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「高還元」うたうキャッシュレス払い 魅力と注意点は

2018/12/21

■政府、19年秋の増税時に「5%還元」

日本のキャッシュレス比率は20%弱で、欧米、中国に大きく後れを取っている。政府はこれを2025年までに40%、将来は80%に引き上げることを目標に、あの手この手を繰り出している。

その目玉の一つが19年10月の消費税率を8%から10%に引き上げるタイミングで始める「5%還元」だ。増税率を上回る思い切った還元率。増税による消費の落ち込み防止とキャッシュレス推進の二兎(にと)を追う政策だ。

具体的には期間限定で、クレジットカードなどを使ってキャッシュレスで決済すると5%分をポイントで還元する仕組み。さらに増税から9カ月間、中小小売店でクレジットカードや電子マネー、QRコードなどで決済した場合のポイント還元分を負担する方向。中小商店の決済端末の導入を自治体が補助する仕組みも設ける。

今は決済会社によって異なるQRコードに盛り込む情報の標準化にも取り組む。実現すれば、どのスマホ決済でも同じQRコードで読み取れるようになる。店に張り出すタイプのQRコードの場合、決済手段ごとにQRコードを掲示しておかなければいけないが、一つのQRコードを張っておくだけですむ。実現すればキャッシュレス対応の店舗が増えるのはまちがいない。

利用者がスマホでQRコードを示し、店側が金額を入力して決済する(アマゾンペイ)

経済産業省は19年中に統一したい考え。「キャッシュレスのハードルがさらに低くなる」(決済コンサルのインフキュリオンの丸山弘毅社長)と歓迎する声が上がる。

ただ使う側にはいまだキャッシュレスに対する不安も残っているようだ。博報堂生活総合研究所の17年12月時点の調べによると「キャッシュレス社会になった方がよい」との回答は49%なのに対し「ならない方がよい」は51%。反対の理由は「浪費しそうだから」が全体の11%と最多で「お金の感覚がまひしそうだから」(10%)、「お金のありがたみがなくなりそうだから」(8%)が続いた。若年層の女性には浪費への警戒感が根強い。

まだ技術的に成熟しているとはいえないスマホ決済には「暗証番号や個人情報が流出したり、犯罪に使われやすかったりするのでは」との懸念も根強い。各社は収集した購買履歴などのデータを加工して収益を確保したい考えがある。一定のリスクがあることを常に意識しておきたい。

■5%以上の還元率を目指そう

消費生活評論家、岩田昭男氏

キャッシュレス決済は使わないと損だ。現金を使わない決済が使える店は急速に広がっており、各社のポイント、還元競争は激しくなっている。現預金だけでは中長期のインフレに対応できないだけでなく、短期の家計の恩恵も受けられない。利用者は注意事項を押さえつつ、こまめに最新情報を収集したい。

還元ポイントはキャッシュレス決済でクレジットカードやデビットカードも使えば、二重取り、三重取りできる。積極的に組み合わせ、まず5%前後の還元率を確保してほしい。ペイペイが「20%還元」をうたっており、今後も期間限定でこのような販促が相次ぐ可能性が大きい。まめに還元情報を収集し、その都度、魅力的な内容のアプリに切り替えれば、家計の支出を抑制できる。余裕資金を投資に回すことも可能だ。

利用店舗も増えていくだろう。これまでのクレジットカード決済は、売り上げの3%超の加盟店手数料の高さが問題となっていたが、今後はゼロ~1%などの低いコストで済むようになる。そうすると中小店舗でも導入が容易になる。個人利用者にとっては使える範囲が広がり、紛失・盗難リスクのある現金を常に財布に入れておく必要性が薄れる。

現状は様々な決済手段と還元制度がある。各社がポイントに使う資金は基本的に販売促進費。破格のキャンペーンはいつまでも続けられるわけではない。還元率が下がるとネット上で批判の声が出て、人気が下がる場合もある。人気は移ろいやすいので、いつまでも同じサービスに執着しないように注意しよう。

システム障害などの事例も一部にある。普及に伴い還元率や利便性だけでなく、決済インフラとしての信頼性も問われることになるだろう。

(マネー報道部 南毅)

[日経ヴェリタス2018年12月16日付]

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