女子大生目線で酒蔵ツアーを盛り上げよう
八ッ場に恋したダム女子たち(4)
こんにちは!私たち、跡見学園女子大学篠原ゼミの連載も折り返し点です。今回は「コンシェルジュプロジェクト」、「川原湯温泉プロジェクト」に次ぐ、八ッ場(やんば)ダムとその周辺地域を元気にする取り組みの3つ目、「酒蔵・地酒ツーリズムとブランド化研究プロジェクト」を紹介します。4年生1人、3年生2人、2年生2人のチーム「酒蔵ガールズ」のリーダー、渡辺理愛が報告します。
創業明治5年の老舗酒蔵をブランド化する
皆さんは全国に日本酒の酒蔵がどのくらいあるか、想像がつきますか。現在、日本各地に約1500軒の日本酒の酒蔵があると言われています。新潟、長野、兵庫などには有名な酒蔵が多数あります。八ッ場ダムのある群馬県長野原町にも、浅間酒造さんという酒蔵があり、今回、私たちが八ッ場プロジェクトで関わらせていただきました。浅間酒造は明治5年創業で、140年以上の歴史を持つ老舗の清酒メーカーなんですよ。
私たちのチームのプロジェクトの目的は、浅間酒造の酒蔵や地酒のブランド化を目指すことです。それはこの長野原町に来る観光客の方に、より長く滞在してもらうための観光コンテンツの仕組みを作り上げることでもあるのです。
このプロジェクトが動き始めた昨年の4月頃は、私自身、長野原町についても、日本酒についても詳しくありませんでした。プロジェクトが始まっても、「私がリーダーとしてメンバーを引っ張っていけるのか」、「プロジェクトを成功させることができるのか」という不安でいっぱいでした。
そんななか、6月に事前勉強会や地元の方も交えての学習会が始まり、7月には現地視察も行い、浅間酒造の櫻井武社長などとお話する機会がありました。櫻井社長の「お酒造りへの熱い想い」や長野原町の萩原睦男町長の「町への想い」を実際に聞く中で、私の持っていた不安は、いつしか「絶対にプロジェクトを成功させて、長野原町や浅間酒造をもっと活性化させるぞ!」という強い意志に変わりました。
急遽決まった酒蔵ツアーのプランはボロボロ
私たちは昨年の8月下旬の4日間、長野原町で合宿し、具体的なプロジェクト作りに臨みました。当初は「おしゃれな日本酒のパッケージの研究」「観光客の電車利用の促進」など、網羅的な「今後チャレンジしたい6つのこと」をテーマに挙げていました。しかし、合宿は4日間だけ。限られた時間ですべてに取り組むのは難しいと判断し、「合宿中に優先的に取り組むこと」として、「酒蔵ツアー」に絞りました。
これは、浅間酒造が櫻井社長のお父様が経営している「ホテル櫻井」の宿泊者だけを対象に、通常は公開していない酒蔵の見学ツアーを行っているとうかがったからです。私たちは8月中旬に行った事前打ち合わせで、日本酒の魅力や素晴らしさを実感できるこのツアーを実際に体験し、ぜひこの酒蔵ツアーを一般にも公開したいと考えました。それも今までのツアーとはひと味違う、「女子大生目線での酒蔵ツアー」を提案し、合宿期間中にテスト開催するというものです。
しかし、これらの事前打ち合わせを急遽行ったこともあり、酒蔵ツアーを開催する合宿までは、1週間ほどしかありませんでした。その期間に、女子大生目線でのツアーの企画、宣伝用のチラシの作成などをしなければならず、とても目まぐるしい毎日でした。
結局、合宿には万全な状態で臨むことができませんでした。ツアー本番は合宿3日目です。合宿初日に、ゼミ担当の篠原靖先生にツアーの構成をみていただき、酒蔵ツアーを実施するリハーサルも行いました。ところがその結果はボロボロ。ツアー開始から終了までの段取りがうまく出来ていないため、どこでどんな説明をするか、受付はどこか、試飲はどこでするのかなど、うまくいかないことばかりでした。篠原先生からも「こんなツアーならやる意味がない。参加してくださるお客さんに失礼だ」と厳しい指導を受けました。
