英語を聴き取るために 「音法」に強くなろう!
TOEIC超勉強法(5)
前回は第2の壁:文法の壁突破法をご紹介しました。今回は、第3の壁:TOEIC470点〈音法の壁〉突破法です。まずは、この壁でもがいていたSA君(当時大学2年・男性)のケースを紹介します。
SA君の場合、まず英語を聴き取ることができませんでした。その一番の原因は、単語の意味が分からないからではなく、英語が音になると単語と単語がくっついて別な音に変化して聴こえるためだと気付きました。
音の変化の法則(音法)に強くなろう!
文法は文を作るときの法則ですが、音の変化の法則を私は「音法」と名付けました。自然なスピードで話されたときの、音の変化の法則です。1つひとつの単語をゆっくり、はっきり発音してもらうと分かるが、2、3個つながると、1個の単語に聞こえるということを経験したことはありませんか? これは単語がつながって話されるときに、別な音に変化するためです。この変化の法則を、一般的には「変音化現象」と言います。以下、代表的な変音化現象をご紹介します。
2.Give me some water.:Give meがギミーに聞こえる(曖昧化現象)
3.What a day!:What aがワダに濁って聞こえる(濁音化現象)
4.Have a good sleep.:good sleepのpが弱くてグッスリに聞こえる(弱音化現象)
5.Excuse me.:ExcuseのEが消えてクスキューズに聞こえる(消音化現象)
6.Sounds great.:It sounds great.のItが無くなる(省略化現象)
7.I have met him.:I have がアイブに聞こえる(短縮現象)、met him のtやm
が聞こえずメリムに聞こえる(脱落化現象)
いかがですか? このような音の変化の法則はご存知でしたか? 知ってはいても、実際に聞いてみるとなかなか聞き取れないものです。そこでおススメするのが、文法の壁のところでも紹介した「Dictation」です。
聞こえた音を書き取ってみよう!
SA君が初めてTOEICを受けたときは330点でしたが、1カ月くらい特訓して520点になりました。470点の音法の壁を一気に突破したわけです。その時にSA君に薦めたのが、英語ニュースや洋楽の書き取り(Dictation)でした。ニュースや洋楽は、普通のスピードで流れてきます。普通のスピードで流れてくると、自然に音と音がくっついて違った音に聞こえます。つまり音が文字にならない状況が生まれます。音が文字にならないのであれば、音を書き取って文字にすればいいじゃないかという考えからでした。
Dictationは、英語ニュースや洋楽を使い、次のステップで行います。
2.CDを聞き書き取る
3.英語で書き取れなければカタカナで書く
4.テキストを見て書き取れなかったところにマーカーを引く
5.それを音読し、もう一度聞いてみる
以下、各ステップでのアドバイスです(短く、簡単に書き直しました)。
2.CDを書き取るときには、1文単位で書き取る。1回でできなければ2、3回とやってみる。1回で聞こえなかった英語が2回目、3回目に聞こえてくると嬉しくなる。嬉しくなると、次へ進む元気が出てきます。1回であきらめないことです。
3.どうしても書き取れないときには、そこを聴こえたままカタカナで書きます。これを、「カタカナDictation」と言います。
4.間違ったところとカタカナで書いたところには、テキストにマーカーを引きます。そうすると、「音の変化の法則」が次第にはっきりと見えてきます。
5.テキストを音読し、その後テキストを見ずにCDを聞く。すると、はっきり、ゆっくり、大きく聞こえます。"音読すると耳が開く"ということが実感できます!
TOEIC(R)テスト公式問題集でDictationを!
TOEICのリスニングで苦労している方には、TOEIC公式問題集を使ったDictationがおススメです。TOEIC470点の壁突破で悩んでいる方は、まずPart1とPart2をDictationしてみましょう。やり方は、Newsの時と同じです。
これができるようになったら、Part3やPart4にもトライしてみてください。音の変化に強くなるだけでなく、TOEICの問題形式やスピードにも慣れますから、一定量を重ねれば、結果としてTOEICのスコアアップにもつながると思います。
SA君はその後、TOEIC900点台まで伸ばし、大学卒業後アメリカのコンサルティング会社に就職して活躍しています。今は外国人と自由にコミュニケーションできる喜びを味わっているということです。学生時代に感じたことが、大きく人生を変えたようですね。
次回は、第4の壁:TOEIC600点〈リスニングの壁〉突破法です。ゆっくり話してもらえばわかるが、普通のスピードだとパニック、という方へのアドバイスです。
「英語トレーニングのICC」代表 千田潤一
http://www.icc-chida.com
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