工学院大、独創的な車体で挑む!
目指せソーラーカー世界一(1)
はじめまして。私たちは工学院大学ソーラーチームです。2年に1度オーストラリアで開催されるソーラーカーの世界大会、ブリヂストンワールドソーラーチャレンジでの優勝を目指して、日々活動しているソーラーカーのチームです。この連載では、チームの活動や生活などを皆さんにお伝えします。また、活動を通じて私たちが感じたこともお伝えしていければと思います。第1回はチームの概要と世界大会についてお話しします。担当は総合企画班所属の横山晴香です。
ソーラーカーって何?
ソーラーカーは、太陽からの光エネルギーを用いて走る自動車です。ソーラーパネルによって光エネルギーを電気エネルギーに変換しています。自然エネルギーを使い、ガソリンを一切使わないので、環境汚染のないクリーンな自動車として考えられています。
オンリーワンの車体で世界一を
工学院大学ソーラーチームは学生プロジェクトの1つとして2009年に発足しました。17年には大学のフラッグシップに選定され、「総合研究所ソーラービークル研究センター」が設立されました。当初8人で始まったチームは10年も経たないうちに300人以上に成長し、国内最大級のチームとなっています。機械系学科に限らず、電気・物理系、化学系、情報系、建築系など様々な学科からメンバーが集まっています。チームは、車体の設計・他チームの車体分析を行う機械班・構造班・空力班・電気班、大会中のエネルギー管理を行うエネルギーマネージメント(戦略)班、サポート企業との調整や広報を行う総合企画班・財務班・メディア班から構成されています。4号機「Wing」のボデー製作は春休みに工場をお借りして泊まり込みで行い、これには各班問わず参加しました。車体内部の製作は「総合研究所ソーラービークル研究センター」で行いました。すなわち、レース分析・設計・製作・広報まで学生自らが行っているのです。
チーム結成時から、「右に倣うのではなく右に倣わせろ」「Designed by工学院大学」をスローガンとしています。これは既存の車体をまねした新車を作るのではなく、今までにない工学院大学オリジナルでオンリーワンの新車を作るという意味です。
Wingはソーラーパネルを車体本体から浮かせるという新たな挑戦をしています。この斬新なアイデアには世界中のチームが注目し、多くの他チームのメンバーが車体を見に来ました。この車体のキャッチコピーは「私たちの羽は自然と共に未来へ」です。
私たちは斬新な車体で今までに様々な成果を上げています。11年の国内大会での準優勝を皮切りに、13年には世界大会初参戦、15年には世界大会で準優勝を果たしました。16年度の国内大会ではチーム初となる女性ドライバーが誕生するとともに、大会新記録樹立&総合優勝を飾りました。また、17年の世界大会では、天候不良で過半数のチームがリタイアする中、世界7位でゴールしました。
オーストラリアを縦断する世界大会
私たちが参戦している世界大会について紹介します。
ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)は、1987年に始まった世界最高峰のソーラーカーレースです。10月上旬にオーストラリアで行われ、4~7日間をかけて北部のダーウィンから南部のアデレードまで総延長約3000kmを走破します。この3000kmの間にはコントロールストップが9カ所設置されており、各地点ではドライバーがソーラーカーから降りて30分間停車しなければなりません。17年度大会には20以上の国から43チームが参戦し、日本からは工学院大学を含む4チームが参戦しました。
大会には3つのクラスがあります。1つめは、ドライバー1人乗りの車体でゴールまでのスピードを競うChallenger Class (チャレンジャークラス)。2つめは、ドライバー1人+乗員1人以上が乗車できる車体でエネルギー効率や実用性を競うCruiser Class (クルーザークラス)。3つめは、過去の車体など上記のクラスの基準を満たさない車体でも参加でき、順位を競わないAdventure Class (アドベンチャークラス)です。また、決められた時間までにコントロールストップにたどり着けなかったチームは、アドベンチャークラスに移され順位がつかなくなります。
走行時間はクラスに関係なく、朝8:00(初日は8:30)から夕方17:00までの1日9時間と決まっています。なぜ夕方17:00までしか走行してはいけないのだと思いますか? 大きな理由の1つとして野生動物の存在があります。日中にも放牧されている家畜などを車の中から見かけましたが、夜にはカンガルーなど夜行性の動物が活動します。加えて、町を離れると街灯がないため動物たちに気付きにくく、急に飛び出してきた動物たちを避けるのが難しいのです。
コース上には町が数百kmに1つしかないため、17:00に停車した近くに町があるのは稀です。そのため、どのチームも夜間は広大な砂漠の中でキャンプをして過ごします。ソーラーカーの充電や整備を行う人、テントの準備を行う人、料理を作る人、その日撮影した動画の編集を行う人など、各々が役割を果たし協力してキャンプを行いました。
夢と感動を与えたい
近年地球温暖化などの環境問題が大きく取り上げられる中、ソーラーカーは1つの解決策だと私たちは考えています。しかし、ソーラーカーの認知度はまだまだ低く、知らなかった方も多いでしょう。私たちの活動を通してソーラーカーの認知度と注目度を少しでも上げられればと思っています。そして、多くの方々に夢と感動を与えるため、世界一を目指してこれからも活動していきます。
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