学歴のバツ1はいつでも挽回できる
CEOは大学中退(1)
はじめまして、黒澤美寿希です。私は大学を半年で中退しましたが、2015年に胸が大きな女性のためのアパレル HEART CLOSETを、その前年にはイラスト制作/クリエイターマネジメントを行う株式会社Ga-showと、2年間で2つの会社を起業しました。
私はとてもわがままな人間。やりたくないことは、とことんやりたくない。「やりたいことをやるには、どうしたらいい?」。そればっかり考えて、働き続けてきました。私が起業した2つの会社はまったく異なる業種です。でも、私の中では起業の理由は共通していて、私たちの提供するサービスや製品で、困っている人や企業の役に立って、しっかり儲かる会社をつくるということ。
社会人スタート直後、憧れの仕事に就けなかったせいで、やたらとアグレッシブに働いてきました。それはきっと変わらないんだろうけど、30歳になってからは仕事や働き方について悩んでいます。20代は同棲もしました。めちゃくちゃ働いていると、どんどん自分の中の女として生きる部分が少なくなって、それを埋めるために恋愛にのめりこんだし、罪悪感なく浮気する彼に傷つけられたこともありました。
「女性として、どうやったらなりたい自分になれる?」
「女性として、どんな働き方がある?」
「どうやったら自分で働き方を決められる?」
そんなことを、ずっと迷ったり、悩んだりしたりしながら、2つの会社を経営する私の「大学中退女子の起業ストーリー」の連載をはじめます。起業を目指す学生の皆さんはもちろん、学歴コンプレックスで就活にちょっと後ろ向きになっている人の役にも立てるといいな...と思っています。
大学中退でキャリアに×がつく?
大企業の新卒採用では大学中退は「×」です。私自身、大学中退後の就職活動で応募資格が大卒以上の会社にはエントリーできなくて、とても悔しい思いをしました。でも、自分のキャリアに×がついたかというと、そんなことはないんですよね。
起業するまでに数々のアルバイト、派遣社員、数社で正社員を経験してきました。その経験でわかったのは、世の中には大学中退が足かせにならない企業がたくさんあって、人とのつながりで大きく道が拓ける場合が多いということです。それまでの経験や人の縁って、どこかでチャンスにつながるんですよ、不思議に。
「この人と働いてみたい」「この人なら確実に実績をあげてくれそう」と思ってもらえれば、「うちの会社に来ない?」と声がかかることが増えるし、公募の中途採用でも有利になる。私は社会人になる前に×がついちゃったので、ゼロどころかマイナスからのスタート。「ここから這い上がっていくには自分で能力とスキルを磨いて、チャンスをつかんでいくしかない」と大学中退したときに覚悟が決まったというか、そのスタンスで生き残っていくしかなかったというのが本音です。
話が重くなってしまいましたが、私は何かを新しく始めるのが好きだし、周りの人と一緒に何かを創り上げていくことが面白くて、楽しい。起業するなら自分が創業者で社長なので学歴不問でルールも自分で決められる。会社を成長させるのは学歴じゃなくて、経営者である私の手腕です。そう考えると、大学中退は新卒採用では×だったけど、私のキャリアでは×にはなっていません。×を×のままで鬱々として生きるのか、チャレンジをして×を○に変えていくかは、自分次第なんです。
打倒! 学歴コンプレックス
といっても、学歴コンプレックスを払拭するのは難しいですよね。私自身、ちょこちょこ学歴コンプレックスが出ちゃった時期がありますが、今は全くないです。それも、社会人になって、かなり早い時期になくなりました。
学歴コンプレックスを打倒できるのは、やっぱり自分が満足できる生き方。それが私の場合は仕事なんですね。自分が満足できれば、バイトだって正社員だって起業だって、なんでもいい! そうやって、今の自分がやりたいと思えることをやってきたし、今はやれなくても、「どうやったら実現できる? 自分のやりたい仕事を選べる?」とあちこちに仕事の種をまいていたら芽が出てきて、花が咲き始めたんです。
実は、大学を中退したとき、私はパソコンがほとんど使えなかったんです。この時期はさすがにキツかったけど、パソコンが使えるようになって、映像制作会社に事務職として転職できました。この経験で「できることが増えると、可能性が広がる」と実感。自分の手でキャリアを築くヒントがつかめました。
それからは、仕事つながりで転職。映像制作会社から「映像つながり」で3DCG制作会社に、次は「ゲームつながり」で大手ゲーム関連商品/コンテンツ制作会社にと、今いる会社でスキルを磨き、人脈を広げ、それらを武器にして転職を重ねました。
仕事で一番怖いのはマンネリ
仕事内容も次々に変わりました。事務系、管理系、クリエイティブ系、営業系といろいろな職種を経験したおかげで様々なスキルが身について、任される仕事も大きくなっていきました。といっても、仕事をこなすには、手探り状態でも自分で学んで、仕事のスピードとクオリティを上げるしかない。それでも「こんな私に働く場所を与えてくれて、ありがとう!」といつも思っていました。いい子ぶっているわけじゃないです。経済的な理由で大学を中退して、親からの仕送り無しに一人暮らしを始めたので、働かなかったら生活できなかったんです。
自分の生活をより良くしていくには、自分の価値を高めて、給与を上げていくしかない......、そう思っていた私に転機が訪れます。仕事がマンネリになっていたのと、与えられたポジションに対してこれまでやってきたことや、やりたいことへの働きにくさを感じ、以前働いていた会社の上司に相談。すると「黒澤さん、だったら起業したほうがいいよ」と背中を押されたんです。そのときまで、「会社に所属すること=働くこと」と思い込んでいて、自分が起業するなんて考えてもいませんでした。
自らを冷静に客観視するのは難しくて、強みがわからないことはありませんか。まさに当時の私がそう。何に向いていて、何をすればいいのかは、元上司のほうが見えていたんです。ホントに仕事って一人では完結しないし、一緒に働く仲間がいるからやりたいことが実現できるんですね。元上司の助言で、しみじみそう思いました。さて次回は、私の起業について詳しくお話します。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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