就活とは自分の道を選び取ること 「人と同じ」でなくていい
「コミュ力」に悩む学生へ贈る言葉(13)
3月を迎えました。いよいよ情報解禁となり、会社説明会が目白押しです。今回は就活のスタートにあたって、その心構えを考えてみたいと思います。
合同説明会はチャンス
合同説明会には二つあり、大学内で行われるものと、外部の会場、例えばコンベンションセンターで行われるものがあります。
学内の方が内定が出る可能性の高い会社が集まります。その会社に大学のOB・OGがいたり、自分の大学をターゲットとするようなレベルの会社が出てくれるからです。積極的に活用しましょう。
もしも入りたい企業が決まっていれば、一度だけでなく何度も数カ所の説明会に参加し、その会社にアプローチするのも手です。「○○くん、また来てくれたんですか」と人事に顔を覚えてもらえばこっちのものですね。志望度合いの高さをアピールできます。
中には、社長自ら出向いて講演するケースもあります。そんなときはいいチャンスですね。しっかりとあいさつして、名前を覚えてもらいましょう。「その会社にはあまり志望度が高くなかったが、○○社長に会いたくて行った」という学生もいます。○○社長の著書を読み、それを携えて行って、「感動しました」と伝えたところ、「是非、我が社にきてくれ」と言われたそうです。企業本を読んでみるのも企業研究の一つですね。
社長というのも一種の有名人ですから、会える機会というのはなかなかないので、アタックしてみましょう。就活というのは、さまざまな会社を訪問でき、また様々な人に会えるチャンスだととらえてみてはどうでしょうか。
社長に会えなくても、説明会では何らかの印象を残して帰ることを忘れないで。「爪痕」を残して帰るとでも言いましょうか。直接社員に会えるチャンスですから、OB・OGを紹介してもらうのも手ですし、またそこで質問してみて、自分の就きたい部署でやりたい仕事に従事している人を紹介してもらうのもいいでしょう。
自分の中に毒を持て
さて、今日のテーマは、「自分の中に毒を持て」です。これは岡本太郎氏の著書のタイトルです。「芸術は爆発だ!」という名言がありましたが、その他にも天才ならではの名言を数々残しています。
「自分の中に毒を持て」というのは、そのままでは解釈が難しいですね。一度、読んで見てください。実際にこの本を読んで自分の就活スタイルが全く変わったという学生がいました。
「それまで、みんなと同じようなスーツを着て、みんなと同じような自己ピーアールをして、全く自分らしさをなくしていました。人と比べて、自分はダメな気がして、ガチガチに緊張して。面接に落ちまくって。そこで読んだ岡本太郎の言葉にふっと楽になりました。自分らしい事が大事なんだ! と気づきました」 すごいですね。
本のサブタイトルに「あなたは常識人間を捨てられるか」と入っています。目次には「意外な発想を持たないとあなたの価値はない」という言葉もあります。
毒というと、「毒にも薬にもならない」とか、「毒づく」「毒を食らわば皿まで」などの言葉が思い出されます。「毒を持つ」とはどういう意味でしょうか? すぐに人に流されず、自分なりの価値観で批判的に見てみる、といえるかもしれません。例えば、合同説明会に行って人の話を鵜呑みにしないで、自分で一度疑ってみてみるのはどうでしょうか? 「すぐに迎合せずに、自分の信念を持つ」というように解釈してください。
100人いれば100通りの就活がある
就活というのは、一人で考え込むよりも、多くの社会人に会う方がいいと前回書きました。多くの人と話すことで、大学生と社会人のスタンスの違いがわかるようになります。
その中で、自分の道を選び取っていくのが就活です。自分らしくあること。それを忘れないでほしいのです。型にはまっているとなんとなく安心できるでしょう。無難な方法だし、失敗しても言い訳ができる。みんなと同じようにやっていただけなのに、と。それでいいのでしょうか。早く自分の道を見つけた者の勝ちではないでしょうか。
みんなが就活を始めたから、慌てて自分も準備をする。友だちを誘って合同説明会に行き、なんとなく会社を見てまわって、親切にしてくれた優しそうな会社を選ぶ。ここなら苦労が少なそう。つらい目には遭いたくないし。家から通えるところで、転勤がなく、給料はそこそこでも、住宅手当があればなんとか生活できるし...。
それでいいんですか? それがあなたの人生なんですか? あなたにとって大事なことは何でしょうか? 自分の軸をしっかりと持つようにして、どんな思いで大学に入ったのか。それを就活で実現しましょう。
「志望企業はどこ?」と聞くと「あこがれはありますが、私には無理だと思うので」という答えが返ってくることがあります。なぜでしょう。はじめからあきらめていないで、まずは当たって砕けるつもりで、説明会に行きましょう。
100人いれば100通りの就活があります。スーツだって別に人と同じである必要はありません。実際、就活スーツを買わずに就職した先輩を何人も知っています。人事はスーツで学生を選ぶわけではありませんよ。
ただ、マナーの面では、お辞儀の仕方など、失礼のないようにした方がいいので、最低限のマナーは必要です。その他はとにかく、人と同じでなくていいのです。自分から就活のセオリーにがんじがらめになっている人が多すぎる。自分らしく。毒をもって。
自分の人生を問い直すこと、それが就活です。しっかりと考えて、人に迎合しない。人と同じでなくていい。自分の道を切り拓く。そんな毒のある就活をしましょう!
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