ロードスターをアメ車風に 光岡自動車のロックスター
光岡自動車は新型スポーツカー「Rock Star(ロックスター)」を2018年11月29日に発表、12月1日から受注を開始した。同社は市販車をベースに独自のクラシカルなデザインを施したカスタマイズカーを製造販売するメーカーで、今年創業50周年を迎える。Rock Starは、その記念に送り出された。マツダ「ロードスター」をベースに、60年代に発売された米国のスポーツカー、シボレー「コルベット」(2代目)のオープンモデルをほうふつさせるデザインに仕立てられている。限定200台。価格は、469万8000~518万4000円だ。
発表前に同社の顧客向けに案内を行い、50周年記念車ということで50台限定で先行受注を行い、すでに完売した。ネットでの反響もすでに大きく、残りも早い段階で完売する可能性がある。
アメ車モチーフは初めて
これまでカスタマイズカーのモチーフは、ほぼ欧州車で上品なものが多かった。一方、Rock Starは初めて米国車を題材としており、かなりアグレッシブなスタイルを持つ。
外観デザインは迫力満点で、かなり目を引く。正直、なかなかカッコいい。ロードスターベースなので、こちらも2シーターのオープンカーに仕立てられているが、その面影はほとんどない。
何しろ、前後は専用デザインの樹脂パネルに置き換え、外観上でロードスターと同じ部分は、フロントガラスまわり、ドアパネル、ソフトトップほどしかないのだ。
モチーフとなっているコルベットの面影を感じさせる鉄製風のメッキバンパー、スリット入りボンネット、フロントフェンダーのエアダクト、丸目4灯式テールランプなどのパーツが装着されている。コルベットのヘッドライトはリトラクタブル式だったが、Rock Starでは固定型の2灯式LEDに置き換えた。
ボリュームを増したボディーサイズは、全長4345×全幅1770×全高1235mm。ロードスターと比べると、全長が+430mm、全幅が+35mmとサイズアップしているが、十分にコンパクトで取り回しやすい。
ルーフの高さはロードスターと同じなので、全長が伸びた分ルーフの低さも強調されている。重量は90kg増えているが、1100kg前後にとどめているので、ロードスター同様、スポーツカーらしい走りも楽しめるだろう。
ロードスターの内装はクラシカルな外観とも好相性
内装はロードスターと共通だがカスタマイズでき、レザーシートや、ボディーと同色のドアパネルなどが用意され、ユーザー好みのカラーコーディネートが可能だ。シンプルで実用性も追求したロードスターの内装デザインは、クラシカルな外観とも相性がいいため、中身を見てもクルマに詳しくなければ、ロードスターとは分からないはずだ。
パワートレインや基本的な装備は、ロードスターと同じ。132ps/152Nmの1.5Lの直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、トランスミッションは、6速MTもしくは6速ATが選択できる。
ベースとなるグレードは、「S(6速MTのみ)」と「Sスペシャルパッケージ」のいずれか。ロードスターのメーカーオプションも基本的には選べる。
社員の熱い思いを優先し、お得な価格に
50周年車が米国車風のモデルになったのは、新車ディーラーや並行輸入車販売を行う光岡自動車が、長年アメ車を扱ってきたという背景がある。
そして、同社デザイナーでもある青木孝憲課長と、商品企画を担う渡部稔執行役員がともに、「アメ車を題材にしたカスタマイズカーを手掛けてみたい」という思いがあったからだという。
特に渡部執行役員は米国・カリフォルニアで青春時代を過ごした経験があり、「その頃の情熱を思い起こさせる刺激的な一台に仕上げたかったという思いが、Rock Star誕生のきっかけ」だという。
青木氏も、「ただコルベットをそのままよみがえらせるのではなく、誰もがアメリカ車らしいスタイルだと感じ、カッコいいと思い、見ても乗っても気持ちがたかぶるものにしたかった」と話す。
先行オーダーをした顧客は、渡辺執行役員同様に米国に憧れを抱いた世代である50~60代の男性が中心だという。
発表会に出席した光岡章夫社長は、「私はもう少し高くてもよかったかなと思ったが、社員たちの思いを優先し、500万円を切る価格(からのスタート)にした。かなりお得感は高いと思う」と話した。
「弊社でもクラシックなコルベットを取り扱うが、高価なうえメンテナンスにも多くの時間と費用が求められる。アメリカ車らしいスタイルを気軽に楽しめるRock Starは魅力的だと思う。将来的には、中古車価格は新車同等かそれ以上となるのではないか」(光岡社長)と新型車への自信を見せた。
納期は早くても2019年初夏
納期は、かなり待つことになる。ボディー架装がハンドメードになるからだ。計画では2019年に生産を開始するという。2019年度は先行受注の50台を、2020年度と2021年度に75台ずつ生産するとしている。ユーザーの手元に届くのは、最も早くて2019年の初夏ごろになるようだ。
光岡自動車は今後、オリジナルのカスタマイズカー販売に力を入れ、専売ディーラーも拡大していく。Rock Starの好評ぶりは、光岡自動車のクルマ作りにも変化を与える可能性がある。今後、新たなアメリカンなモデルが登場することも期待できそうだ。
(文・写真 大音安弘)
[日経トレンディネット 2018年12月6日付の記事を再構成]
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