民泊半年、上乗せ規制の寒風 9割の自治体で独自書類

新法では住居専用地域を含め年180日まで泊められるが、東京都新宿区は同地域で平日はほぼ禁止。「連泊したいが地域ごとにルールが違う」(中国人女性)と不評だ。京都市は家主が同居しないと約10分で駆けつける管理人を駐在させる。

業界団体の設立を発表する民泊仲介業者の社長ら(12月11日午後、東京・霞が関)

届け出のための手続きも煩雑だ。観光庁が7月末までに101の自治体を調査したところ、約9割にあたる92自治体が法令に定めのない独自書類の提出を求めていた。具体的には、消防法令の適合通知、周辺住民への事前周知などだ。さらに那覇市と東京都文京区は届け出前の事前相談を義務付け。東京都千代田区、新宿区など18自治体は届け出内容と物件の状況が一致しているかどうかなどを確認するため、任意の現地調査を実施していた。

逆風の中、民泊事業者は不安払拭と集客に知恵を絞る。百戦錬磨(仙台市)や楽天ライフルステイ(東京・千代田)、エアビーなど仲介9社は業界団体「住宅宿泊協会」を2019年1月に設立する。トラブルが起きやすい違法民泊の排除へ勉強会や政策提言をする。

6月15日時点で仲介サイトの物件の2割が虚偽の届け出番号を載せるなど違法の疑いがあった。「民泊ポリス」の名称で違法物件を監視するオスカー(東京・大田)の中込元伸社長は「最近は水面下に潜り見つけにくい」と話す。海外の無登録サイトや交流サイト(SNS)などを通じ仲介され手口も巧妙だ。

行政も対策に動く。大阪市の違法民泊撲滅チームは3千件以上を指導し、約2400件が営業を中止。観光庁は19年度以降、違法物件の特定を助けるシステムを運用する。

高級物件が増加、体験も人気

民泊定着の兆しもある。安宿のイメージから一線を画した高級物件は増加。ロコパートナーズ(東京・港)のサイトが扱う広島県福山市の古民家は3万5千円以上するが数カ月以上先の予約も多い。世田谷区の山口さん宅のように家主との交流や体験ができる施設も人気だ。

日本人の利用も増えている。新法の民泊施設を8~9月に使った日本人(実数ベース)は6~7月の3.5倍と外国人の伸びを上回る。比率も29%と10ポイント強拡大した。

民泊サービスの市場規模は20年に1297億円と18年比で8割強増えるとの予測もある。民泊は人口が減る日本が規制緩和を通じて新市場を創出できるかの試金石。社会で活用されていない空間やモノを共用するシェアエコノミーを浸透させるためにも、民間の活力を引き出すのが重要だ。

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民泊新法の施行から半年の評価と今後の課題を識者に聞いた。

矢ケ崎紀子・東洋大教授(観光学)

宿泊日数の上限を意識して予約を絞る施設があることや新法施行後の物件減少、豪雨災害も考慮すると利用の出足は健闘しているといえる。地域ごとに民泊の活用法を確立してほしい。そのためには自治体ごとの届け出の受理対応のばらつきをなくし、企業や個人に過度な負荷がかからない統一的な仕組みが必要だ。

石井くるみ氏(行政書士)

年180日の日数上限がある新法の物件のほか、上限のない旅館業法の許可を目指す民泊が増えた。新法は構造設備などのハードルが低く、空き家活用にも適しているが届け出手続きの煩雑さが難点だ。自治体は慣れない届け出者を支援する姿勢で臨んでほしい。上乗せ規制は地域の実情を考慮のうえ過度でないか検証が大切だ。

(大林広樹)

[日本経済新聞朝刊2018年12月12日付を再構成]

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