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貧富の差と人種で分断されたアメリカの街で考えたこと

アジア人は私だけ~米大学留学記(6)

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NIKKEI STYLE

外国に留学する時、教育プログラムや知名度、キャンパスの設備と同じくらい、時にはそれ以上に重視されるのが、その立地だと思います。特にアメリカの場合、言語こそ同じですが、NYのような大都市に留学するのと、中西部の田舎に留学するのとでは同じ国とは思えないほどの差があります(連邦制なので、別の国といえば別の国ですが)。また、たとえ同じ都市の中であっても、地区や、場合によっては道一本隔てただけで雰囲気や治安ががらりと変わるのが当たり前です。

私の留学しているジョージア州アトランタは「南部の首都」とも呼ばれる、アメリカ南部一の大都市です。有名どころでいうとCNN、コカ・コーラ、デルタ航空の本社所在地であり、名作『風と共に去りぬ』の舞台でもあります。ダウンタウン周辺には高層ビルが立ち並び、どこか東京都心のような雰囲気もあります。

柵で囲まれたキャンパス

一方、スペルマンを含む歴史的黒人大学4校が集まるAtlanta University Centerは、アトランタ市南部の黒人居住区に位置しています。ここはいわゆる「黒人ゲットー」と呼ばれる、低所得層の黒人が多く住む地域で、治安は端的に言って悪いです。キャンパスは柵でかこまれており、24時間パトロールがあるのでとても安全ですが、一歩でも外に出たら昼間でも集団で行動し、歩ける距離でもタクシーを使うよう注意を受けるほどです。

そもそもアメリカの黒人居住区は一般的に治安があまり良くないことが多く、旅行ガイドブック等で不用意に近づかないように、と警告されている地域の筆頭ですし、観光地でもない限りわざわざ足を踏み入れる人もそう多くはないと思います。私の場合、留学先は大学ありきで決めましたし、そもそもアメリカでの生活というものをほとんど知らなかったので、立地に関してはあまり深く考えたことがありませんでした。しかし、この約半年を通して、自分が大学そのものに期待していた以上に、黒人ゲットーに住むことから学び、考えさせられたことがたくさんありました。

アトランタは公共交通機関が非常に発達しており、学校の最寄り駅からダウンタウンを通って北部の郊外まで電車一本でアクセスできるのですが、北行きの電車に乗って窓の外の風景を眺めていると、地域ごとの生活水準の差が目に見えてはっきりとわかります。ゲットーの廃屋だらけの殺風景な街並みは、ダウンタウンに近づくにつれ高層ビル街に、それを過ぎると裕福な白人・アジア人が多く住む高級住宅街に変化していきます。乗客の客層も、乗り込んだ時点ではぼろぼろの服を着たホームレス風の人を多く見かけますが、ダウンタウン辺りを境に白人・アジア系の学生や家族連れが一気に増え、終点近くになるとブランドバッグにたくさんの紙袋を持った女性客なども目立ってきます。

ストッキングが見つからない!

ゲットーの内と外では、建物も、歩く人も、食べ物も、においも、何もかもがえげつないほど全く違います。アトランタの北部を歩けば、人気のブランドが軒を連ねる巨大ショッピングモールやおしゃれなレストラン、オーガニックスーパーなど、テレビや雑誌を通して自分が知っていた「アメリカンライフ」を楽しむことができますが、そこからゲットーに戻ると、自分の目に見えていなかったものがいかに多いか気づかされます。

前述の通り黒人居住区の中に大学があるので、当然ながら私はキャンパス外でもマイノリティです。近所のウォルマートに行っても、従業員・買い物客のほとんどが黒人で、アジア人はこれまで見かけたことがありません。

大学でただ授業を受けるぶんには人種や文化の違いはあまり問題になりませんが、地域に根付いて生活していくとなると実際のところ苦労することもあります。治安の悪さは言うまでもなく、数少ない外食はファストフードのみ、個人商店らしきものの半分位は落書きだらけの空き家でたまに焼けた痕跡がある、といった具合で、正直に言って生粋の日本人が暮らしやすい環境だとは思いません(もっというと、おそらく大多数の学生にとっても決して満足できるレベルではないと思います)。

別に私の住んでいる地域が悪い、と文句を言いたいわけではなく、美容室、洋服、食べ物、娯楽、あらゆる生活インフラが黒人ゲットーの文化と生活スタイルに合ったものになっていて、私のようなアジア人はそもそも住民として想定されていない、ということです。

身だしなみひとつとっても、アジア人の髪質に合ったヘアケア製品がそもそも売っていませんし、自分の肌の色に合うストッキングが見つからない時などは、自分が人種マイノリティであることを強く意識する瞬間です。アトランタの韓国人街に遊びに行って、売っている食べ物や雑貨に不思議な安心感と心地よさを覚えている自分がいることに気づいた時、なぜアメリカで人種や民族や宗教ごとに人々が寄り集まって生活しているのか腑に落ちた気がしました。

ひとつではない「黒人社会」

他方、キャンパスの内と外、黒人社会におけるブルーカラーの労働者層、貧困層と知識階層との格差も、留学生活を通して見えてきたことのひとつです。私立大学のスペルマンに通えるような学生たちは基本的に中流階級以上の子女が多いので、身なりや持ち物も話す英語も、キャンパスの外で出会う人々とは全く違います。スペルマンの学生は私でも頑張れば理解できるようなクリアな英語を話す人が多いですが、スーパーの店員やタクシーの運転手の話す黒人英語は何度聞き直しても単語のひとつすらわからないことが頻繁にあります。

スペルマンのキャンパスで人種差別的な対応をされたことはこれまで一度も(少なくとも表面的には)ありませんが、外ではあからさまに変な目で見られたり、「アジア人は帰れ」と罵倒されたこともありました。政治家や弁護士や医者の卵がゴロゴロしている、いうなれば黒人社会の最上位集団のすぐ隣に、アメリカ社会の最底辺の生活をしている人々がいる、という現実を目にすると、人種はアメリカ社会の抱える問題のひとつに過ぎないのだと改めて実感させられます。

正直なところ、私はここで暮らし始める前は「黒人社会」というものをひとつのぼんやりとした大きなかたまりとしてしか捉えていませんでした。「アジア人社会」にだってありとあらゆる人がいて、人種やひとつの特性だけで人をグループ分けすることはできない、ということを頭の中では分かっていながら、自分の知らないコミュニティに関して語る時には、人々を人種や宗教、民族で悪気なく括り、一般化することが少なくありませんでした。

しかし、スペルマンの小さなキャンパスを一歩出るたびに、ここが「黒人社会」のすべてではないのだと実感しますし、むしろ黒人女子大学という環境の特殊性を思い知る機会のほうが多いほどです。当たり前のことかもしれませんが、全米に何校もある歴史的黒人大学の中でも特に「黒人ゲットーの中にある黒人大学」に来たからこそ、私が留学しているのは「黒人社会」ではなく、「黒人社会のひとつ」なのだ、という意識を持つことができているのだと思います。

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