書店や文具店で2019年度の新作手帳が並ぶ中、ユニークな切り口の変わり種手帳が登場している。その一つが、「マインドフルネス」を実践できる手帳だ。マインドフルネスとは、「今この瞬間」に集中する状態を指す。最新の脳科学では「ストレス軽減」「集中力アップ」などの効果が実証されており、ストレスがかかる場面において否定的な感情や物事にとらわれることなく、自分を取り戻す方法としても注目されている。
近年、米国ではグーグルをはじめフェイスブックやマッキンゼー・アンド・カンパニーといった企業がマインドフルネスを研修に取り入れ話題となった。グーグルで開発された脳科学とマインドフルネスの能力開発メソッド「SIY=SEARCH INSIDE YOURSELF(サーチ・インサイド・ユアセルフ)」の認定講師として、日本の企業に研修を介して広め、今年、マインドフルネスを習慣化するための手帳を作ったのが、マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事の荻野淳也さんだ。マインドフルネスという状態に至る手段として、手帳がどのように役立つのか、荻野さんに伺った。
手軽に実践できる「書く瞑想」の効用
――マインドフルネスの効用や、手帳でマインドフルネスをどのように実践するか教えてください。

マインドフルネスとは、「今ここに集中する状態」になることです。まだ手をつけていない仕事やあすの仕事、将来のキャリアなどは、心配ごとや不安、ストレスの原因になります。未来に不安があると集中力がそがれ、本来やるべき仕事ではなく他の作業を始めたり、ネットサーフィンをしたりして、現実逃避することが多くなってしまいます。そして、本来やるべきことに集中できない状態に陥り仕事の効率を下げます。仕事の効率を高めるには、マインドフルネスな状態にもってくることが重要になるのです。
マインドフルネスな状態に至る手段としては、瞑想(めいそう=メディテーション)があります。しかし、毎日働きながら瞑想する時間を持つのはなかなか難しい。そこで、それ以外に手軽にできる手段として注目されているのが「ジャーナリング」と呼ばれるワークです。これは「書く瞑想」とも呼ばれ、自分の思いや考えを紙に書く習慣を持つことで、「今ここに集中する状態」をつくり出すというものです。
紙に書き出すことで集中力を高めることができるほか、自分や物事を客観視でき、そこから気づきや発見が得られます。これによって、否定的な感情の増幅を抑えることができるようになり、前を向いて次に進む精神状態をつくり出すことができるようになります。このようなジャーナリングを習慣化させるために最も適しているのが、実は手帳なのです。手帳には、毎日のスケジュールやタスクなどを日々書き留めますが、この習慣的行為こそがジャーナリングにとって有効になるのです。
・あるテーマについて決められた時間ずっと書き続ける
・頭で考えずに手を動かす
・気をそらせるものがないプライベートな空間で行う
・脚色しないで事実や気持ちをあるがままに書く
・誤字や脱字を気にしない
自分がいま置かれている状況=この瞬間に起きていることに深く向き合い、マインドフルネスの効果を高める。