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有森裕子 私がカンボジアで体育教育を支援する理由

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日経Gooday(グッデイ)

早いもので、今年も残すところ数日となりました。この1年、皆さんはけがをすることなくランニングを楽しめたでしょうか。年末年始はなにかと忙しく、ランニングに集中しにくい時期ですが、まずは体調をしっかり整えて、コツコツとトレーニングに取り組んでいきましょう。

2018年は、私が代表理事を務める「ハート・オブ・ゴールド」[注1]という団体が創立20年を迎えた年でもありました。ハート・オブ・ゴールドとは、「スポーツを通じて希望と勇気を分かちあう」ことを目的としたNPO法人で、スポーツを介した社会貢献活動に取り組んでいます。

きっかけは、義足を贈るハーフマラソン

設立のきっかけは、1996年12月にカンボジアで初めて開催された「アンコールワット国際ハーフマラソン」でした。皆さんもご存じのように、カンボジアでは、1970年代から始まった内戦により、おびただしい数の命が失われました。地中には何百万個もの地雷が埋められ、子どもを含む多くの人々が犠牲となり、手や足を失いました。

この大会は、地雷で手足を失った人たちに義足などを贈るために、参加者の申込金が寄付されるチャリティマラソン大会で、私自身第1回大会から毎年参加し、お手伝いさせていただいています。

「ハート・オブ・ゴールド」を立ち上げたのは、第1回大会の2年後の1998年。スポーツを介して、カンボジアをはじめとした紛争地や災害の被災地で苦境に立たされている人の役に立ちたい。でも私一人の力ではできることが限られているので、きちんとした組織を作って、多くの人たちと一緒に、責任を持って息の長い社会貢献を続けていくことが重要だと考えて、設立に至りました。

ちなみに、ハート・オブ・ゴールドとは、バルセロナオリンピック女子マラソンの銅メダリストで、4回ものオリンピックに出場されたローレン・モラーさんからいただいた言葉です。彼女はカンボジアの地雷被害者の救済に当たる私たちの活動に共感してくれて、「あなたこそ、心の金メダリストだ」とありがたい言葉をかけてくれました。それがうれしくて、その言葉を胸に刻んで活動していこうと、そのまま団体名にさせていただきました。そして、心の金メダルを求める人たちの集まりになっていければと、皆さんをお誘いしています。

「体育教育」の余力がなかったカンボジアの小・中学校

サッカーの本田圭佑選手が、カンボジアの小学生たちにサッカー関連の衣料を寄贈するなど、今でこそ多くのトップアスリートが国内外での社会貢献活動に取り組んでいます。元プロサッカー選手の北澤豪さんも、現役時代からスポーツを通じた社会貢献活動にいち早く取り組み、2004年からはJICA(独立行政法人国際協力機構)のオフィシャルサポーターとして、数多くの発展途上国を訪問するなどの活動を続けていらっしゃいます。

でも、ハート・オブ・ゴールドの設立当時は、スポーツを通じた開発のロールモデルがほとんどなく、スポーツを通じてカンボジアで何ができるのかを、手探りで探していました。そして、現地の人とコミュニケーションを取って一つひとつステップを踏みながら着目したのが、学校教育の中に、体育の授業を取り入れることでした。

[注1]特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールド:http://www.hofg.org/

当時、カンボジアの小学校や中学校を訪ねると、日本の体育とは全くかけ離れた授業を行っていました。3~4種類の徒手体操のような動きを、制服姿のまま延々と30分間ほどやるだけ、先生はロングスカートにスリッパを履いたような格好でただ見ているだけでした。

そもそも当時のカンボジアには、健康のために運動するという考え方や習慣、子どもたちの心身を育成するための体育をする余力がありませんでした。私たちが日本のラジオ体操をやって見せたら、先生も生徒たちもとても驚き、喜んでいたのをよく覚えています。

