「営業なんてイヤ」と言う前にどうする? 女子のキャリア(13)

株式会社ACT3代表取締役 堂薗稚子

株式会社ACT3代表取締役 堂薗稚子

4年生の就活はそろそろ終盤。3年生以下の人たちは、インターンなど、これから企業研究をしていくところでしょうか。企業の募集職種に真っ先に「営業」とあると、特に女子学生はひるんでしまうかもしれませんね。営業職に就いている若手女性に面談やインタビューでお話を聞いていても、ある程度は覚悟をして入社したはずなのに、営業という仕事に対してモチベーションを持てないと嘆く人たちが多くいます。

かく言う私はリクルートという会社に21年勤めている間、営業畑にいた期間も長く、「営業が好きでたまらないんでしょ」などと言われることも多いですし、実際大好きな仕事でもあります。ただ、私自身、最初から営業配属希望ではなかったので、入社して営業職になった頃は嫌でたまりませんでした。だから、彼女たちの気持ちもよくわかります。

営業はなぜ敬遠されるのか

昨年、我が子の通う小学校の学芸会でミュージカル風の劇を観ました。劇中の「セールスマン」役の演技に、思わず大ウケしてしまいました。数人の「セールスマン」役のこどもたちが、大げさなくちぶりで商品を説明し、セリフがないときは終始、腰をかがめて揉み手をし続けていたんです!

営業という仕事は、きっとこんな風に、ステレオタイプのイメージによってゆがめられ、ポジションを落としているんだろうなぁと痛感し、子どもたちにこんなことをやらせるなんていかがなものかと大人気なく思ってしまいました。まぁ、劇中では「博士」はもじゃもじゃ頭で白衣だし、「校長」は蝶ネクタイにちょび髭だし、どの役もステレオタイプの見た目だったので、もちろん、ただの演出にすぎないのですけれど。

もしかしたら就活中のみなさんも、頭の片隅に同じようなイメージがあるのかもしれません。実際に営業職の女性たちでさえ、「数字に追われて成長感を見出せない」「本当に顧客にとって必要なのか確信が持てなくても商品やサービスを薦めなければならない」などと言うことがあります。

ましてや実際に働いたことがなければ、「暑くても寒くても重いカバンを持って外を歩き回り、顧客や上司にペコペコして、きついノルマにあえぎ、競合他社をけなしながら自社商品を売りつける」といったイメージを持ってしまって、入社希望の会社でも営業職は避けたいなと思ってしまうことがあるかもしれません。さらに、企業の採用説明会では、営業のすごく美しい成功事例や意義が語られていることも多いので、なんとか自分を納得させて入社したけれど、現実とのギャップに苦しむこともよく聞く話です。

でも、ビジネスの世界に長くいるとわかることがあります。それは、「営業」なくして企業は成り立たないということ。営業スタイルや対象顧客のタイプは違えど、どんな企業にも「営業」はあり、そして要であるということです。企業が存在している、ということは、そこに必ず価値があるのです。価値の対価として「売上」「利益」があります。言い換えれば、営業は自社の存在価値を最前線で実感でき、さらにその価値を高めていく仕事です。日常の業務に埋没してしまうと、営業スタイルやマネジメントのされ方にばかり目がいってしまいがちで、その本質を見失ってしまうことがあります。

企業にとっては、営業は「マーケティング」そのもので、マーケットの兆しを感じて会社にフィードバックする高い感度を求めています。新しい商品やサービスのアイデアも、これから戦略的に取り組むマーケットも、営業がつかんでくる情報をもとに形作られることが多い。「売る」ことだけが営業だなどと思っている企業はほとんどないはずです。営業の現場に長くいて、かつ「人材マーケット」に長く携わってきた身としては、このことに強い実感があります。

そして営業職で活躍していたり、期待されている人たちは、この本質をよくわかっていて、目先の数字の結果だけに囚われたりしていません。そもそも、「数字」なんて小手先で作ろうと思って作れるわけもなく、企業の価値とマーケットとを繋ぐ活動の中での結果でしかありません。揉み手をしたり口が上手だったりしても、業績などあがるはずがないのです。そして、そうやって高い視座で営業に取り組んでいる人たちが、マネジメントボードに引き上げられたり、花形のように思われる企画部門に異動したりして、さらに活躍するのを見ることは珍しいことではありません。

実は「営業向き」の女性

確かに営業をやっていると、思うような結果が得られないことも、理不尽な目に遭うこともあります。実は、それはどの仕事だって同じなのだけれど、営業職のイメージが強すぎるからこそ、こんなに敬遠されてしまうのかなとも思います。でも、就活をする中で、「この会社のこういった価値に惹かれる!」といったことがあったとき、それを実現している「営業」の仕事を、自分の持っているイメージだけで判断してほしくないと心から思います。

たとえ、希望して配属されたのでなかったとしても、営業の仕事の本質を理解してやり抜いていくことで、見える世界がきっとあります。私自身も、夢中で営業に取り組みながら、自分の介在価値を強く感じられたシーンに何度も出会いました。また、私のマーケット感覚が新しい企画を生んだこともあるし、商品企画やマネジャーとしての仕事に就いたときも、営業経験があって良かったと何度思ったことでしょう。もっと言うと、女性だからこそ、顧客やマーケット、その先のカスタマーへの共感性が高く、よりこの仕事の価値を実感できたのかもしれないとも思います。

視野を広げ、その仕事の本質を考えれば、仕事に「優劣」なんてありません。「営業」を毛嫌いしてしまう前に、そこで得られる力や見える世界についても研究してほしいなと思うのです。「営業なんてイヤ」と愚痴るOGは、ちょっと本質が見えていないのかも。色眼鏡を外すと、幅広い選択肢が手に入るかもしれません。フラットに「営業」についても選択肢の1つに加えてもらえたらうれしいなと思います。

堂薗 稚子(どうぞの わかこ)
1969年生まれ。92年上智大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材系事業の営業職を経て「就職ジャーナル」副編集長、「リクナビ派遣」編集長、カンパニーオフィサー、ダイバーシティ推進マネジャーなどを歴任。13年、株式会社ACT3設立。女性活躍支援など、企業の組織開発・人材開発にかかわる調査・企画立案、コンサルティング・研修・講演などを行う。著書に『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(KADOKAWA)。二児の母。
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