「結婚した人」に共通する点は どんなこと?
人生を経済学で考えよう(5)
内閣府の調査によると、1980年には55.2%だった25-29歳男性の未婚率は、2010年には71.8%に上っています。同じく1980年には21.5%だった30-34歳男性の未婚率は47.3%に上っています。女性はこれよりは低いものの、いずれにせよ30代前半では「結婚する」という選択は、必ずしも「普通」とはいえなくなったようです。
こうした社会情勢を反映して、2007年に始めて「婚活」という言葉が知られるようになりました。これは社会学者の山田昌弘教授が「結婚活動」の略語として生み出した造語で、少子化ジャーナリストの白河桃子氏との共著「『婚活』時代」がベストセラーとなったために広く使われるようになりました。テレビドラマなどのタイトルにもなり、現在では「婚活」という言葉を知らない人はいないでしょう。
こうした言葉が広く受け入れられたのは、「結婚」が普通のことではなくなったということの表れでしょう。「仕事や自分の時間を優先したいから結婚を望まない」という人もいるでしょうし、「結婚の意志はあるけれども、結婚に結びつかない」という人もいるでしょう。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、結婚したくてもできない理由として最も多いのは、男女ともに、「適当な相手に巡り合わない」ことです。
では、どのような特徴のある人が魅力的な相手に出会うことができるのでしょうか。学歴や収入が大切なのでしょうか。確かにルックスのように生まれ持ったものは、なかなか変えることはできません。しかし自分の行動によって出会いのチャンスを広げることは可能なのではないでしょうか。本稿は適当な相手に出会うためのヒントを明らかにして行こうと思います。
結婚と収入のシビアな関係
そもそも、結婚とはどのような要因によって決まるのでしょうか。経済学では、「家族の経済学」という分野でノーベル賞を受賞したシカゴ大学の故ゲーリー・ベッカー教授の研究などを中心に、結婚について多くの分析が行われています。
最近の実証研究では、だいたい次のようなことが明らかになってきています。第一に、「結婚にとって学歴は重要だ」ということです。これは十分予想できる結果ですが、ただしどう影響するかは男女で異なっています。「高学歴は男性では有利になりますが、女性では不利になる」ことを示している研究が多いのです。
また男性の場合、「非正規雇用者に比べ正規雇用者の婚姻率が高い」傾向があります。これもなんとなく予想できる傾向です。そのため、「結婚している男性は、結婚していない男性に比べて収入が高い傾向がある」ことが知られています。
結婚している人の収入が高いことを、経済学では「結婚プレミアム」と呼んでいます。なお、この結婚プレミアムについてはさまざまな研究が行われており、収入が高い男性が結婚しているのか、それとも結婚したことによって収入が高くなったのか、というのは以前から問題になっていました。
つい「収入が高い男性だから結婚している」と考えてしまいそうですが、「結婚したことによって収入が高くなる」ということを示した研究もあります。そうなると、女性は今収入が高い男性と結婚しようと考えるだけでなく、結婚した男性の収入を高める方法を考えることも必要かもしれません。
「出会い」を増やすという方法
もちろん、学歴や職業だけでなく、男女の「出会いの場」が大切だという研究もあります。「お見合い」の機会などが減少傾向にある中、特に男性は社会関係資本(会社など周囲の人間関係)や過去の恋愛経験しだいで婚姻率が高まる傾向があるということもわかっています。
世間では"草食系男子"という言葉さえあるように、現代では恋愛に対して消極的な人が多いと指摘する人もいます。実は恋愛に対する積極性も婚姻には大きく影響するのではないだろうかと考えられているのです。
私たちが行った実証分析の中でも、積極的な性格の人や過去の交際人数が多い人は、婚姻率が高くなることが示されています。また、これを男女別にみてみると、男性に比べると、女性の方が積極性の重要度が高いことも示されています。そして学歴別にみてみると、学歴が高いグループほど積極性の重要度が高いこともわかっています。
確かに、多くの研究が明らかにしているように、結婚に関して学歴や職業は大切です。しかしそれだけでなく自分で出会いを積極的に探し、積極的に相手にアプローチする、そういう姿勢も婚姻率を上げるために有効のようです。
(中室牧子・北村大成)
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