この秋は「逆算」してなりたい自分に近づこう
やる気スイッチを入れよう(30)
夏休みを、なんとなくふわふわと過ごしてしまった、という人も多いのではないでしょうか。自分が何を目指しているのかわかっていないと、この先の学生生活も、そうやってふわふわと過ごし、なんとなく終わってしまうかもしれません。
この秋は、なりたい自分への一歩を踏み出しましょう。
未来から逆算して、この秋にやることを考える
将来の計画を立てるとき、普通は、現在を基準に考えます。「今の自分の性格や能力を考えると、こういう仕事をして、こんな趣味を持って」と、今の視点で未来を見ます。これを、フォアキャスティングといいます。しかし、なりたい自分になるには、未来の理想の姿をイメージして、そこから逆算するバックキャスティングの思考が有効です。
ここでは、バックキャスティングをした上で、この秋を充実させる方法を考えてみましょう。
次の4つのステップを踏むとうまくいきます。
第1ステップ:理想の状態をイメージする
第2ステップ:未来の自分から今を見る
第3ステップ:具体的な目標を文章にする
第4ステップ:すぐにできることを行動に移す
来年の今頃は、どんな自分でいたいか
第1ステップで、理想の状態をイメージします。ここでは、1年後にどんな自分でいたいかを考えましょう。今の年齢に1才足して、●●才の自分を思い描きます。そして具体的に、来年の9月●日の午後、何をしているかを想像します。
大島さん(仮名、大学3年、女性)は、次のようなイメージを描きました。
ボランティア活動や就活で友達が増え、楽しく交流している。
卒論は大変だが、順調に進み、単位も問題がない。
すべてがうまくいき、不安やストレスがなく、楽しそうです。ぜひ、この状態を実現したいですね。
1年後の自分になって、1年を振り返る
第2ステップが、まさにバックキャスティングの部分です。1年後の理想の自分が、この1年を振り返ったとすると、どんなことを言うでしょうか。
大島さんが、1年後の自分になって、考えてみました。
「3年の冬からインターンシップに何社か行って、就活も余裕を持ってできたのが、内定につながった」
「就活に必要なTOEICの点数を1年で上げられたので、有利だった」
「3年で十分な単位を取っていたので、4年は就活や卒論に集中できた。就活を早めに終わらせたので、アルバイトや旅行ができた」
なりたい自分になるための要素がリストアップされています。
この秋にしたいことをリストにする
さあ、いよいよ第3ステップ、具体的な目標の文章化です。バックキャスティングでリストアップされたことの中から、この秋にすべきことは何でしょう。
大島さんは、次の3つを掲げました。
11月19日のTOEICで●●点を目指す
10月までにワンデーインターンシップ2社に参加する
大島さんのように、具体的な時期や、2社などの数字を入れておくと行動に移しやすく、達成へのやる気が強まります。
秋には、大学祭や部活動の大会等の予定がある人もいるかもしれません。「大学祭の出店で、皆と協力して売り上げ目標●●円を達成する」「部活の大会で、上位3位に入る」という目標もあり得るでしょう。
今すぐできることを始める
今すぐできることをやりましょう。人は、少しでも目標に近づくと、その分だけやる気が上がることがわかっています。動くことが大切なのです。
次のように、TO-DOリスト(やるべきことリスト)にして、スケジュールに書き込みましょう。文頭に□を書き、できたらチェックを入れていくと、達成感が味わえます。
□TOEICのテキストを3ページ分勉強する
□ボランティアのサイトを見て、申し込む
秋は、長い休みが明け、気候も過ごしやすくなり、気持ちを入れ替えるチャンスの時期です。バックキャスティングで理想像を描き、目標を決めましょう。目標を1つ1つクリアすることで、なりたい自分に近づいていきます。
これは、単純に気持ちがいいことですし、何よりも、自分への信頼感が湧き、自信が持てるようになります。自信が持てると、やる気にスイッチが入ります。
明星大学経済学部特任教授、JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長。筑波大学の博士課程で、組織におけるモチベーションの伝染について研究中。大学ではキャリアや就職支援の講義を担当、企業とのコラボレーションによる講義も実施。JTBモチベーションズでは企業で働く人への研修やコーチング、経営層へのコンサルティングを行う。著書は「やる気が出なくて仕事が嫌になった時読む本」「職場でモテる社会学」「できる人の口ぐせ」等多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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