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なぜ、日本人はごみを拾うのか ~ごみ拾いの起源と本質とは?

僕ら流・社会の変え方(30)

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NIKKEI STYLE

先日行われたサッカーワールドカップ日本対セネガル戦。白熱した試合の後に、お互いのファンは粛々と会場のゴミを拾っていました。その姿が素晴らしいと、世界中で反響を呼んでいます。立つ鳥後を濁さず。日本人の習慣とも言えるその行為は、今や日本が世界に誇れる文化の一つとして発信され、また他国にも広がりはじめています。

僕が代表を務めているグリーンバードというNPOも、2002年から街のごみ拾い活動をスタートさせ、今や国内に70チーム、海外に11カ国16チームを展開するようになりました。「2020年までに国内外に100チーム展開する」という目標を掲げ、最近は海外を中心にチームを拡大しているのですが、ごみ拾いの輪が、こうして日本だけでなく世界中に広がっているのはとても嬉しいことです。

でも、そもそも、日本人はいつから、なぜごみ拾いを始めたのでしょうか?どこに起源があるのでしょうか?ここでちょっと振り返ってみたいと思います。

戦時中からあるごみ拾いの活動

日本のごみ拾い活動は、首都・東京ではじまったとされています。東京都公文書館の小野美里さんによれば、以後の首都美化運動の原型を形づくったのは、1954年に開始された「街をきれいにする運動」だと言います。(『東京都公文書館調査研究年報(2018年第4号)』)これは、戦後の危機的な社会経済状況から脱し、国内外からの観光客の増加や国際イベントの開催によって「外」からの目が意識されるようになったことを背景に、1954 年4月から東京都によって1年間実施されたものです。僕が新聞の縮尺版を調べる限り、1943年2月9日には「清々しい皇都に きょうから清浄運動一斉に始まる」、翌年10月15日には、「帝都清浄化運動、27日から全都一斉に」(ともに朝日新聞)などといった記事があるので、「起源」という意味では、あるいはもっと前なのかもしれません。

今や世界的に「きれいだ」とされる東京も、その頃はとても汚い状況でした。『都政人』昭和 29 年5月号にはこんな描写があります。

 東京は「日本の顔」であるといわれる。だが、この顔の何と汚いことであろう。(中略)我慢のならないのはその道路のあちこちに散らばつている紙屑である。そしてところどころ汚物がうず高く積んである。東京の道路は塵捨場の役もするらしい。(中略)川だつてそうだ。いまに東京の川という川は、都民の捨てる塵芥で、立派?に埋立てられるかもしれない。

原因として、戦災により打撃を受けたインフラの整備が十分に進まないまま人口や産業が集中し、ごみの処理や下水の処理が追い付かなかったことが大きかったものの、小野さんの分析によると、それだけでなく、当時は、公共の場を汚さないという都民意識の欠如もごみ問題の一因だと認識されていたということです。

そのような中、はじまったのがこの「街をきれいにする運動」です。これは、単にごみ拾いをするというものではなく、都民の公共意識の高揚を狙って行われたのだそうです。計画の実施にあたっては、公園・街路・駅前の美化・公衆トイレの清潔保持などを実行することが掲げられました。運動を推進するため、団体・個人の表彰やモデル地区を設定しただけでなく、標語やポスターの掲出、メディアの利用、コンクールの実施、学童の作文募集などの周知活動も行われました。戦後の厳しい財政の中で、都が清掃をすべて担うのではなく、都民の意識を高揚しつつ、みんなの力で首都をきれいにしようとしたのですね。改めて歴史を振り返ってみると、僕たちグリーンバードがやろうとしていることと、考え方がとても近くてびっくりしました。

ごみ拾いをもっとカッコよく!

