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息苦しく不穏な時代を撃つ 映画回顧2018年

2018/12/25

瀬々敬久「菊とギロチン」(C) 2018 「菊とギロチン」合同製作舎

好景気だというのに、将来への不安は募る。世界各地でナショナリズムが高まり、社会が分断され、自由にものが言いにくくなった。そんな息苦しく、不穏な時代を撃つ映画に力を感じた。

■「これを撮らねば」監督の強い意志

瀬々敬久「菊とギロチン」は関東大震災後の1年間のナショナリズムの高まりを、女相撲の力士たちとアナキストの青年たちの物語として描いた。社会主義者が一掃され、遅れてきた理想家たちは焦り、やけっぱちのテロに走る。地域や家庭に居場所をなくした女たちは「強くなりたい、自由に生きたい」と願い、相撲の世界に飛び込む。社会の同調圧力が強まり、少数者が弾圧されるなか、懸命に生を模索する若者たちの群像劇だ。「右傾化し、締め付けられる時代が、今の時代とリンクした」と瀬々。関東大震災後の大正末期を描きながら、東日本大震災後の現代を撃っていた。

舩橋淳「ポルトの恋人たち」は18世紀のリスボン大地震後のポルトガルと21世紀の東日本大震災後の日本を結ぶ物語。復興を急ぐポルトガルの貴族の館で日本人奴隷が虐げられ、2020年東京五輪後の不況に沈む日本ではブラジル人労働者が切り捨てられる。国境や階級によって排除された人々のドラマを「排外主義が世界を席巻する現状に向けて作った」と舩橋。

是枝裕和「万引き家族」(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro. 

塚本晋也「斬、」は幕末の動乱期に、腕の立つ侍でありながら、人を斬ることをためらう男を描いた。大義に疑念を抱き、憎悪の連鎖を恐れ、刀を凝視する浪人。塚本はそこに現代人の心情を託した。戦争の苛烈さを描く「野火」に続き、不穏な空気が漂う現代日本への塚本の危機感が色濃くにじむ。

是枝裕和「万引き家族」は、社会から見過ごされた疑似家族の物語。年金とアルバイトと盗みで暮らす血のつながらない家族をつないでいたものは何なのか? 是枝の問いは日本のみならず世界に突き刺さった。カンヌ国際映画祭で日本作品として21年ぶりにパルムドールを獲得。ケイト・ブランシェット審査員長は「見えない人々に光を当てた」と評した。

以上4作はすべてオリジナル作品。「これを撮らねば」という監督の強い意志が伝わってきた。

大森立嗣「日日是好日」(C)2018「日日是好日」製作委員会

日本映画の秀作は多かった。大森立嗣「日日是好日」は茶道を通して成長する女性の物語。お点前の所作と人々の身ぶりを、まるでアクション映画のように冷徹にとらえ、そこに感情がうねっていた。凝視する力そのものを主題とした矢崎仁司「スティルライフオブメモリーズ」の静謐(せいひつ)さも忘れられない。

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