ツアーの参加者からお褒めの言葉をいただけた
私たちは悔しさでいっぱい。でも、ここまで一生懸命取り組んだ分、最後は大成功で終わらせたく、本番までの2日間はメンバー全員で夜中の2時までツアーでの案内の練習を重ねたのです。
その甲斐もあって、8月28日の本番では、23人のお客様を迎えて、私たちは自信を持って酒蔵ツアーを開催することが出来ました。幸いなことにツアーは大変好評で、終了後にお客様に行ったアンケートでは、なんと計94%の方から「とても良い」「良い」という評価をいただけたのです。「またツアーがあったら参加したい」「ツアーに参加してよかった」というお褒めの言葉も多く寄せられました。
ツアーは2回の予定でしたが、好評だったため急遽3回目も行い、これには篠原先生や他のプロジェクトグループのメンバーにも参加してもらいました。リハーサルで厳しい言葉をもらった篠原先生からは、「ここまでのツアーが完成するとは思わなかった」とほめられ、酒蔵ツアーは大成功で終わったのです。
紙芝居で酒造りを分かりやすく説明。オリジナルラベルも
酒蔵ツアーの成功の理由はなんだったのか。今回、「女子大生目線」の酒蔵ツアーにするために、私たちが心がけたことが3つあります。
まず、従来のツアーでは口頭での説明だけでしたが、そこに酒造りの工程を絵で表現した紙芝居を加えました。耳からだけではなく、目からも情報が入ることで、お客様の理解がより深まるように工夫しました。
次に酒蔵ツアーの内容を、専門的な知識や難しい機械の説明が中心のものから、酒造りの工程やお酒の豆知識へ重点を変え、お客様に分かりやすく説明するように心がけました。
3つ目はこのツアーだけの特典として、日本酒のオリジナルラベルの作成や、蔵の中で蔵人の格好で記念撮影するなど、形に残る思い出を持ち帰ってもらえるような工夫もしたのです。オリジナルラベルは参加者にメッセージやイラストを書いてもらい、ワンカップのお酒に貼って、「世界に1本しかない日本酒」をお持ち帰りいただくという趣向です。
一方で、今回の酒蔵ツアーでの課題もいくつか見つかりました。まず、今回の参加者はご高齢の方がほとんどでした。今後はさまざまな年齢層の参加者を想定して、年齢別の案内原稿をつくることも必要ではないのかという意見がグループ員から出ました。リピーター獲得のためには、様々なパターンの内容が必要という意見もありました。お客様からは、案内用のパネルが小さく、内容が見えづらいという指摘もがお客様からありました。
課題を改善し、観光コンテンツとして商品化したい
今回の酒蔵ツアーは試験的に行ったものでしたが、その結果からは酒蔵ツアーには一定の需要があることが分かったのです。不安だらけで、うまくいかないことも続いたプロジェクトでしたが、ツアーを実際に自分たちで行ってみることで、課題もみつけることができました。まだまだ良いツアーが期待できるはずです。今回浮かんだ課題をひとつずつ改善し、酒蔵ツアーの質を高めていきたいと思います。そして浅間酒造の酒蔵ツアーを、長野原町に長く滞在してもらうための観光コンテンツとして商品化を目指そうと思います。
私たちはこれからも酒蔵ガールズとして、浅間酒造の発展と長野原町への観光客誘致に協力していくつもりです、みなさんもぜひ、浅間酒造の酒蔵ツアーに参加してみてください。
次回は道の駅八ッ場ふるさと館についての記事です。皆さんお楽しみに!
(跡見学園女子大学 篠原ゼミ3年 渡辺理愛)
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