から求められるようになるのではないでしょうか。

2019年はますます不動産テック関連のサービスや商品が生まれてくると思います。これからの不動産業界がどう変わっていくか、とても楽しみです。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。