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フットボールはぶつかり合い 日本式戦術はもう古い ドーム社長 安田秀一

2018/12/27

9年連続で大学日本一の帝京大のラグビーを見ても、前への意識を強く感じます。「オープンにも展開するじゃないか」といわれるかもしれませんが、その前提として前へのプレッシャーをかけ続けている。だから、わずかな隙間を作ってすれ違う「ハッ」とする瞬間、躍動感にあふれたプレーが生まれるわけです。

サッカーでもイングランド・プレミアリーグの試合などは、ボールを保持した側は相手の守備網を切り裂くように前に進んでいく。Jリーグでよく見られるような、ボールを回しながら相手の様子をうかがうといったプレーをすると、スタンドから一斉にブーイングがおきます。

アメフトでいうと、守る側からすれば、相手が外に逃げていくときは迷いなくタックルに行けます。ところが、前から当たってくると思うと、怖さもあって一瞬受け身の姿勢になってしまう。そうなると守る側の負けです。だから突っ込ませないように守備側も前に圧力をかける。

アメフトのキックオフリターンは、猛スピードでリターンする側とタックルで止めようとする側のチキンレースだ(11月17日、NCAAフットボール)=USA TODAY Sports

アメフトのキックオフリターンが最もイメージしやすいでしょうか。猛スピードでリターンする側とタックルで止めようとする側。相手が引いてくれると簡単に抜けるし、簡単にタックルできる。「俺とお前とどっちが先に引くか」というチキンレースです。そのせめぎ合いを制する者がフットボールの勝者。

相手をかわして進むのではありません。向かっていくことで相手の心に隙間ができる。その心の隙間が物理的な隙間につながる。結局は「勇気対勇気」の戦いなのです。僕はそれが人々を熱狂させると考えています。

それが本質だときちんと理解して戦わないと、フットボールと言いながら、違うゲームになってしまうのではないかとも感じます。

フットボールに限らず、日本では海外発祥のスポーツに本来の魅力とは別の独自の解釈を付け加えがちです。反対の視点で言えば、本来、一本勝ちを狙うことが是とされる柔道が海外に広まり、ポイントで上回ることで勝ちを狙うようになることと似ていると思います。

例えば野球なら、日本の解説者がMLBのプレーを見て「基本ができていない」と酷評することがあります。しかし、野球は米国発祥のスポーツであり、基本は米国にあるわけです。正確には「日本流とは違う」と評すべきです。日本では堅実な守備やチームプレーが評価されますが、野球の本質はやっぱり、バットでボールを思い切り打つことだと思います。

サッカーやラグビーでも、日本式の戦い方を追求する傾向があります。日本人はフィジカル、パワーが弱いことを前提とし、戦術やスピードに勝機を見いだそうとしたがります。しかし、ラグビーやサッカーの強国が、戦術やスピードで日本より劣っているでしょうか。縦にぶつかり合うのがフットボールの本質。身体を鍛え、フィジカルで勝負することから逃げては、本当に強いチームはできません。

前回の2015年ラグビー・ワールドカップで世界トップクラスの南アフリカ代表を破った日本代表はそれをきちんとやってのけました。朝6時半から筋トレを行うなどの猛練習に耐えてフィジカルを鍛え上げ、日本人でも強豪国を相手に縦に勝負できることを示してくれました。日本のラグビーのスタイルが世界と近づいたと思っています。

■野球の大谷翔平選手を見よ

日本人がフィジカルの面で弱いという考え方は、もう古いと思います。昔は食生活などによる体格の違いは明らかにありました。今は最新のトレーニング法や栄養などの情報が誰にでも行き渡っていて、それらに基づいてトレーニングをし、栄養を摂取すれば身体を大きく、強くすることは可能です。もちろん骨格の違いとかはありますが、努力でカバーできる範囲は以前よりはるかに広くなっていると感じます。

野球の大谷翔平選手を見てください。もともと背が高く体格が良いことは確かですが、彼は高校時代からトレーニングや食事などにすごく気を使い、考えて身体をつくり、MLBの選手と比較しても規格外のパワーとスピードを持ったアスリートに成長しました。もうフィジカルが弱いという前提で日本式の戦い方を模索する時代ではないでしょう。

繰り返しになりますが、攻める側と守る側の勇気対勇気の攻防がフットボールの本質です。野球で言えば、内角に投げ込む勇気対踏み込んで振り抜く勇気の戦いです。勇気を示す場、勇気を鍛える場というのは、フットボールに限らずすべてのスポーツに共通するものではないでしょうか。スポーツを通じて人間が本来持っている闘争心や勇気を感じることができるから、人々は感動し、熱狂するのだと思います。

スポーツの魅力の本質をしっかりと理解し、それを存分に表現する戦いを目指すこと。僕はそれがスポーツの価値を最大化するために最も大切な「本質」だと考えています。

安田秀一
1969年東京都生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年同社を退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本の総代理店契約を結んだ。現在は同社代表取締役。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、キャプテンとして同校を全国ベスト8に導く。大学ではアメフト部主将として常勝の日大に勝利し、大学全日本選抜チームの主将に就く。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)として同部の改革を指揮した。18年春までスポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めたほか、筑波大の客員教授として同大の運動部改革にも携わっている。

(「SPORTSデモクラシー」は毎月掲載します)

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