新入生の持ち物から見る等身大ブランドとは
私たちのリアル(13)
5月も半ばを過ぎ、新生活にもすっかり馴染んできたころでしょう。今回は新入生たちの日常の持ち物についてご紹介します。皆さんのお母さんが若い頃、特に1990年代以降ですが、東京の女の子たちは大学生になると同時にルイ・ヴィトンやエルメスのバックで気合を入れて新生活のスタートをきるというハイブランドブームの時代がありました。
それが、リーマンショックや様々な不景気の波の影響を受け、学生も等身大で、堅実な生き方をする人が増えるようになりました。スマートフォンの登場で、SNSが生活に密着し、自己表現の場も増えたので、個性を尊重しあう風潮が続いています。昔と比べるとブランドへの関心が低くなったとは言え、"ブランド"への憧れがゼロになることはありません。
数年前から続く安定のブランドは、アメリカ発のマークバイマーク ジェイコブス。また、それに並ぶようなブランドが最近のブランドバックです。例えば、ケイト・スペード、フルラ、マイケル・コース、ジル スチュアート、サマンサタバサ......。
セカンドラインが好まれる
ブランドといえば海外なのに、ここに純日本製のサマンサタバサが入ってきたことは、興味深いという先輩たちもいます。今の学生の中には、ミランダ・カーの広告起用等でサマンサタバサは海外ブランドと思っている人も多いようです。
また、マーク ジェイコブスではなくマークバイ、プラダよりもミュウミュウ等、妹ブランド的セカンドラインなものが好まれる傾向があります。年相応の、気張りすぎないものを身に付けることが、今の若者の好む心地の良い選択です。
何でもかんでも一番がいい、一番高いブランドのバックを持ちたい、誰もが知っているブランドを身に付けていたいという人や、そういう考えの人は、なんとなく"イタイ"とされているようです。
ただ、今はそんなタイプの人を否定することもあまりなく、「はい、あなたはそういうタイプなんですね、でも私はそのタイプはあまり好きでありません。」と、自分との差異をみつけても、そこは気にしない印象があります。歳を重ねるうちに徐々にブランドのランクも上げていく、今の自分に合ったものを身に付けることが、2016年の"カッコよさ"かもしれません。
その反面、ルイ・ヴィトンやグッチなど、ハイブランドも、「ヴィンテージ」だととても好感度が上がるということです。バブル以降、必死でバイトして頑張ってどうにかして最新のルイ・ヴィトンのバックを買ったという話をよく聞きましたが、いまは最新モデルよりもヴィンテージの方が"オシャ"。
プラダの定番革のハンドバッグも、「ミニタイプだといい感じ、A4以上の大きなものだとちょっと微妙......」というように、ブランドの主張は控えめな方がウケるようです。その他、ロゴがガンガン主張されているシャネルのバッグや財布をみると、「外国で買ってきた偽物?」なんて思われがちで、避けられる傾向にあるとか。口紅やコスメはシャネルを持っている子も多いのですが、ファッション小物となると少し抵抗があるようです。
PCメガネも必需品に
バッグやお財布のみならず、大学生になるとパソコンの使用頻度も上がるということで、PCメガネを欲しがる子も多い、この季節。PCメガネといえば、JINS、ZOFFが有名ですが、低価格でブルーカットも65%のエレコムも人気です。どんなものも、価格と自分の求める要素のバランスに重点を置いて消費する世代。
まさにスマートコンシューマー! ブランド名に引っ張られることなく、自分に合ったものを見つけるセンスはデジタルネイティブの学生や新大人(1990年以降生まれの社会人)に共通しています。
スマホ周辺機器でいうと、若い世代にとって「イヤフォンは消耗品」という程、音楽や通話に使うためのイヤフォン需要は高くなっています。日常的に使うものなので、2000円前後の低価格のもので済ませる派と、高額なこだわりのイヤフォンを購入する派がいます。
高くてもBeats
高額派から断トツ人気のBeats(ビーツ)は、2006年にオーディオブランドとしてデビュー後、2014年にAppleに買収されたことをきっかけに認知度も上がりました。ヘッドフォンとイヤフォンのどちらも人気で、貰ったら嬉しいちょっと高額ギフトランキングには必ずベスト3にランクインするでしょう。
ビーツの人気は、デザイン性とノイズカット機能のクオリティーの高さですが、もう1つWeb広告の手法もとても効果的だったという話を聞きます。ネット上での認知度を気にする世代にうまく訴えることができた言えるかもしれません。
彼女たちがイヤフォンを購入する時のチェックポイントは、コントローラー、マイク、ノイズカットの有無です。キラキラ可愛らしいデザインは女子っぽいと思うけれど、毎日使うイヤフォンだから、機能重視で購入したいという女子も多くいます。毎日使うものなので、お年玉やバイト代を全て注いで2万円以上のものを購入しても悔いはありません。
さらに、誰もが知るオーディオの名ブランドBose(ボーズ)よりも、今はBeats(ビーツ)なのです。今の女子にとっては、"今"人気で、"今"目に見えて機能やデザインの良さが伝わるものの方が価値はあります。
どんなに歴史があっても、ブランドに左右されることなく、目で見て感じられる機能や質を評価して投資するのが今の世代の特徴です。フェアに物を選ぶからこそ、求めるクオリティーは高く、特に視覚的なセンスや質にうるさいのはスマホで鍛えられた情報収集力を持つデジタルネイティブならではなのです。
ブームプランニング社長。山口県出身。1986年に企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を発足、女子高生ビジネスを立ち上げる。88年、株式会社ブームプランニングを設立し、女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。現在、未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦、シニア層まで全国1万人以上ネットワークを広げ、様々な業種で企業の商品開発にかかわる。活動に関係した女子高生は10万人。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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