チリの高級・高コスパワイン 適度な酸味でエレガントエンジョイ・ワイン(7)

チリのワイン産地の一つ、アコンカグア・ヴァレー。後方にそびえるのはアンデス山脈
チリのワイン産地の一つ、アコンカグア・ヴァレー。後方にそびえるのはアンデス山脈

「安旨(やすうま)ワイン」の代名詞、チリワイン。1本1000円前後かそれ未満のデイリーワインの分野では、優れたコストパフォーマンスで絶大な人気を誇る。だが、実は2000円以上の高級ワインの分野でも、チリワインが高コストパフォーマンスワインの宝庫であることは一般にはあまり知られていない。安旨にちょっと飽きたら、ワンランク上の、エレガントな味わいのチリワインを試してみてはどうだろう。

「1本1万円のボルドーワインやカリフォルニアワインを買うくらいなら、3000円払ってチリワインを買った方が絶対に得」。こう断言するのは、ワイン輸入業者ヴァンパッシオン(東京都港区)の社長でチリワインに詳しい川上大介さんだ。

「言い換えれば、たった3000円でフランスやカリフォルニアの超高級ワインのおいしさを味わうことができる。実際、チリワインとその他の国のワインを専門家が(銘柄を隠した)ブラインドテイスティングで飲み比べてみても、チリワインが負けることはほとんどない」とチリワインの品質に太鼓判を押す。

ちなみに、ヴァンパッシオンの主力商品はフランスの高級ワインで、川上さんは決してチリワインをひいきしているわけではない。

安旨チリワインとは対照的に、高級チリワインが高コストパフォーマンスであることがほとんど知られていない理由について、川上さんは「ブランドイメージの問題」と指摘する。確かに、高級ワインというと、普通はフランスやイタリア、カリフォルニアなどが真っ先に思い浮かぶ。加えて、チリワインは「安旨」のイメージが強すぎ、2000円や3000円のチリワインは「高すぎる」として、消費者は即座に拒絶してしまうようだ。

チリがフランスやカリフォルニアの高級ワインに負けない高品質のワインを安く造れる 第1の理由はワイン用ブドウの栽培に理想的な気候にある。ブドウは寒すぎても暑すぎても品質の良いものはできない。ブドウの栽培に適した地域は北半球、南半球ともに緯度が30度から50度の間とされる。チリの主要ワイン産地はこの間に入る。しかも、チリの主要産地の多くは高温乾燥で、ブドウが熟しやすい。

また、緯度30度から50度の範囲に入る主要ワイン産地はほとんどが先進国で、チリは南アフリカやアルゼンチンと共に例外だ。つまり、チリは気候条件は世界の主要ワイン産地と一緒だが、人件費や土地代を含めた生産コストはずっと低い。これが、高品質のワインを安く造れる第2の理由だ。川上さんによると、チリでは、1990年代は人件費も土地代もフランス・ブルゴーニュ地方の7分の1と言われていた。現在、その差は縮まったものの、「依然、競争力はある」(川上さん)。