カンボジアの子どもたちの「健やかな体、豊かな心」を育むために、小・中学校にちゃんとした体育教育を根付かせようと考え、現地に事務所を開き、専門家を派遣しました。

現場では、言語や価値観などが異なる中で何度も話し合いを重ね、一つひとつ前へ進めていきました。まず、教育省のスポーツ総局の組織作りを進め、彼らと共に、体育科学習指導要領・指導書の作成を支援し、現場の先生たちの体育教育も始めました。そして、プロジェクト開始時期から活動していた教育省の担当官6名がナショナルトレーナー(日本の教科調査官に当たる)として選ばれ、日本でも研修を受け、先生達を指導しています。この取り組みを続けるうちに、生徒はもちろん、先生たちも体操着を着て授業に取り組むようになりました。先生たちのモチベーションもアップし、その結果、体育の授業がモデル校を中心に広がっています。

もちろん、前例がない中で最初はうまくいかないこともたくさんありましたし、事業に関わる全ての方々に、この草の根活動を認めてもらいながら前に進めることの難しさを痛感したことは何度もあります。小さなNPO法人ですが、本当によくここまで根気強く続けて来られたなと思います。

そんな長期的視点で進めてきたこのプロジェクトは、スポーツ教育分野において初めて、「JICA草の根技術協力事業」として採択されました。官(JICA)・民(ハート・オブ・ゴールド)・学(筑波大学)の連携で事業を築けたことは、「NPO/NGO団体でもここまでできる」という可能性を示す一つのロールモデルを残せたのではないかと思っています。最近では、IOC(国際オリンピック委員会)も我々の活動に興味を持ってくれるようになり、20年継続してきた甲斐があったと感じています。

次の目標は4年制の体育大学を作ること

私たちの地道な活動と、現地の教育関係者の熱意が実り、カンボジアの教育現場には体育を教えられる先生たちが育ってきて、体育教育も小・中学校に根付いてきました。

今後の目標は、体育教育の専門家を育成する国の教育機関として、現在の2年制の専門学校を4年制の体育大学に移行し、教育者や体育教育専門家を育成するお手伝いをすることです。カンボジア政府も現在、教育改革に取り組んでおり、私たちの活動は、共にカンボジアに4年制体育大学を作るという新たなフェーズに入っています。

こうした事業のほかに、毎年「カンボジアスタディツアー」を開催しています。アンコールワット国際ハーフマラソンに出場する前に、ツアーの参加者が「ニュー・チャイルド・ケア・センター」を訪問して現地の子どもたちと交流したり、子供の歯科検診や歯磨きサポートなどのボランティア活動を継続したりしています。

障がい者スポーツ支援としては、「アンコールワット国際ハーフマラソン」で活躍した優秀な選手を「かすみがうらマラソン」に招へいしていますが、そのほかに2017年には、車いす選手を日本に招いて、岡山県のパラリンピアンに競技を学びました。そして2018年は、日本のパラリピアンにカンボジアに来てもらい、プノンペンの陸上競技場で、選手だけでなく指導者も学べるようなトレーニングセミナーを開催してもらいました。

こうした活動を20年も続けてこられたのは、スタッフの皆が地道にがんばってきたからです。しかし逆に言えば、20年かかっても依然としてカンボジアは支援が必要な状況であることには変わりないということにもなります。最終的には、われわれの支援がなくても、カンボジアが教育者を育てる機関を持てるような、自立につながることが目標であり、そこまでサポートできればいいなと思っています。

スポーツは人間の体と心を鍛え育むすばらしい手段です。だからこそ、現役のトップアスリートや、OBやOGたちは、スポーツにおける社会貢献にぜひとも賛同してほしいですし、スポーツを通じて得た経験を社会に生かしていただけたらと思います。そして、2020年の東京オリンピックの時だけでなく、それ以降も、アスリートの社会貢献活動がもっと広がればいいと思います。記録やメダルばかりに目を向けるのではなくて、社会を良くし、人を元気にできるスポーツの力を知っていただきたいですね。

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子
元マラソンランナー。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

[日経Gooday2018年12月11日付記事を再構成]

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