ハーバード生の卒業式事情 ~学校全体が8日間のお祭りに廣津留すみれのハーバードからの手紙(9)

米ハーバード大4年生/演奏家 廣津留すみれ

米ハーバード大4年生/演奏家 廣津留すみれ
スピルバーグのスピーチの様子
スピルバーグのスピーチの様子

"By virtue of authority delegated to me, I confer on you the first degree in arts or in science and admit you to the fellowship of educated women and men. Congratulations."

(「あなたに文学士の学位を授与します。おめでとう。」)

ファウスト学長からのこの言葉とともに、5月26日、私はハーバード大学を卒業しました。高校卒業後に渡米、4年間を過ごしたハーバードのキャンパスの真ん中でこの言葉を聞き、「ああ、私もやっとここまで来たのだな」と、安堵と感激の思いに胸が熱くなりました。今回の記事では、日本と少し違う卒業式の様子と、卒業後の進路の決め方についてお話します。

卒業式は年に一度のお祭り

まず、アメリカの卒業式事情です。卒業式というと日本では大抵、講堂に集まって学長や教授のお話を拝聴し、卒業証書をもらう、その1日だけのことを指しますが、ハーバードの卒業式Commencementは3日間にわたって行われます。私が学んだハーバードカレッジ(4年制学部)だけではなく、全大学院を含む学校全体でとりおこなわれる、大規模な行事です。

寮長の教授と記念写真

卒業式までの8日間はSenior Weekと呼ばれ、卒業までに4年生同士の親睦を深めるのを目的として、4年生のための様々なイベントが毎日行われます。今年のSenior Weekはボストンの港のクルージング、クラブを貸し切ったパーティ、寮対抗運動会、寮別の催しなど、今まで4年間でまだ会ったことのなかった同級生と仲良くなれるイベントが目白押しでした。授業、課題、課外活動に日々追われる生活の中で、遊びに行ったりゆっくりと話をしたりできない私たち学生にとって、一生の財産となる仲間と過ごすイベントの数々はかけがえのない時間となりました。

自分のストーリーを紡ぐ大切さ

3日間の卒業式本番、1日目は2016年卒の集合写真撮影と、baccalaureate serviceという儀式が学校内の一番大きな教会で行われました。これはもともとキリスト教の儀式ですが、今は形を変えて様々な宗教の聖典の朗読が行われたり、賛美歌を歌ったりという式になっています。締めくくりにファウスト学長のスピーチがあり、"Narrate your own story"というテーマで、周りが何と言おうと、自分の道は自分で切り拓いて自分自身のストーリーを紡ぎ上げることが大切である、というお話をしてくださいました。

2日目はClass Dayというイベントで、ハーバードカレッジの学部生のための卒業式で、MCもスピーチも実行委員会に選ばれた学生が構成します。ゲストスピーカーは、ハーバード卒の女優、ラシダ・ジョーンズ。30分にわたるスピーチで「芸能人は政治についてコメントしちゃだめという人がいるけど、そんなの私は気にしないわ。今の世の中には問題が多すぎるから黙ってなんていられない」と前置きをした上で、現代の政治的な問題にも強く言及しました。特に印象に残ったのは、卒業後に成功するための道をどう探すか、という話でした。自身が若い頃に、誰かが自分のために成功へのレールを敷いてくれると信じていた、という話を持ち出し、

"Here's the simple truth: You are the only one who can create the life you want, and you may have to break some rules to do that."

「成功するための唯一の答えはこうです。自分の望む通りの人生を作れるのはあなた自身だけ。時にルールを破らなければいけないこともあります。」

このように、私たち学部生に大切なアドバイスを残してくれました。

Class Dayの演奏後に

またClass Dayのエンディングで、私はハーバード大学の校歌をステージ上で演奏する貴重な機会をいただき、約1600人の卒業生とその家族・ゲストの前でClass Day Odeという歌をバイオリンで演奏しました。未来に希望を抱く仲間1600人を壇上から眺める景色は本当に圧巻で、ハーバードという環境で高い志を持つ仲間と切磋琢磨できたことに改めて感謝の気持ちを覚えた瞬間でした。

いよいよ卒業式

待ちに待った3日目は大学院生・学部生共同の卒業式と、各寮に分かれての卒業証書授与式と、この3日間で最も重要な役割を成す日でした。まず卒業式は野外で、各大学院(ハーバードビジネススクール、ケネディスクール、メディカルスクール等)の卒業生と学部生が黒のローブと帽子を身にまとい一堂に集結し、冒頭に書いたファウスト学長による学位の承認が執り行われました。

