貯金にまい進、これでいいの?
女優、美村里江さん
現在、目標金額を決めて貯金をしています。目標を達成するまではぜいたくをする気が起きず、いろんなことに無頓着になってしまいました。人生これでいいのかな、と思います。(東京都・女性・30代)
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貯金は大事ですよね。私たち役者業も会社員扱いの場合は別ですが、多くは福利厚生も退職金もない自営業者。重要なことですから、共感いたします。
さて、お金をためてみると、多くの人は最初の目標の10万円が達成できれば、次は50万円、その次は100万円……と、際限なく目標金額が増えていくとお聞きします。そのうちに「目標金額を達成すること」ではなく、「貯金すること」自体が目的になってしまう。まさに、相談者さんの状況ですね。
貯金こそ人生の趣味、と言えるほど突き抜けてしまえば楽しそうですが、「人生これでいいのかな」と思うようになってしまっては問題です。ご自身を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
相談者さんがもともと、何を目指し、目標金額を決めて貯金をされているのかはわかりません。用途はどうあれ、貯金には「いくらたまれば安心か」という問題が常につきまといます。
しかし、冒頭にも書きました通り、残念ながら、どこまでためても「金額」では安心感は得られないそうです。日本の国家予算ほどになれば、国内で起きることにはおおむね対応可能でしょう。ただ、誰にとっても未来のことは未知です。未来に必要なものを全て把握し、完璧なる予算を考えることは不可能です。そのため、「金額以外での安心感」をもつことが大事ではないでしょうか。
私個人のお話をします。私は「役者は技術職、けれど芸能界は水物」と考えています。水物の芸能界で何かあれば、今の生活を全て終え、別の人生に移るという考えを夫と共有しています。逆説的ですが、このことによって安心し、より深く全力で大好きな役者業に没頭できている自覚があります。
相談者さんにとってはどんなことが安心感につながるでしょうか。心身の健康、良好な友人関係、仕事の充実……。多くの選択肢がある中、お金も、時間も、人生で持てるものは有限です。安心感、満足感の高いものにそれらを割いて、数字では測れない自分だけのスタイルを確立できるといいですね。同じ30代、私も模索を続けたいと思います。
とはいえ、イザという時にお金は必要です。目標の金額にはとらわれず、可能な範囲で貯金は続けましょう!
[NIKKEIプラス1 2018年12月15日付]
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