場の空気を凍らせる「会話の乗っ取り」やる気スイッチを入れよう(15)

明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所長 菊入みゆき

明星大学特任教授、JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所長 菊入みゆき
2016/7/19

友達と話していて、なんだか会話が盛り上がらない。就活のグループディスカッションで、会話が途切れてしまう。こんなとき、どうすれば皆のやる気スイッチを入れることができるのでしょうか。

「会話占有率」90%

大学の授業で、グループディスカッションを行うことがあります。活気のある議論がされるグループもあれば、会話が途切れて沈黙してしまうグループもあります。

あるクラスの授業終了後、大島さん(仮名)という男子学生が教壇にやってきました。「先生、グループ替えはいつですか。今のグループ、みんな全然話さなくて、盛り上がらないんです。仕方ないから、自分が話してるんですけど。早く替えてほしいです」ということでした。

大島さんのグループのディスカッションを聞いてみました。

5人グループのディスカッション中、確かに、大島さん以外のメンバーはほとんどしゃべらず、聞こえてくるのは大島さんの声ばかり。大島さんの話が会話全体に占める割合、つまり「会話占有率」は90%近い印象です。これではグループディスカッションとは言えません。

どうしてこのようなことになってしまうのでしょう。会話の内容を聞いてみました。

「俺なんかさ」

1人1人順番に、「今最も気になっていること」について話すという場面です。最初の順番の小谷さん(仮名)が話し始めました。「やりたいことが見つけられてなくて。バイトをいくつかやってみたり、授業もいろいろな方向のを取ったりしたんだけど、これというのがなくて・・・」と話は、やや中途半端な形で終わりました。

すると、「それさ、全然いい方だよ」と、大島さんが発言を始めたのです。「俺なんか、やりたいことを探すことすらしてないからさ。今はひたすらバイトで稼いでしかいなくてやばい」

小谷さんは、「ああ、そうなんだ」と苦笑いをして、黙ってしまいました。次に発言する順番の学生も、自分が話し始めていいのかどうかわからずに、うつむいて黙っています。沈黙の時間です。なるほど、確かに盛り上がりません。

たぶん大島さんは、「君の場合は、いい方だ」と言うつもりで、相手を励まそうとしたのでしょう。しかし、その後が「俺なんかさ」から始まる、大島さん自身の話でした。小谷さんのことを話題にするはずが、この発言によって焦点が大島さんの話に移ってしまったのです。

さらに、「やりたいことが見つからない」小谷さんに対して、「やりたいことを探すことすらしない」という自分のほうがもっとすごい、と言うことで、小谷さんの話の価値を下げてしまっているのです。小谷さんはもう少し話をしたそうな様子でしたが、この展開によって、自分の話を終えるしかないと思ったのかもしれません。

この「俺なんかさ」「私なんかね」というフレーズで、自分の方に話を引き寄せるのは、「会話の乗っ取り」と言えます。相手の話に乗って、自分の話を始めてしまう。すると、その人の話ばかりになってしまうために、他の人が発言するモチベーションを失うというパターンです。

「じゃあ、次の人お願いします」という大島さんの声で、隣の席の藤波さん(仮名)が話し始めました。「コミュ力が低くて、このままだと就活やばいと思うんだけど、結局バイトとゲームで一日が終わってしまう」ということです。ここでも大島さんの声が聞こえてきました。

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