「就活を続ける」ことで得られるもの
どうする? 女子のキャリア(21)
東京は梅雨も明けていよいよ夏本番です。リクルートキャリア「就職プロセス調査」の速報版によると、7月1日時点で大学生の内定率は80%近く! バブル時代を超える「売り手市場」と報道されていますね。就活終了という人も多いでしょう。でも、「本当にこのまま入社してよいのか」と、内定を持ちながらも就活を終えることができない人も、まだ内定を手にしていない人もいるでしょう。
私は新卒採用関連の事業に長くいたので、仕事柄、学生にインタビュー・取材をしたり、就活の相談に乗ったりすることが多くありました。モニターの役割を果たしてくれる学生とは、特に何度も定期的に会って話をします。そんな私が、毎年、内定の山場を迎えた後に、学生と会うと必ず感じることがありました。それは、「すごく成長したな」という感動にも近い気持ちです。最初は人と目を合わせられなかったり、自分の話ばかりしたりと、「就活で苦労しそうだ」とちょっと心配になるような学生も多いのです。
就活で成長する!
でも、苦労しそうだと思った学生が、やはり苦労しながら就活を続けていて、少し時間があいてから改めて話してみると、驚くほど成長しているのです。ひと皮もふた皮もむけて、すっかり精神的にたくましく、頼もしくなっています。よく考えてみれば当たり前のことで、初めて社会の仕組みに触れ、知らない場所で知らない大人と会話し、自分の特徴を分析したり目標とするものを探ったりして自分と深く向き合う日々を送ってきたのです。
思ったように自分を評価してもらえずに悔しい思いをしたり、友人の進捗や世の中の動きと比較したりしては落ち込み、小さな歩みに一喜一憂して、それでもなんとか立ち上がって次のアクションを続けてきたはずです。逃げるに逃げられない待ったなしの日々は、精神的にも肉体的にもものすごく過酷です。それを乗り越えて、今のあなたがここにいる。それは劇的な成長そのものです。
企業に新卒採用の提案をしていた頃は、内定の山場が過ぎるとよく、採用担当者から「まだ就活している学生のレベルってどうなの?」などと聞かれたものでした。通年採用というと、留学生やスポーツを極めてきた人など、大きな母集団では出会えなかった尖った人材をごく一部採用する、あるいは足りない内定者数確保のため、などと思われがちです。けれども、私はいつも、「就活で成長した学生ともう一度出会う」というコンセプトで企業に提案していました。それは私が学生の短期での成長ぶりを強く実感していたこともあるし、経験の中で、企業が前半とは異なるタイプの学生と出会って新たな戦力を手に入れたシーンも多く見てきてからでもあります。
確かに、多くの大企業は「いい人がいれば採用する」というスタンスで、人数あわせで採用することはほとんどなく、特に目立って「異能」な人だけが求められていると感じることもあるでしょう。そうでなければ、まだ内定数が確保できていない不人気業種・職種や、中堅中小企業ばかりだと思うかもしれない。でも、まだ門戸は開かれているのは確かです。そして、就活でぐんと成長したあなただからこそ、例えば中堅企業でネームバリューはないけれども、とてもわくわくする技術を持っていたり、この人と一緒に働きたいと思える経営者がいたり、これまでにはなかった新しい視点で、企業・仕事選びができることもあるかもしれません。
通年採用、秋採用、あるいは後半採用は、私にとっては、新卒採用と中途採用の中間のようなイメージがあります。あくまで私個人の経験値、実感値ですが、企業も、前半戦に比べると、大きな母集団の中から選ぶという意識ではなく、1対1の対話を重んじて、学生個人を見極めようとする傾向があるように思います。ずらっと並んだ5名の学生の1分間スピーチと2、3の質疑だけでは、なかなか伝わりきらなかったあなたの個性だって、見出してもらえるかもしれない。私は後半採用、後半就活は、企業にとっても学生にとっても、とても大きなチャンスだと思えてならないのです。
納得するまで続けたい
成長って、している最中にはわからないものなのです。例えば背が伸びたとしても、「あ、今2cm伸びた」とは感じない。時間を空けて測ってみたら伸びていたとか、久しぶりに出会った人に「あれ、背が伸びた?」と言われたりしないとなかなか自覚はできません。できれば、「短期間にすごく成長したのだ」ということを自覚できるよう、周囲の大人と会話してみるといいでしょう。たとえ、就活で、なかなか思った結果に至らなかったとしても、そのプロセスの中にあなたの成長を感じ取り、きちんと言葉にしてくれる人がきっといるはずです。そんな言葉を自信にかえて、もうひと踏ん張り! 成長した自分で、就活市場に再デビューも十分可能です。
「まぁ、こんなものか」「もう疲れたし、充分やった」と思いながらも、「就活終了!」と思い切れない自分がいるとしたら......。諦めないで再活動するのもひとつです。この暑さの中で就活を続けるのは、とてもとても大変ですね。でもあきらめずに頑張る、そんなあなたが少しでも元気になってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。応援しています!
1969年生まれ。92年上智大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材系事業の営業職を経て「就職ジャーナル」副編集長、「リクナビ派遣」編集長、カンパニーオフィサー、ダイバーシティ推進マネジャーなどを歴任。13年、株式会社ACT3設立。女性活躍支援など、企業の組織開発・人材開発にかかわる調査・企画立案、コンサルティング・研修・講演などを行う。著書に『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(KADOKAWA)。二児の母。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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