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「自分が」世界をどう変えるか

アジア人は私だけ~米大学留学記(3)

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NIKKEI STYLE

こんにちは。アメリカの大学ではそろそろ秋学期が終わろうかというところですが、今回はいよいよ、歴史的黒人大学(HBCU)での学びについて書きたいと思います。

スペルマンは設立経緯が特殊であるとはいえ、基本的な大学のシステムや学生の生活スタイルは一般的なアメリカの(小規模私立)大学と大差ないと思います。多くの授業で人間の限界を超えたリーディングを課され、課題や小テストも頻繁にありますが、ほとんどの学生はAを取るために真面目に勉強しています。基本的なクラスのサイズが小さいこともあり、教授は非常に協力的で、そのおかげで英語が不自由な留学生であってもなんとか生き延びることができています。

"白人のアメリカ人"は少数派

ただひとつ、他の大学との絶対的な違いを挙げるとすれば、それは教育の軸だと思います。スペルマンで授業を受け始めて、私がまず一番に感じたのは、やはり黒人大学であることがここでのあらゆる教育の基礎になっているということです。それは講義のテーマとしてわかりやすく表れたものもあれば、実際に教授がどのように教え、学生がどのような姿勢で学ぶか、といったところから感じたものもあります。

ちなみに、教員の人種構成は、あくまで私の体感ですが、おそらく6割超がアフリカ系・カリブ系人種、1~2割がアジア系・ヒスパニック系を含む有色人種で、本当に純粋な意味での"白人のアメリカ人"はかなり少ないように思います。性別比でいうと、これも正確な数字はわかりませんが女性が少なくとも6割以上はいますし、事務スタッフに関しては圧倒的多数が黒人女性で、大学全体としてマイノリティーの雇用に力を入れている印象を受けます。

私が今学期履修した授業でお世話になった先生を挙げると、アフリカ系イギリス人男性、カリブ系ドイツ人女性、アフリカ系アメリカ人女性、ポーランド人女性と、皆アメリカで"マジョリティ"のカテゴリーには入らないバックグラウンドを持っています。授業の中で教授自身の出自や移民経験からくる独自の視点を知る機会もあり、このような教員の多様性も授業を面白くしている要素の1つではないかなと思います。

具体的なカリキュラムについて言うと、スペルマンでは専攻問わず全学生が履修する必修科目として、"African Diaspora and the World"という授業があります。通称ADWと呼ばれるこの授業のテキストは大学がこの科目のためだけに独自に作成したもので、学生はアフリカン・アメリカンとしてのルーツと、その歴史が今にどのように繋がっているかを学びます。

また、その他各専攻(特に文系)の選択科目にも、黒人文化や歴史にフォーカスした非常にユニークなコースが揃っています。アフリカ音楽やジャズの歴史を学ぶ授業があったり、私の所属する政治学部では、"Black Women: Status, Achievement, Impact""Afro-Americans in Politics"といった、歴史的黒人大学ならではの講義を受けることができます。

リーダーとなる黒人女性を育成

一方、政治学・経済学のような基礎的・普遍的な科目についても、私は授業の随所に「世界を変革していくリーダーとなる黒人女性を育成する」、という大学のミッションに通ずるものを感じました。

例えば、私が今学期取っている政治学の研究手法のクラスでは、学期を通して「"black political scientist"として政治を研究する意義は何か?」「"black political scientist"として、どのように既存の政治学研究のフィールドに貢献できるのか?」ということを何度も問われました。授業の前にはキング牧師の手記や、公民権運動・現代の"Black Lives Matter"運動に関する資料のリーディングが課され、ディスカッションでは皆が自分自身の経験を元に、人種差別の実態や既存の政治の問題点について持論を述べます。

また、学期末のプレゼンでは、多くの学生がアメリカのマイノリティーコミュニティーをめぐる政治、もしくは自身のルーツであるアフリカ諸国の政治や国際政治に関連するテーマを選んでいました。例えば、シエラレオネ系の学生のリサーチは、現地の人脈を利用して生データを集め、これまであまり研究されてこなかった小国の政治体制と教育について検討する、というものでした。この授業を通して、自分の研究テーマを深める以上に、他の学生が何に問題意識を持っているのか知ることができたのが、私にとってとても大きな学びでした。

犯罪学(Criminology)の授業では、犯罪の発生原因や抑止、被害者に関する様々な理論を学びましたが、毎回必ず銃乱射事件や警官による黒人射殺事件等、黒人コミュニティーと犯罪にまつわる具体例が取り上げられました。指定されたテキストの1つは、薬物犯罪に手を染め若くして亡くなった黒人男性が主人公のノンフィクションで、授業内のディスカッションでは実際に貧しい黒人コミュニティーの中で育った学生が見聞きし、時には実際に経験した犯罪について生の声を聞く機会も多々ありました。特に女子大ということもあってか、黒人コミュニティーにおけるレイプ問題が取り上げられた回には、議論が白熱しすぎて教授がストップをかけるほどでした。

「自分が」世界をどう変えるか

このように、スペルマンには黒人文化や歴史への理解を深められるユニークな講義がたくさんあるのと同時に、特別に練られた授業以外であっても、学んだ理論を黒人コミュニティーが抱える問題に当てはめて考えさせられる機会が数多くあります。このような環境で学ぶ学生たちは、自分が所属する社会に対して強い問題意識と当事者意識を持ち、ただ批判するだけでなく、「"自分が"どのようにその問題を解決できるだろうか?」と常に問い続けながら授業に臨んでいるように思います。

一方、自分が日本の大学でどのように学んでいたかを振り返ってみると、日本の政治や社会について論じるにしても、既存の出来事を「客観的にどう評価するか」考えるのに多くの時間を費やし、「"自分が"一人の政治学者としてどう世の中を変えるか?」という発想をしたことはほとんどありませんでした。

最初こそ、星の数ほど大学がある中、なぜ全米からスペルマンに優秀な学生が集まるのか?と疑問に思うこともありましたが、ここで4か月過ごした今感じるのは、"make a choice to change the world"というのは単なる理想ではないのだ、ということです。「マイノリティーがマイノリティーでなくなる」環境が可能にする、一貫したコンセプトに基づく濃密な教育が、学生にリーダーとしてのマインドを育み、変革者としての力を与えるのだと思います。

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