日本酒、お燗で舌鼓 温めて増す香りとうま味

冷酒向きの「吟醸」づくりの日本酒にも、燗を付けておいしい銘柄がある。見分けるポイントは香りだ。リンゴのような華やかな香りの「カプロン酸エチル」を多く含むものは、温めると香りが飛んでしまうので冷やが良い。「東洋美人」で知られる澄川酒造場(山口県萩市)の澄川宜史社長は「バナナにも似た香りの酢酸イソアミル系が燗にも向く」と話す。同社の「ippo 西都の雫(しずく)」や「東洋美人 純米吟醸50」は人肌くらいに温めると、香りとうま味のバランスが取れるという。

四季と伝統を映す日本酒

神田新八の佐久間さんは「もともと日本酒は温めて飲むものだった」と語るが、「日本酒は悪酔いする」「品質のよくない酒だから温度を上げるのでは」という誤ったイメージもいまだに残る。これは第2次世界大戦後のコメ不足を背景に広がった「三倍増醸酒」の影響が大きい。コメとコメこうじが発酵している醪(もろみ)にサトウキビなどからつくった醸造アルコールを加える。さらに調味料のグルタミン酸ソーダや酸味料、糖類なども入れていく。通常の日本酒よりも3倍の量になるので略して「三増酒」ともいい、日本酒離れの一因になったとされる。

ただし2006年の酒税法改正で三増酒はなくなり、冷酒向きでも燗酒向きでも、コメ作りから蔵での醸造までこだわり抜いた日本酒は増えている。単に酔うためでなく、日本の四季と伝統を重んじる飲み物として味わいたい。

(小太刀久雄)

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