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平成末の閉塞感とらえた舞台 演劇回顧2018年

2018/12/24

演劇界のロスジェネ世代は、現代の事件や社会的できごとと向き合う姿勢も顕著だ。瀬戸山美咲(77年生まれ)はこれも青年座に書き下ろした「残り火」(黒岩亮演出)で、あおり運転による事故死を題材に被害者だけでなく加害者の家族の物語も書き込んだ。議会を解散した高知県の過疎の村を「埋没」でフィクションにした中津留章仁(73年生まれ)、3億円事件やグリコ森永事件を劇化してきた野木萌葱(77年生まれ)も、この列に加えられるだろう。

岩井秀人構成・演出「ワレワレのモロモロ」はさいたまゴールドシアターの高齢俳優から詩情をを引き出した(撮影 宮川 舞子)

この世代のもうひとつの傾向は私的世界を深くなぞっていく内向性の舞台に現れるが、えてして「自分探し」の作劇はパターン化すると生気を失ってしまう。その点、岩井秀人(74年生まれ)が彩の国さいたま芸術劇場の高齢者劇団さいたまゴールドシアターで構成・演出した「ワレワレのモロモロ」は示唆的だった。高齢俳優の戦争体験などを探り、劇化することで私的世界を描いてきた作家の感性に歴史性が加わったといえる。蜷川幸雄が礎をつくった高齢者演劇の遺産は今年、世界ゴールド祭という国際的演劇祭にまで発展したが、高齢者のまなざしは、これまでにない劇の鉱脈を掘り当てるかもしれない。演劇祭でノゾエ征爾(75年生まれ)が演出したモリエールの「病は気から」では、高齢アマチュア俳優たちが生のエネルギーを爆発させ、客席を圧倒した。

新国立劇場の芸術監督に78年生まれの演出家、小川絵梨子が就任したのは、世代交代を強く印象づけるできごとだった。就任直前に同劇場で演出した「1984」はジョージ・オーウェルの反ユートピア小説を原作とした翻訳劇だったが、極端な同調社会の出現はAI時代への警鐘といえた。未来への危機感が強いのも、この世代の特質といえる。

その年を代表する舞台を生むことが強く期待される新国立劇場は、近年そうした評価から遠ざかっている。小川はこれから若い演出家を招いて長期的な集団創作を試みるという。劇場が創作の最前線に再び躍り出る刺激剤としてほしい。既成劇団や小劇場でも、この世代の演出家は活躍している。芸術監督の人材難を嘆く劇場関係者は多いが、新しい演劇の時代をひらくため、ともに汗をかくべき時期にきていないか。

■メディアに対する劇作家たちの目は厳しく

Pカンパニーが上演した「白い花を隠す」は、メディアの人間模様をとらえて秀逸だった

メディアの内幕を描いた舞台が話題を呼んだことも自戒をこめて、記しておこう。やはりロスジェネ世代に秀作がふたつあった。ひとつは津島佑子の長女、石原燃の「白い花を隠す」(小笠原響演出)。昨年評判をとって早くも再演された。従軍慰安婦問題を裁く民衆法廷をめぐるドキュメンタリー番組が政治の圧力にさらされ、スタッフが揺れ動くさまを家族のかたちのなかに描きだした。もうひとつは劇団温泉ドラゴンが上演した原田ゆうの「嗚呼(ああ)、萬朝報(よろずちょうほう)!」(シライケイタ演出)で、反権威の新聞社が戦争に熱狂する世相とどう向き合ったかを描いた。この主題ではベテラン永井愛が主宰の二兎社で「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」を作・演出し、記者クラブ制度を笑劇にしたてたが、メディアに対する劇作家たちの目はかつてなく厳しいと言わねばならない。

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