音も姿も本物 フェンダーがBluetoothスピーカー
フェンダーといえば、ギターやベース、アンプなどの有名ブランドだ。フェンダーのギターに憧れたことのある人は多いだろう。近年はイヤホンなどのオーディオ製品にも力を入れていて、「MONTEREY TWEED」(MONTEREY BLUETOOTH SPEAKER Tweed)もそのひとつ。フェンダーのギターアンプのようなデザインが特徴のBluetoothスピーカーだ。
「MONTEREY TWEED」は50年代のツイード張りのフェンダーアンプ、たとえばエリック・クラプトンの使用で知られる小型アンプ「CHAMP」のようなクラシックなデザインがまず魅力だ。
ベースになっているのは、2017年に発売されたBluetoothスピーカー「MONTEREY」(MONTEREY BLUETOOTH SPEAKER Black and Silver)。こちらは60年代後期のブラックトーレックス張りのアンプのようなデザインになっている。両製品の仕様は同じで、デザインだけでなくBluetoothスピーカーとしての実力もかなりのもの。実勢価格はいずれも4万8000円前後だ。
ちなみに製品名は、1967年に開催されジミ・ヘンドリックスやママス&パパスなどが出演して後の大規模野外コンサートの先がけになった、モントレー・ポップ・フェスティバルに由来している。
雰囲気抜群 細部までこだわったデザイン
MONTEREY TWEEDはツイード張りの質感、前面のネットの感触がまず実際のフェンダーアンプらしくていい。背面はネジ留めでバックパネルが密閉されていて、これもまたギターアンプらしい雰囲気をよく再現している。
コントロール部分を見ると、金属のコントロールパネルに、ボリューム、トレブル、ベースをコントロールするチキンノブ、赤いジュエルランプ(電源ランプ)、レバーをぱちんと倒して電源を入れるトグルスイッチなどが並んでいて、クラシックなギターアンプらしい雰囲気を醸し出している。
そして前面には「Fender」のロゴが光り輝いている。50年代のアンプについていたものと同様の書体だ。ちなみに「MONTEREY」は60年代末のアンプのようなロゴで、コントロールパネルにはハットノブや青いジュエルランプがついている。
大きさは幅約34.3×高さ24.76×奥行き13.2cmだ。小型ギターアンプぐらいのサイズ感だが、Bluetoothスピーカーとしては大きい部類に入る。重さは約6.8kgでズッシリと重い。オーディオ的にはスピーカーは重い方がいい音がするイメージなので、これはこれでいい。
電源はACのみで、自宅での据え置き利用向きのBluetoothスピーカーだ。インテリアとして魅力あるデザインなので、リビングの棚や書斎の机の上などに置いて使うと似合いそうだ。
高音質コーデック対応の本格派
音の入力は3系統で、Bluetoothでのワイヤレス接続のほかに、3.5mmミニジャックのオーディオ入力端子とRCA入力端子を備える。入力はボタン操作ですぐ切り替えられるので、RCA端子にはレコードプレーヤー、3.5mmミニジャックには別のオーディオプレーヤー、Bluetoothでスマホを接続しておき、ボタンで切り替えて聴ける。
Bluetoothオーディオ機器で重要なコーデックは、一般的なSBCのほかに、高音質なコーデックとして普及が進むaptX、AACにも対応する。
操作感も雰囲気がいい
デザインだけでなく、操作感にもフェンダーらしいこだわりが感じられる。まず、トグルスイッチの金属レバーをパチンと倒して電源を入れると、ジュエルランプの奥底がボワっと赤くともる。この一連の流れはフェンダーのギターアンプそのものだ。そして電源が入ると、ギターの音がシャラーンと鳴って雰囲気を高めてくれる。
操作性もいい。ノブを回してボリューム(音量)やトレブル(高音)、ベース(低音)を調節できるのが、実はとても使いやすいのだ。Bluetoothスピーカーの多くは、ボタンを何度も押してボリュームを段階的にコントロールするが、ノブを回すアナログで直感的な操作の方がボリューム調節がサッとできて便利だし、自分は今音楽を聴いているのだという雰囲気が出る。ノブのトルクが適度に重いのも、ギターアンプらしさがあっていい。
サウンドは強力だ。出力が120Wと大きく、ウーファーとツイーターをそれぞれ2発搭載し、音量を上げていくとかなりド迫力なサウンドになる。重量感がありつつも少し乾いた感じのパリッとした音で、出力が大きいためか音量を上げても余裕が感じられる。
トレブルとベースは、いじっても極端に音が変化するわけではなく、どちらも自然な変化が得られる。トレブルを上げていくと中~高音域の押しが強くなるが、音がカリカリするわけではない。またベースを上げていくと中~低音域の押しが強くなるが、ドカドカと耳障りな低音が響くわけでもない。なお、背面のスイッチを入れると効き目が少し強くなる。
色々な年代・ジャンルの音源を鳴らしてみたが、音が過度に団子状態になることはなく、どの楽器もバランスよく響き、かといってBluetoothスピーカーにありがちなどの音も平板で均質な音に聴こえるわけでもなく、とても聴きやすい。音のいいラジオを聴いているような感覚とでも言えばいいだろうか。気のせいかもしれないが、少し古めのロックやソウルをかけると特に雰囲気が出るようだ。
ひとつだけ気になったのは、再生・停止、先送り、巻き戻しといった操作ボタンが一切ない、潔い仕様になっていること。据え置き利用向けなのでそうした操作はすべて手元のスマホで行えばいいわけだが、ここは他の多くのBluetoothスピーカーとは使い勝手が異なる部分だ。
インテリア性と音質を兼ね備えたBluetoothスピーカー
「MONTEREY TWEED」はデザインと作りの完成度が高く、インテリアとして自室やリビングのシェルフなどに置いておきたくなるところがまず魅力だ。アナログな操作感も魅力で、使っているうちに愛着が湧いてきそうだ。そして音も良く、特に少し古めのサウンドが好きな人に向いている。3系統の入力を切り替えて使えるのもオーディオ機器として便利だ。
実勢価格は4万8000円前後でやや高価だが、ただのBluetoothスピーカーではなく、レコードプレーヤーやCDプレーヤーなども接続して使うオーディオ機器としておすすめの製品だ。デザインにほれ込んで選んでも損はしないだろう。あとはこの「MONTEREY TWEED」と「MONTEREY」のどちらを選ぶかだ。中身は同じ両製品だが、これは自宅の置き場所とのデザインのマッチングを考えて選ぼう。
(ライター 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2018年11月27日付の記事を再構成]
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