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訪日客「あと千万人」の壁 パイロットとホテルが不足 20年に4千万人を目指すが…

2018/12/26 日本経済新聞 朝刊

浅草を訪れた外国人観光客ら(12月17日、東京都台東区)

日本を訪れた外国人の数が2018年初めて3千万人を突破した。アジアを中心とした旺盛な訪日需要に支えられ、5年で3倍に増えた。ただ、政府が掲げる20年に年間4千万人の目標を達成するには航空便の拡大や宿泊施設の整備など、多くの課題がある。

けん引役となっているのはアジア諸国だ。特に中国、韓国、台湾、香港の4カ国・地域で全体のおよそ7割を占める。最近はタイやフィリピン、欧米など他国からの訪日客も増えてきており、裾野が広がっている。

20年に4千万人の訪日客を受け入れるには、課題がいくつもある。まずは訪日客の主要な足となる空路の拡大だ。国内では訪日客の利用増を追い風に格安航空会社(LCC)の新規就航が増えている。例えばフィリピンのLCC、セブ・パシフィック航空は成田―セブ路線を増便して毎日運航し始めた。同国の日本への渡航客数は18年1~9月に前年同期比約2割増と伸びが大きい。

内閣府はLCCの就航便数が19、20年と毎年2割ずつ伸びていけば訪日客数が4210万人に達すると見込む。国内のLCC就航便数は16~17年に3割弱伸びており、ペースを維持できれば4000万人突破は可能とみられる。

ただ、パイロットが足りなくなるおそれがある。国土交通省は国内で20年に年380人、30年に年430人の新規パイロットが必要と推計するが、足元では年に300人強しか確保できていない。国内空港の受け入れの問題もある。羽田、成田、関空だけでは対応しきれず、地方空港の活用が前提になる。

また、宿泊施設も足りない。訪日客や20年の東京五輪開催を見込み、ホテルは新設ラッシュだがそれでも訪日客4000万人時代を見据えると不足感は強い。不動産サービス大手のCBRE(東京・千代田)の推計では20年に東京23区で3500室が不足。地方でも札幌、名古屋、福岡で合計7000室ほどが足りなくなるという。

不足を補う存在として期待される民泊は、18年6月施行の住宅宿泊事業法(民泊新法)での届け出数が1万件を超えた。今後も拡大を急ぐ。富裕層向けのグレードの高い施設が少ないというかねての指摘には、森トラストはマリオット・インターナショナルの最高級ホテル「エディション」を20年に東京の虎ノ門と銀座で開く。三井不動産は22年にJR東京駅前に「ブルガリホテル」を誘致する計画だ。

政府は20年のあと30年に訪日客6千万人とし、観光業を基幹産業とするという中長期的な目標を掲げる。人口減が進むなか、訪日客による消費拡大を期待する。

ただ17年の訪日客消費は4兆4千億円で、国内総生産(GDP)に占める割合では1%に及ばない。訪日客1人当たりの平均消費額は15万~16万円ほどでここ数年ほとんど増えていない。買い物だけでなく、訪日客が長期滞在しながらさまざまな体験を楽しむコト消費を強化し、リピーターもつかめるようなコンテンツの開拓も今後の課題となる。

[日本経済新聞朝刊2018年12月19日付を再構成]

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