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平成末の閉塞感とらえた舞台 演劇回顧2018年

2018/12/24

年長世代の動向に触れておこう。静岡県舞台芸術センター(SPAC)の芸術総監督、宮城聡は核戦争後の荒野をいく放浪芸人の喜劇「寿歌(ほぎうた)」(北村想作)を鮮烈に演出。一方で、フランスのコリーヌ国立劇場に招かれカメルーンの作家レオノーラ・ミアノの新作「顕(あらわ)れ」(19年1月14日から、静岡でも上演)で賛辞を集めた。「ジャポニスム2018」が開かれたパリでは、野田秀樹作・演出「贋作・桜の森の満開の下」をはじめ多くの日本の舞台が上演されたが、宮城の存在はすでにフランスで根づき始めている。

名取事務所が上演した別役実の144本目の新作「ああ、それなのに、それなのに」(撮影 坂内 太)は、奇怪なブラック・コメディーだった

創作劇では、朝鮮人BC級戦犯の張り詰めた日々を劇化した鄭義信作・演出「赤道の下のマクベス」、高橋源一郎のパロディー小説を奇怪な喜劇にした平田オリザ台本・演出「日本文学盛衰史」、劇団桟敷童子が集団創作し、東憲司が演出した昭和の濃厚な人間模様「翼の卵」、井上ひさしの遺志を継いで長崎の原爆の物語を書いた畑澤聖悟の「母と暮せば」(栗山民也演出)、サラリーマン劇作家を自称する中村ノブアキが働き方改革による職場の混乱を作・演出した「焔~ほむら~」を秀作として挙げておきたい。加えて、英文学者の河合祥一郎が作・演出した「ウィルを待ちながら―歯もなく目もなく何もなし」が研究者らしい入念さで、ベケットの不条理劇とシェイクスピア劇を接ぎ木した試みとして注目される。パーキンソン病で闘病中の別役実の144本目の新作「ああ、それなのに、それなのに」が、えたいの知れない平成末の気分を奇怪な豚コレラ事件にまぶして、健在ぶりを示したのはさすがだった。

■ミュージカルでも創作の動き

劇場で聴いた福島の原発事故被災地の声は今年も忘れがたい。青年座が上演したいわき市在住の高木達作「ぼたん雪が舞うとき」は、被災直後の家族の現実を映しだしていた。また芥川賞作家、柳美里は福島県南相馬市で被災者たちの声をすくう演劇活動を開始した。原発の災禍については、今年活躍が顕著だった栗山民也が演出した翻訳劇「チルドレン」(ルーシー・カークウッド作)が次世代に橋をかける科学者の責任をつき、今年1年の創作劇と共振する成果を収めている。

興行の中心をになうミュージカルでも、創作の動きがあった。三谷幸喜作・演出、荻野清子音楽のコンビは「日本の歴史」(19年1月6日から、大阪・シアタードラマシティ)で、バラエティー・ショーの面白さを満喫させてくれた。黒沢明の名画を題材にしたホリプロの「生きる」(宮本亜門演出、高橋知伽江脚本・歌詞)は音楽のジェイソン・ハウランドとの共作が意外な成果を生み、帝国劇場の「ナイツ・テイル 騎士物語」(ジョン・ケアード演出)も、和太鼓の活用に可能性を示した。

(編集委員 内田洋一)

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