各学位の名前が呼ばれるたびに生徒から大歓声が上がり、卒業までの苦労が報われた瞬間を喜ぶ周りとともに、私もだんだん実感が湧いてきました。卒業証書を受け取ったあとは、大学生活に終止符を打つことを寂しくも感じましたが、何よりハードな4年間の生活を乗り越えてここまできたのだということへの達成感が、自分の中で一番大きかったです。

卒業式1日目の様子

3日目のゲストスピーチは「E.T.」や「ジョーズ」などの作品で知られる映画監督のスティーブン・スピルバーグでした。彼も印象的な言葉の数々を残されましたが、特に感銘を受けた言葉がこちらです。

"My job is to create a world that lasts two hours. Your job is to create a world that lasts forever. You are the future innovators, motivators, leaders and caretakers.... To me, this means we all have to tell our own stories. We have so many stories to tell. Talk to your parents and your grandparents if you can, and ask them about their stories. I promise you, like I have promised my kids, you will not be bored. That's why I so often make movies based on real-life events."

「私の仕事は2時間だけの世界を作ることです。あなたたちの使命は、永久に続く世界を作ることです。つまりあなたたちは、将来のイノベーター、モチベーター(周りにやる気と刺激を与える人)、リーダー、メンターになるのです。(中略)私たちはそれぞれ自分のストーリーを語らなくてはなりません。私たちにはたくさんの物語があるのです。ぜひ両親や祖父母に話してみてください。そして彼らの歩んできた歴史を聴いてみてください。退屈することは全くないと思います。私が現実の話をもとに映画を製作する理由はここにあります」

皆さんお気付きでしょうか。ここまで3日間のスピーチ(ファウスト学長、ラシダ・ジョーンズ、スティーブン・スピルバーグの3名)が全く同じ主旨のお話をしています。自分のやりたいことをやって、自分の物語を自分で紡ぐべきだ、という強いメッセージが伝わってきます。この自由な考え方には私も大変影響を受け、周りの卒業生の進路もその影響を受けているように感じます。

そこで、私も自分の気持ちに正直に卒業後の進路を決めることにしました。同学年の卒業生を見ても皆本当にばらばらです。就職する人が一番多く、特にコンサル・投資銀行・テクノロジー(主にエンジニア)への就職が全卒業生の半数を占めます。その他、大学院への進学や1年間オフを取って世界一周旅行に出る人、起業する人、プロのスポーツ選手になる人など様々です。

そんな中で、私はニューヨークにあるジュリアード音楽院の修士課程でバイオリンの腕を磨くことを決意しました。次回の最終回では、なぜ私がジュリアード音楽院に進学を決めたかについてお話したいと思います。

各ゲストの卒業式スピーチの映像はここから見ることができますのでご参照ください(英語のみ)。

ラシダ・ジョーンズ(https://www.youtube.com/watch?v=L3gEd2JQtRo)

スティーブン・スピルバーグ(https://www.youtube.com/watch?v=TYtoDunfu00)

卒業式のステージ上からの風景
お知らせ
今年で4年目となりました、ハーバード大学生9名が教える夏期集中英語セミナー、Summer in JAPAN 2016を大分市で開催します。著者も講師として参加、コンサートにも出演します。対象は全国の小中高生と大学生ですので、ぜひふるってご応募ください。

英語セミナー:7月30日から8月5日
コンサート「第4回 廣津留すみれとハーバードの仲間たち」:7月31日
お問い合わせ:seminar@summerinjapan.com
詳しくはSummer in JAPANのホームページをご覧ください。
廣津留すみれ(ひろつる・すみれ)
1993年生まれ、大分県立大分上野丘高校卒、米ハーバード大4年生。英語塾を経営する母親の影響もあり、4歳で英検3級に合格。3歳から始めたバイオリンで高1の時に国際コンクール優勝。大学では2団体の部長やオペラのプロデューサーなどを務める。2013年からハーバード大の学生らとともに子どもの英語力を強化し表現力やコミュニケーション力を引き出す英語セミナー「Summer in JAPAN」を大分で開催している。
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
Mirai アーカイブズ
学生参加型コミュニティ 登録受付中
メールマガジン登録
Mirai アーカイブズ