人気のカッティングマシン 案内版やPOPの作成に
もう30年ほど前だが、レタリングという仕事の現場を取材したことがある。手書きの文字の通りにシール用紙などを切り抜いて、店舗や会社のガラス扉に貼る装飾を作るのだが、その書き振りと切り抜く手際にさすがは職人芸と感心したものだ。
だが、カッティングマシンが登場した今では、そんなレタリングも驚くほど身近になってしまった。最近は自宅で購入して趣味で使う人が多いという。例えば、シール用紙や紙を切ってバイクや模型などに貼り付けるオリジナルのステッカーやペーパークラフトなどを作れる。ブラザー工業の「スキャンカットCM300」は布も切れるので、キルティングやアップリケの製作などにも使えて、主婦層にも人気だそうだ。
ブラザーでは今後、ビジネス向けにも展開していくという。確かに、仕事でも社内の案内板を作ったり、新製品展示のPOPに使ったりと、幅広く使えるかもしれない。
興味を引かれたので、エントリーモデル「スキャンカットCM300」を借りてみた。実勢価格は4万6000円前後。なお、スキャンカットCM300には上位モデルの「スキャンカットDX」シリーズもある。
パソコンやスマホなしで使える
スキャンカットCM300は単体で使えるマシンだ。僕はカッティングマシンを使うのは初体験だったが、難しいと感じることはなかった。マニュアルを一度読めば問題なく作業できるだろう。
まず、切り抜きたい形の画像やイラストを設定、レイアウトする。操作はスキャンカットCM300のモニターで完結するので、パソコンやスマートフォンは不要だ。スキャンカットCM300にあらかじめ登録されているカットや文字などの素材データを使用してもいいし、自作のデータを取り込んで使うこともできる。
自分でデータを用意する場合、写真やイラスト作成アプリで作った複雑なイラストよりも、ワードやパワーポイントの描画機能で作成したような図のほうが向いているだろう。パソコンで作成したデータはUSBケーブルで接続してスキャンカットCM300に取り込める。ただ、プリンターで印刷し、スキャンカットCM300のスキャン機能で取り込むほうが簡単だ。
次に、カットするシール用紙や紙を付属のマット(台紙)に貼り付けて、スキャンカットCM300にセットする。マットには強粘着タイプと弱粘着タイプがあり、付箋の接着面のように貼りはがしが可能だ。マットにカットする用紙をしっかりと固定することで、切り取っている間に用紙がずれるのを防げるわけだ。
注意したいのは、マットに紙を貼る位置だ。文字やイラストをレイアウトする際、モニター上に表示される方眼は、用紙を固定するマットに印刷された方眼に対応している。用紙をマットに貼り付けるときの位置を考え、文字やイラストがはみ出さないように配置するのがポイントだ。あとは、カットするだけ。所要時間はデータ量にもよるが3分程度だ。
会社のロゴを切ってみた
試しに、会社のロゴを切り出してみた。少し複雑な文字なのだが、パソコンに保存してあったデータを印刷して、スキャンカットCM300のスキャナー機能で取り込んだ。作業時間は慣れてしまえば10分程度だ。
複雑な文字も思ったよりきれいに切り取れた。これなら業務用としても問題なく使える。業者に文字などのシート作成を依頼すると、1枚あたり3000円程度かかる。サイズによってはもっと高くなったり、送料が追加されたりすることもあるだろう。スキャンカットCM300で10~20枚もカットしたら、元は取れると思う。しかも、自分でカットすれば即日利用できるのがうれしい。
個人店舗はもちろん、企業の営業所などでの利用にお薦めしたい。イベントの多い学校などにも向いている。スキャンしたデータを保存しておけば、同じシールや文字などを何枚でも作成できる。趣味での利用にとどめておくのは確かにもったいない。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『ここで差がつく! 仕事がデキる人の最速パソコン仕事術』(インプレス)がある。
[日経トレンディネット 2018年12月3日付の記事を再構成]
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