マネーコラム

日経マネー 特集セレクト

民法改正で変わる相続 配偶者の居住権・遺産分割… 大幅見直し、相続の法制度(1)

日経マネー

2018/12/28

写真はイメージ=PIXTA
日経マネー

相続に関する法制度に、大きな見直しがなされることが2018年7月決定した。柱は高齢化社会における家族の変化に対応する内容だ。相続でベストな選択ができるよう、そのポイントを押さえておこう。第1回は、民法改正の主な内容を説明する。

◇  ◇  ◇

資産家であるなしにかかわらず、どんな家族も避けて通れない相続。そのルールについて定めた民法などの規定(相続法)を改正する法律が7月6日に成立、同13日に公布された。約40年ぶりの大規模な見直しだ。

改正の主な内容を図にまとめたが、その特徴の一つは相続における配偶者の権利が拡大したこと。新設された「配偶者居住権」は夫を亡くして残された妻などが、引き続き自宅に住み続けられる権利だ。加えて結婚後20年以上の夫婦なら自宅贈与が相続財産と切り離せるという見直しも盛り込まれている(図「民法改正の主な内容」1と2)。

タクトコンサルティング会長の本郷尚さんは、改正について、「夫婦で築いた財産は夫婦のものであるという認識が高まり、残された配偶者が長く生きていくことに対応する意味合いが強い」と話す。急速に高齢化が進む社会構造の中で、相続人となる配偶者の年齢も高齢化が進展。その後の生活に配慮する必要性の高まりが背景にある。「特別の寄与」の創設で、被相続人の介護に励んだ息子の妻などが、報酬を金銭で請求できる改正も高齢化に対応した内容だ(同6)。

その他の特徴は、相続財産の流動化の後押しと手続きの簡素化だ。「預金の仮払い制度」は、遺産分割前でも葬儀代の必要資金は引き出せるという改正で、分割前は活用できなかった故人の預貯金が必要時に一定限度内で使えるようになる(同2)。また「遺留分制度の見直し」では、遺留分の請求が金銭で行われることに(同4)。従来は手続きの煩雑さなどで遺留分返還に手間取るケースも多く見られたが、今後は円滑化が期待できる。

遺言制度の見直しでは、自筆証書遺言を書く負担を軽減(同3)。多くの人が遺言書を書くようになり、ミスが少なくなることが期待できる改正だ。

これらの改正は、一部を除き19年7月12日までに施行される。早いものでは自筆証書遺言の方式緩和が19年1月13日から施行される予定だ。

■民法と相続税法は別モノ、ルールの違いに注意

混乱のないよう意識したいのが、相続時の分割のルールを民法で定めた「相続法」と、相続税を計算するための相続税法は別々のものということ。今回の改正は民法の相続法が対象で、それに伴う税金の扱いをどうするかは具体的に決まっていない。最終的には税金面での効果も考慮しながら分割方法を判断していくことが重要だ。

相続法の改正内容に則して、遺産分割時に配偶者がより多くの遺産をもらい受ける分割を選択した場合、それが税金の面から見ると必ずしも有利でないこともある。このことを意識しつつ、今後の相続税制の改正内容も合わせて注視する必要がある。

例えば、相続時に大きな優遇がなされるものとして「小規模宅地等の特例」がある。親と同居するなど一定条件を満たすと土地の評価が最大8割減になるという節税効果が大きい特例だ。だが、今回の改正の目玉である配偶者居住権を使うと、場合によってはこの特例の対象外となる可能性があることも懸念されている。

ちなみに民法と相続税法の内容が違うという代表的なものに、養子の数の扱いがある。

法定相続人として認められる養子の数は、民法では制限はないが、税法上では被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと定められている。

本郷尚さん
税理士法人タクトコンサルティング会長・税理士。相続、贈与、事業承継、土地活用、財産管理を中心とした資産税専門の税理士。講演・執筆等でも各方面で活躍中。著書は『相続の6つの物語』(日本経済新聞出版社)など

(ライター 福島由恵)

[日経マネー2018年12月号の記事を再構成]

日経マネー 2019年2月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


マネーコラム 新着記事

ALL CHANNEL