僕たちグリーンバードは2002年、表参道でスタートしました。表参道のイルミネーションがはじまり、綺麗だった表参道の道が、年々増える観光客の数とともに、汚くなり、道に捨てられていくごみも増えていったことに始まります。

ごみ拾いをすれば、そこは一時的には綺麗になります。しかし、またすぐ汚くなってしまう。当時、表参道は10人で1時間ごみを拾うと、45リットルのごみ袋が、20~30袋たまってしまうほどでしたが、次の日に行くと、また同じ量が落ちている有様でした。

キレイな街をずっと維持するためには、ごみをひたすら拾うだけではなく、ごみを捨てる人を減らすためのコミュニケーションをしなければならない。そのために、やるべきことは2つありました。一つは、街にごみを捨てにくい雰囲気をつくること。街の中で、ごみ拾いしている人が目立つ状況をつくれば、「なんとなくポイ捨てしづらい」空気が生まれます。

もう一つは、ごみ拾いに一度でも参加したことのある人を増やすこと。ごみ拾いに参加することで、拾う側の気持ちがわかり、ポイ捨てしなくなります。そこで、僕らは、特にあまりごみ拾いに参加しそうもない人にどれだけ多くアプローチできるかを考え、啓発活動を行ってきました。そのために、カッコ良いビブスをつくったり、街のイケてる若者に声をかけてみたり。いろいろな試行錯誤をするうちに、参加する人たちは増えていき、気づけば国内外で年間3万人が参加する活動になりました。一昨年からは、東京都の「#ちょいボラ」という、多くの若者が気軽にボランティアをはじめられるようにするための活動にもご一緒させていただくようになりました。これもまた巡り合わせです。

ごみ拾いの本質とは?

グリーンバードは今年、設立16年になりました。日々ボランティアに参加してくださる方のおかげで、また他にも町会・自治会の活動、商店街や企業のクリーンアップ活動が広がる中で、少なくとも日本においては、ごみの問題はだいぶ解決されてきたように思います。でも一方で、東京都がはじめた「街をきれいにする運動」や僕たちグリーンバードのコンセプトにある「公共意識の高揚」もしくは、「自分たちの街は自分たちの力でなんとかする意識の向上」は、まだまだな気がします。

少子高齢化がますます進み、行政に潤沢な予算の確保を期待できない中、「課題先進国」たる日本にあって、僕たちは自分たちのすぐ近くにある街の課題を、行政に任せっきりにしてしまっていないでしょうか?たとえば、放置自転車の問題。これはそもそも違法駐輪をなくせば、その撤去にかかる人手はいらないし、道路に無造作に止められた自転車は、気づいた人が片付ければいい。「シェア」の考え方は、自転車の数を減らすかもしれません。便利さを求めて、駅から近いところ、職場に近いところに駐輪場の建設を訴えるのはいいけれど、あるいは違法駐輪を撤去するための人員を増員することを訴えるのはいいけれど、そのために、少しの差に、たくさんの税金が使われることがあるということを、僕らはもっと認識するべきではないでしょうか?

自分たちの街は自分たちの力でなんとかした方が、楽しい!

改めて、僕らはごみ拾いという活動、またその延長線上の活動に可能性を感じています。自分たちの街を行政に頼りきることなく良くしていく、その実践は、自分たちの想像力で発想し、近くに住む人と協力して課題を解決することと同義です。その作業は、ちょっと手間がかかるけど、実はとても楽しい。薄くなっていた地域のつながりをもう一度確認することになるし、課題を解決した時には、街の人に喜ばれて、大きな達成感を味わえるからです。

今、国内外のグリーンバードのチームでは、ごみ拾いの枠を超えて、行政に新しい提案をしているチームがあったり、商店街の活性化に一役買っているところがあったり、街の人たちを巻き込むイベントをつくっていたり、街に監視の目を増やし、自転車の盗難を減らす活動を行っていたりします。今までなかなか関わることのできなかった幅広い年齢層の人たちが、ごみ拾いというキッカケを通してつながりをつくり、街の様々な課題に協働して取り組む仲間になっているのです。僕は、街に老若男女が混ざり合うコミュニティがもう一度つくられることが、街に活気をつくること、また新しい社会課題解決の力になると信じています。

イノベーションは、考え方や分野の異なる人との間で生まれます。また、今ある社会課題は、これまで解決できなかったからあるものです。だから、地域には、イノベーションが起きる土壌がたくさんある!ぜひみなさんも、身近な街の活動に関わって、その生みの喜びを味わってみてください。

横尾俊成(よこお・としなり)
 NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi

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