ストッパーをはずそう 思い込みに気づくと最初の一歩が出せる
やる気スイッチを入れよう(37)
「そんな有名企業、絶対無理」「就活、うまくいく気がしない」と思うのは、自分の行動をストップさせる「ストッパー」のせいかもしれません。ストッパーをはずすことができれば、無理と思うことができるようなったり、思いもしなかった結果を出せたり、もちろん就活もうまくいくようになります。
ストッパーがあると「もったいない」
ストッパー1. 「劣等感による決めつけ」
「絶対、無理と思ったので」。大学3年の本山さん(仮名)は、あるインターンシップに応募しなかったことについて、こうコメントしました。確かに、人気企業で倍率も高そうでした。しかし、同じ学科の同級生2人は合格しました。本山さんは後悔しましたが、時すでに遅し。
本山さんは、「募集は、有名大学の人たちでいっぱいになると思った」そう。これが本山さんのストッパーのようです。有名大学の学生に対するコンプレックス(劣等感)があり、行動をストップしてしまったのです。可能性があったのに、ストッパーによって行動できないのは、非常にもったいないことです。
ストッパー2. 「失敗を恐がりすぎる」~フィクストマインドセット(Fixed Mindset)
「失敗すると落ち込むから」「できないとイヤだから」と言って、初めからトライしないケースもあります。失敗したときのつらさや、まわりにバカにされるという恐怖がストッパーになるのです。失敗したときひどく落ち込むのは、「失敗」=「自分に能力がないことの証明」という図式が頭にあるからです。
この図式の裏側には、「能力は生まれつきのものだから一生変わらない」という考え方があります。ですので、失敗すると、自分の一生の能力を否定されたことになり、非常につらいのです。
一方、能力はどんどん変わっていくし伸びる、と考える人もいます。彼らにとって「失敗」は、イコール「成長のきっかけ」です。失敗してもひどく落ち込んだりはしません。恐がらずに、何度でもトライすることができます。「能力は伸びる」という考え方を、グロウスマインドセット(Growth Mindset)と言い、成長や成績向上につながることが実証されています。「能力は生まれつき」と考えるのはフィクストマインドセット(Fixed Mindset)と言い、無気力状態につながるとされています。「成功したら嬉しいけど、失敗しても成長できる」と考えて、ストッパーをはずしましょう。
ストッパー 3. 「頼ってはいけない」と思いこむ
学生と話していると、先生や大学の職員、家族等の大人に頼ることを考えない人が多いと感じます。「大人を頼るのはよくない。いやがられそうだ」というストッパーがあるようです。
適切に助けを求めるのは、サポートシーキング(Support Seeking)と言って、社会生活を送る上で大切な能力です。頼るときには、次のことに気を付けると、親切に対応してもらえます。まずは、「お聞きしたいです」「お願いします」という最初のあいさつ、そして、「ありがとうございました」という最後のあいさつをきっちりしましょう。頼る前に、何を相談したいのかをメモにしておくと、手短に話ができ、自分も相手も楽です。そして、あとで結果がどうなったのかを、メールやラインでいいので、報告しましょう。次にまたお願いするときに、かなり話しやすくなります。
ストッパー 4. 「半分しかない」と悲観的になる
コップに半分の水が入っています。「半分しかない」、「半分もある」、あなたの感覚はどちらに近いですか。ものごとの明るい面に注目する楽観主義と、暗い面に注目する悲観主義では、楽観主義の人のほうが結果を出しやすいことがわかっています。悲観的な考え方は、大きなストッパーになり、人の行動を止めてしまいます。
「まだ内定がない」という状況で、「もうだめだ、就職できない」と思うか、「まだ募集している企業が多い。これからだ」と思うかで結果が変わります。今年メーカーに就職した後藤さん(仮名、女性)は、就活中、内定がなかなか出ず、苦労しました。偶然見つけた募集の締め切りは、その日の夕方。「まだ、3時間ある!」と必死で応募書類を書き、完成したのは、提出に行く途中の電車の中でした。なんとその企業に採用が決まり、今は楽しく働いています。
自分のストッパーに気づきましょう。気づくだけで克服できるストッパーも多いです。ストッパーに気づいたら、それをはずして、やる気スイッチを入れましょう。様々な可能性が広がり、就活でも結果を出しやすくなります。
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今回がこの連載の最終回です。やる気スイッチを入れる方法について、37回にわたって解説しました。やる気は自分で変えられます。やる気スイッチを押して、納得できる大学生活を送りましょう! 近く「就活教室」で連載を始めます。そちらでまた、お会いしましょう。
明星大学経済学部特任教授、JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長。筑波大学の博士課程で、組織におけるモチベーションの伝染について研究中。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBモチベーションズでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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