「内定がないのは自分だけ」 就活の焦りと付き合うには
やる気スイッチを入れよう(27)
経団連指針では「面接解禁は6月1日以降」となっていますが、「友達はもう、内定が出た」「○○さんは、内定2社持ってる」 など、周りの状況を見て、焦りを感じている人も多いと思います。焦る気持ちを、やる気スイッチに変える方法を考えてみましょう。
就活生の8割は焦っている
焦っている時は、視野が狭くなっています。例えば、「内定が出た友達2人」と「内定が出ていない自分」の3人しか見えていなかったりします。すると、「3人中、内定が出ていないのは自分だけ」「こんなに焦って大変な思いをしているのは、自分1人だ」と、勝手に思い込み、さらに焦る、という悪循環に陥りがちです。
複数の調査で、就活生の7~8割以上が、就職先が決まらなかったらどうしよう、という不安を抱きながら、活動をしていることがわかっています。説明会の会場で隣に座った人も向かいの人も、余裕があるように見えて、実は不安や焦りを抱いているのです。「自分だけではない」と、少し視野を広げるだけでも、焦りは緩和されます。
「焦り」を分解してみる
胸がざわざわして、いてもたってもいられなくなる「焦り」ですが、なぜこのような気持ちになるのでしょうか。
要因の1つは、まわりとの比較によって、自分を評価することにあります。「他者と比べて、自分が劣っている」と感じたとします。たいていの人は、自分を劣っていると思いたくないため、その状態をなんとか解消したい、と強く願います。その結果、「このままじゃだめだ」という焦りが生じます。自分を守るために、焦りが生じているのですね。自然な反応と言えます。
しかし、この自然な反応は、間違ったサインを捉えて、発動している場合もあります。そもそも比較することはできないにもかかわらず、単純に内定が出たか否かで、優劣を判断し、焦り感情を沸き立たせている可能性があるのです。応募している業界が違う、企業の規模が違う、企業の採用スケジュールが違う等、就活の条件は1人1人異なるので、必ず時期的な差は出ます。
焦ってドキドキしている自分に、「就活は1人1人違う」「この焦りは、反応のミス」と、何度も言い聞かせてください。
暗い未来を想像する「焦り」
「どこにも採用されなかったら」と、未来の暗い姿を想像し、「どうしよう」と思っている人も多いと思います。これも焦りの大きな要素です。この「どうしよう」の気持ちは、自分の中に閉じ込めておかずに、明るいところに引っ張り出しましょう。誰かと話し合ったり、相談したりするのです。
大手の製造業を志望しているNさんは、「どこにも採用されなかったらどうしよう」、「やっぱり、もっと小規模の会社もたくさん受けておけばよかった」と、悶々としていました。大学のキャリアセンターに相談に行ったところ、「Nさんが志望している企業はみな、これから採用活動が本格化するため、どこもまだ内定を出していない」、「その業界の中小企業であれば、例年二次募集が出るので、そこで応募することができる」等です。
昨年の二次募集の資料を見せてもらったところ、興味のある企業が含まれることがわかりました。Nさんは、「いろいろな方法があるとわかって、ホッとしました。内定時期のことなど、すでに自分が知っている情報もありましたが、第三者にあらためて言ってもらうと、気持ちが落ち着きます」と話しています。
明るい未来に近づく
「どうしよう」と焦っているときは、暗い未来を避けようという気持ちが強く働いています。この「いやなことを避けたい」という気持ちが長く続くと、ストレスを強く感じ、負担感も大きくなります。
焦りを感じているときは、いったん立ち止まり、自分の目標についてしっかり考えましょう。納得できる職場で生き生きと仕事をしている、明るい未来をイメージしましょう。明るい未来に近づこうという気持ちは、人を前向きにさせ、ストレスを軽減します。就活へのやる気も、安定的に長続きするようになります。
就活に「焦り」はつきものです。自分の「焦り」を理解し、対処することで、やる気にスイッチを入れ直しましょう。
明星大学経済学部特任教授、JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長。筑波大学の博士課程で、組織におけるモチベーションの伝染について研究中。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBモチベーションズでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。