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お酒で顔が赤くなる人は、飲酒なしでも骨折リスク上昇 飲酒と骨粗しょう症(上)

日経Gooday

2019/2/10

2017年、お酒で顔が赤くなる人は大腿骨骨折を起こしやすい、というニュースが流れた。これは本当だろうか。そしてその影響は? (c)Sebastian Kaulitzki-123RF
日経Gooday(グッデイ)

近年、健康寿命がクローズアップされる中で、大きなリスク要因として挙がるのが「骨折」だ。「転んで、骨折して、そのまま寝たきりに…」という恐怖のコースはマスコミでよく取り上げられる。シニアの骨折と深く関わるのが「骨粗しょう症」だ。

この骨粗しょう症について、驚きの発表が2017年にあった。お酒で顔が赤くなる人は骨粗しょう症による骨折リスクが高いというのだ。酒ジャーナリストの葉石かおりがその真偽を確かめるべく、論文を発表した慶應義塾大学医学部の宮本健史さんを直撃した。

◇  ◇  ◇

骨粗しょう症と聞いて、高齢者の病気なんじゃないの? 特に40代、50代くらいの働き盛り世代なら、そんなふうに思う方々が大多数なのではないだろうか? ご多分に漏れず、筆者も全く同じように思っていた。

だが、2017年から、あるきっかけがあり骨粗しょう症のことが気になるようになってきた。それが、2017年春に流れた「お酒を飲んで赤くなりやすい人は、骨粗しょう症による大腿骨骨折を起こしやすい」というニュースである。テレビ番組やネットなどを通して報道されたので、ご存じの方もいらっしゃるのではないだろうか。マスコミで取り上げられたのは、慶應義塾大学医学部から論文が発表されたためである。(「お酒で顔が赤くなる人『骨粗しょう症・骨折』に注意」を参照)。

筆者は今でこそ酒を飲んで赤くなることはないが、酒を飲み始めた頃は首まで真っ赤になっていた。そういえば、身内でお酒を飲んで真っ赤になる人が、骨粗しょう症が原因で、大腿骨骨折の手術をしていたっけ…。

今はまだ大丈夫、と思っているものの、お酒を飲み続けるうちに、知らぬ間に骨粗しょう症が進行し、あるときポキッといってしまったら…。そして、骨粗しょう症は閉経後の女性のほうが多いというから、私もいずれ人ごとではなくなる。不安は募るばかりである。

そこで、今回はニュースの基となる研究結果を発表した慶應義塾大学医学部整形外科学先進運動器疾患治療学寄付講座 運動器科学研究室室長の宮本健史さんに話を伺った。

■今や、年間19万件の大腿骨近位部骨折が発生

飲酒と骨粗しょう症との関係に入る前に、まずは骨粗しょう症と骨折の基本を押さえておこう。

そもそも骨粗しょう症とは、骨の新陳代謝である「骨代謝」のバランスが崩れることによって起こる病気のこと。骨粗しょう症になると骨密度が低下することで骨が弱くなり(骨がスカスカになる)、ちょっと転んだだけで骨折してしまう。転んで骨折するのはもちろん、気づかぬうちに骨折してしまう「いつの間にか骨折」を引き起こすこともあるという。

骨折はどれもイヤだが、特に怖いのが大腿骨近位部骨折である。大腿骨は、ご存じのように足の付け根から膝までの骨で、カラダを支える最も大きい骨である。大腿骨近位部骨折は、その骨が足の付け根付近で折れてしまう骨折だ。この部分が骨折すると、立つことはもちろん、歩くことすら困難になってしまう。

大腿骨近位部骨折は、頸部骨折と転子部骨折に分類される。

「骨粗しょう症による大腿骨近位部骨折の患者は増加し続けています。2014年のデータで大腿骨近位部骨折は年間19万件、1日平均で約500人になる計算です。さらに今後も増加することが予想されています」と宮本さんは現状を説明してくれた。

想像以上に多い患者数に驚いた。確かに、私の周辺の高齢者の話に限っても、大腿骨近位部骨折は決して珍しいことではない。

では大腿骨近位部骨折を起こすと、どのような経過をたどるのだろう?

「大腿骨近位部骨折は手術が必要となり、手術後は日常生活の動作レベルが下がってしまいます。治るまでにかかる期間も長く、その間に筋力も大幅に低下してしまいます。このため寝たきりにつながりやすいのです。ご存じのように、そのまま認知症を発症するケースも多くあります。カラダの自由がきかないこともあり、家族の介護負担も大きく、医療費負担もかさみます」(宮本さん)

なお、男性の読者の方には、骨粗しょう症は女性に多い病気で、男性は関係ないと思っている人もいるだろう。宮本さんは、「一般的に骨粗しょう症による大腿骨近位部骨折は『女性の病気』と思われています。確かに女性のほうが多いのですが、男性にも起こります。そして、実は骨折後の死亡率は男性のほうが高いんです」(宮本さん)

骨粗しょう症の恐ろしいところは、目に見える自覚症状がないことだ。それ故に症状がじわじわと進み、気づいたときには「知らぬ間に骨折」なんてことが起こってしまう。

■お酒を飲んで顔が赤くなる人の骨折リスクは約2.5倍!

ここまでの説明で、骨粗しょう症、そして大腿骨近位部骨折の怖さはよくわかった。この事実を踏まえた上で、宮本さんたちの研究チームの研究の詳細に迫っていこう。

まずは、宮本さんたちが行った研究の内容を簡単に説明しよう。今回の研究では、大腿骨近位部骨折を起こした92人を「大腿骨近位部骨折群(骨折群)」、大腿骨近位部骨折を起こさず、骨粗しょう症の診断基準も満たさない48人を「正常群」として、それぞれの群の方々の遺伝子(ゲノムDNA)を回収した[注1]

[注1]なお、「正常群」のうち、骨粗しょう症の治療中、治療経験がある人、糖尿病など骨粗しょう症の原因となる病気にかかった人は除外した。

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